天高く誇り気高く



第3話 受け継ぐ意思は……光



ソーサリアン・アカデミー


その地下奥深くにある空間に一人の人影が在った。

学園の理事長たる幸村俊夫。

かつての世界大戦では、その驚異の魔法でキー大陸を震撼させた老人だ。

その見つめる先には、青白い雷光を放つ人間大の鬼珠と呼ばれる珠が浮かんでいた



「ココまで綻びが激しいなんて」

「!!……あぁ。お前たちか」


幸村が振り向いた先には二人の人影が立っていた。


一人は広瀬琢磨。そしてもう一人の大柄な男は、先程琢磨に覇王丸と呼ばれていた男だ


「にしても爺さん。よくもまぁこれほどの魔道消滅印(アンチマジックシェル)を敷き詰めたもんだな。立ってるだけでビリビリくるぜ」

「いんや。それでも鬼珠はいっこうに収まらん……まったく。お前達の力は一体どうなっとるんじゃ。こんな化け物を封印するなど、お前さん達の方がよっぽど恐ろしいわい」

「ははは、それはどうも……それよりもコレを」


琢磨は懐より4つのクリスタルを取り出し、幸村へ手渡した。

「ほう。これが」

それは、すべてが青く輝いていた。

「どれ。さっそく」


幸村はクリスタルを握りしめると何か呪文を唱えだし、精神を集中しだした。



「さぁて。どう思う琢磨?うまくいくと思うか?」

覇王丸の声はずいぶん無遠慮で、どこか楽しそうである

「上手くいって貰わなくちゃ困るんですけどね」

「へっ!なんだよ。相変わらず冗談が通じねぇなぁ琢磨。そんなんじゃモテねぇぞ?」

「はは……貴方も相変わらずですね、覇王丸さん?」



二人は穏やかに会話を紡ぎながらも、視線は鬼珠から外していない

万が一、幸村に渡したクリスタルが功を奏し無かった場合、彼らは二人で絶望的な戦いを始めなければいけないのだ。



「腕……鈍ってねぇだろぉな?」

「そのつもりですけどね。こんな事ならもっと気合い入れとけば良かったです」

「はっ!心配すんな!お前は強くなったよ。見れば判る」

「有難う御座います。でも、こんなに早く覇王丸さんが来てくれるなんて予想外でしたよ」

「ば〜か。俺がこんな面白そうなイベントをすっぽかす訳無いだろうが!!お前と違って往人からは声は掛んなかったがな」

「ははは。どうせ覇王丸さんの事だから、ほっといても首を突っ込んでくれると分かってるんですよ。陛下は。」

「だから、糞面白くねぇのさ!っと、終わったみてえだな」




二人の視線の先では、先程まで荒れ狂っていた雷光が綺麗に収まっていた。

中央の鬼珠の四方には4つのクリスタルが浮かび、静かに光を放っていた。


「ふぅ…どうやら上手くいったみたいですね」

「あぁ」


先ほどのおチャラけた雰囲気はもう微塵も無い。

覇王丸も実の処は緊張していたようだ。




2人の元へ戻ってきた幸村は、覇王丸の姿を確認すると、笑みを浮かべて話しかけて来た

「久しぶりじゃの。覇王丸」

「よぉ爺さん。まだしぶとく生きてやがったか」

「ホッホッホ。まだまだ。お前さんが野垂れ死ぬのを拝見するまでは死ねんて」

「けっ!やかましいわ!!」

「まぁまぁ。で?幸村さん?」


琢磨の言で、3人の空気は変わる。

「うむ……封印の綻びはクリスタルで補えた……が」

「少しばかり手遅れか?」

「うむ。おそらく呼応するモノ達も出てくるだろう。彼奴らの世界へも波動は届いた筈じゃ」

「……止めますよ」

「琢磨?」

「ほう?」



二人の間を割り、琢磨は鬼珠を見据えた


「ソレが闇らな何度だって払い除ける。たとえ神の意志であろうとも打ち砕いてみせる。全ての宿命を打ち毀し(こわし)、我ら、天をも滅ぼす破とならん」


「たりめぇだ!それでこその………四天滅殺だからな」



琢磨の隣に並び、共に鬼珠を眺める覇王丸は、不遜な笑みで酒をあおっていた。


その2人の後姿を見やりながら、幸村は静かにその場を後にする。


彼らへの言葉を残して。



「許せ……頼るしかない非力な我らを。全ては再び、お前達に掛っておる…頼むぞ『神威』。そして……『剣帝』よ」







-----------岡崎朋也----------



「おっす朋也!」

おぉ……


登校早々、俺に話しかける春原に適当に相槌をうったが……コイツの意味有りげな空気は、昨夜の事……どうも伝わってるみたいだな

「聞いたぜ?朋也」

何を

「昨日の晩さ!お前、辻斬りと()り合ったんだって?」


やっぱりな

()り合ったと言う程じゃ無いな。まぁ奴の剣は見たけどな

実際、今こうして居るのは幸運なのかもな。

「らしいな。にしてもあの川澄舞をして勝てないなんてな」

あん?まぁ勝てないって事でもないんだろうが…な。そういや川澄はどうした?

「あぁ。あいつなら今日は来て無いぞ」


川澄が……そうか……まぁアイツも昨夜の事では、色々と考える事もあるんだろうな


「で?」

あん?

「何が有ったんだよ?」

何って??

「だから昨日の夜さ!!辻斬りってどんな奴だった?やっぱ月牙だったのか?実際どんな強かったんだよ?」

………

「なぁ朋也ぁ。教えてくれよぉ」

うっさい。そんな気分じゃねぇんだよ



春原はまだぎゃあぎゃあ言ってるが無視する事にする。

……にしても


川澄の奴は、一体どうすんだろうなぁ


俺は誰も座っていない川澄の席を見やりながら、昨夜の事を思い出していた。






おい川澄!もう今夜は出ないんじゃないのかぁ

川澄に付きまとって夜の街を徘徊しているのは良いんだが、どうにも事件らしい事件は起きていない。

まぁ昨日も出たって云うし、流石に連夜の犯行は奴さんも強硬しないだろう。

今日はもう止めて、また明日にしたらどうなんだぁ?

「…岡崎は帰ればいい。私は一人で良い」

おいおい。何も邪魔しようってんじゃないんだぜ?そんな邪けにしなくても

「……一人でいい」




あぁそうかい。

OKだ。別に嫌がられてまで付き合う義理も無い。

ちっ!分かったよ。邪魔して悪かたっな。




で、俺は家に帰ることにした。

したんだが…………どう云う訳か覆面した大男に剣を向けられて対峙してるんだなこれが。



一応聞いとくけど、俺に恨みが有る訳じゃ無いよな?

「恨みは無い。我が目指す剣の為に……貴様の剣を喰らいたいだけだ」


そうだよなぁ。辻斬りって、剣士を狙って出てるんだから、当然、剣をぶら下げて歩いてりゃ奴の獲物にもなるってもんだ。

でもな?


スラッ


俺の剣に喰われるかも……とは考えないのかい?

俺にだって牙は有るんだぜ?


「は!がはははは!!いいさ!精々抵抗しな!俺の……月牙退魔剣になぁ!!」

おおっ!!



キキィィィン!




俺と奴の剣がぶつかり、何度かの剣戟を打ち合ったが……判った事がある


「おおおお!!」

ちぃぃ!


ガキィィィン!

奴の上段を受け

っせぇぇ!!

俺は奴を突き放す。


コイツの剣は月牙じゃない!

川澄と何度も手合わせしてる俺にはそれが分る。

確かに基本は出来てるし、一撃も鋭く重い。

でもそれだけだ。

ホントにコイツが例の辻斬りなのか?


なぁ。あんたホントにちまたで噂の辻斬りか?

「?どういう意味だ?」

おっと!気を悪くしたかな?

いやな。それにしちゃ随分歯応え無い気がしてな。お前さんは偽物なんじゃないかとな


「………くく……」

俺にはアンタが、今までの犯行を行えるとは思えないのさ


「…くくく………はは………はははははは」

なにがおかしい!

「ははは!可愛い事言うな小僧!俺が手加減してやってるとも知らずに!」

何を!!

「じゃあ見せてやろう。これが……」


なんだ?剣を肩に担いだ?

いや!あの構えは!!!


「くらえ!月牙風斬!!」

バシュゥゥゥ!!!!


なにぃぃぃ!!!

奴の斬撃が風を纏って(はし)って来る!!

っのおぉぉぉ!!

俺の剣で迎え撃てるか?

ガキィ!!

ぐぅ!

まずい!押し返せない!!痛っ!


ドギャァァァン!!

ぐわぁぁぁ!


俺の体は数メートルは吹き飛んだ。




くそったれ!

月牙の技か!でも……

ちっ!間合いに踏みいってきやがった。舐められたな俺も

「はは。どうした小僧。まだ俺は本気になっちゃいないんだぜ?」

はっ。冗談じゃねぇな。

へぇそうかよ。でも、そろそろ本気出さなきゃ、アンタ終わるぜ?

「ほぉ?まだそんな口が利けるのか。いいぜ?終わらせてみろよ。それとも俺が、お前の人生を終わらせてやろうか?」


へっ!言ってろ

それじゃあ終わらせようか………なぁ川澄?

「何!!!」



奴が振り向いた先には、剣を抜き放った川澄の姿が在った。


「岡崎……避けて……月牙風斬」


バシュゥゥゥ!!!!

「ぬぅああああ!」

ドギャァァァン!!

うおぉっ!!

間一髪、俺は横に飛びのいた。

アイツは川澄の技をモロに受けて10メートルは吹き飛んでいった。

それにしても………

おい川澄!てめぇなんて事しやがる!

「避けてと言った」

避けそこなったらどうする!!

「…………」

てめぇ、考えて無かったな

「……そんな事は無い…と思う」


コイツ、ぜってぇ何時か仕返ししてやる!

まぁ、今は助かったから良いとするか。

で?やったのか?

あれだけ吹き飛べば無傷じゃないだろうが…

「風斬が当たる瞬間、魔力を感じた……おそらく」


「ぅぅおおおお!!!」


ちっ!ずいぶん元気良く立ち上がりやがった


「まだ終わってない」

みたいだな!


俺は川澄と並んで、再び剣を構えた。

しかしあれ程の一撃を受けきるなんてな。

魔力か……奴自身、それほど魔力を有しているようには見えないんだがな。



「なるほど。これが月牙の宗家の剣か……たいした威力だ」

感心してる風な言葉だが、顔は不敵に笑ってやがる。好きになれねぇなぁ

「……なぜ?」

「あん?」

「なぜ月牙を名乗るの?」

「これはこれは。それは俺が月牙の剣士だからさ」

「違う。あなたは月牙の剣士じゃない」

「いいや。俺は月牙の剣士さ。その証が……これさ!!」


バシュゥゥゥ!!!!

ちっ!またか!

不意を突かれなきゃこんなもの!

俺達は奴の風斬をかわして、再び剣を構えた。

なんども喰らうかよ!

「それは風斬じゃない」



「はははは!そうかい!何でもいいさ!お前以外が月牙と思えばそれでいい。そしてこの剣が血を吸えば吸う程に、貴様の月牙も堕ちていくのさ」

コイツ!!

狙いはそれか!!!

こいつは月牙の流派を貶める事を狙って!

「させない!!」

川澄?

「月牙退魔剣は人々を魔物から護る為に代々受け継いできた誇りある剣技。
私の父様も全てを護る為に魔獣に挑み、十剣の名誉を承った。

でもそれは父様だけのモノじゃない。
月牙の剣が殺める為じゃ無い、護る為の剣である事の証。

月牙の剣士全ての誇り。その剣を辱める事など、

私が許さない!!





川澄………

川澄はいつも剣に打ち込んできた。

アイツの親父さんが十剣の一剣に数えられた時、あいつは本当に嬉しそうだったそうだ

その当時のアイツは剣など握っていなくて、ごく普通の女の子だったと、前に倉田が話してくれた。

だが、魔獣との戦いで負傷をおったアイツの親父さんは、どこかの田舎で野党に殺されたって話だ。


十剣の中での最初の死者。


英雄扱いされておいての呆気ない死に、世間からの中傷も少なくなかった。

そしてアイツは剣を取った。

親父さんの名誉の為に、川澄家の、月牙の剣の為に、全部捨てて剣だけを手に取った。





そうだな…川澄。そうだよな


お前の思い通りなんてさせねぇよ!

「ははは!貴様らに俺は止められん!ハァァァァ!!」


ブオォォォォォ

なんだ?奴の剣が黒く光って……そうか!

魔剣か!!

「ほぉ。よく知ってるじゃねぇか」

は。誰でも判るっての。お前自身からは殆ど魔力を感じねぇんだ。月牙の剣は魔力と剣技の合成斬撃。高い魔力を持つ川澄家ならではの剣だ。お前が使えるのはその剣あっての事だろ?


別に魔法剣を使うのは月牙だけじゃないけどな。川澄の剣はその中でも、とりわけて剣技に特化したモノだ。

詠唱もせず、魔法も乗せず、ただ魔力のみを注ぐ剣。

それが月牙退魔剣


剣に頼らなきゃ戦えないお前が、俺達二人相手に勝てるとでも思っているのかよ

舐めるには相手を間違えたな

さて!種がわかれば怖くないな!

行くぜ?川澄!……川澄?

なんだ?川澄の奴、どこ見て………!!


周囲に目を配っていた川澄の視線の先を追ってみて俺は事態を把握した。

俺達は囲まれていた。


「ああぁ小僧。お前こそたった二人で、俺達に勝てるとでも思ってたのか?」

くっ!


ざっと見積もっても30人はいやがる。

一人一人はたいした事無かったとしても、コレだけ揃うと厄介だ。

それにアイツが居る以上、常に奴の動きには注意を払わなきゃなんねぇ。



まずい


トン


周囲をゆっくり包囲された俺達は、互いの背中を合わせて周囲を警戒していたが……時間の問題だなこりゃ



「岡崎」

なんだよ?今、ちょっと真剣に聞けないぜ?

「私が突っ込んで隙を作るから、岡崎は逃げて」

!!ふざけんな!却下だ!

「このままでは二人とも()られる。貴方は助けを呼んで来て」

だったらお前が呼んで来いよ。俺が道を作るさ

「貴方じゃ死ぬだけ。大丈夫。私は死なないから」

OK!そんじゃお互い意見を譲らないって事で、いっちょ派手にいきますか

「岡崎?」

まだ終わってないだろ?こいつ等全員気にいらねぇんだよ。結局辻斬りじゃなくて辻斬り集団じゃねぇか。こんな烏合の衆に背中向けられっかよ!!

「…………」

見せてやろうぜ川澄!本物の月牙の剣って奴をさ!

「岡崎………ありがとう」




「さぁて?そろそろ相談タイムは終わりか?じゃあ………死んでみようかぁ!!」



「「「「「おおおおお」」」」」




ちっ!奴の掛け声で一斉に掛かってきやがった!

こいつ等集団で戦う事に慣れてやがる!!


くそったれがぁあああ!!


俺がやけくそで奴らに斬りかかろうとした瞬間、それは訪れた。



ズギャァァァァァ!!


川澄の風斬よりも巨大な斬撃。

大地を大きく切り裂き、俺達と奴らを離した。



「誰だ!!!」


その剣撃の先に佇んでいたのは、大柄な一人の男だった。


見慣れない服を着、長髪を無造作に束ねた逞しい身体つき。

腰に一本と左手に一本。二本の刀を納刀したまま持っている。

だとすれば剣士か

右手に持った瓢箪(ひょうたん)で旨そうに酒を飲んでる。

「おぉ。悪い悪い。つい手ぇ出しちまったな」

「貴様、何者だ!」

「あん?」



男は何事も無いかのようにふらふらと近づいてくる。

おい、状況見えてんのか?こいつ

「俺か?俺は覇王丸ってんだ。まぁ旅してるただの通りすがりだ」

「ほぉ。で?貴様は死にたいのか?」

「は?………がはははははは!!」


覇王丸と名乗った男は、突然楽しそうに笑いだした。

狂気でも虚勢でもない。ただ純粋に面白いといった笑いだ。

「貴様ぁ」

「はっははは。いやぁ悪い悪い。あんまり嬉しかったんでなぁ。最近、そんなセリフ言われた事無くてついな。いや。すまんかった!まぁ気を悪くしないでくれ」

「余程死にたいらしいな」



奴の殺気が増した。

どうやら限界のようだな。

だが、今ので陣形は崩れてる。囲まれてさえいなきゃなんとでもなるな。俺と川澄なら!


「まぁそう慌てんなって。お前も……そこの坊主もな」

!!


気付かれた!?この男いったい

「俺は別にお前と()り合うつもりはねぇぜ?ただコッチの娘にちょいと用事が有ったんでね。今夜の所はこれでお開きにしようや」

「何を勝手!!」

「そう……しなよ?」



その時、周囲の空気が凍った。

この男から発せられた殺気………すべての者が死を覚悟した。

なんだよ!これわ!!


息が出来ない!!


どれ程の時間が経ったろう。

おそらくは1分にも満たない筈の永遠とも思える時間が過ぎ、俺達が気を抜けたのは男が左手に持った剣を鞘ごと地面に突き刺した時だった。

「さぁ。行けよ」

「くっ!今日はココまでだ!退け!!」



奴を先頭に、辻斬り集団は闇夜に消えて行った

「くっ!待て!!」

川澄!

「おっと!」



奴らを追いかけようとした川澄を止めたのは、覇王丸だった。

「どいて!奴らは!!」

「追わなくてもまた来るさ!奴らの狙いはお前なんだからな。急ぐ必要はねぇよ」

「くっ!」


川澄……焦る事は無いさ、次に会った時、ケリを付ければいい

「岡崎……」

「ほぉ。坊主、なかなか良い事言うじゃねぇか」

そいつはどうも。で?あんた一体何モンなんだ?只の通りすがりってのはウソだろ?

「俺か?」

「私に何の用?」



そう。コイツは川澄に用があると言っていた。

でも、様子からして、川澄もこいつの事は知らないらしい。


「ああ。俺はお前に渡す物が有るんだよ。川澄舞」

「なんで私の名前を知ってるの?」


確かに。どうして?

「へっ!そりゃあ、いつもいつも自慢気にお前の事を聞かされたからなぁ。流石に頭の悪い俺でも覚えるさ」

「誰に?」

「………川澄京也。お前の親父さ」


「!!と…父様?」

川澄の?



川澄の父の知り合い?いや、友人?

それが何だって今頃……


「済まなかったなぁ。ホントは親父さんが死んでから、すぐに来たかったんだがよ。俺も色々と忙しくてな。3年も経っちまった。ホント、済まん」

言うと、覇王丸は頭を深々と下げた。

この人は、自分を飾らない人の様だ。見ていて気持ちがいい。

「別に……私はなんとも思ってない。頭をあげて」

「!そうか?よし!ならこの件は言いこ無しな!がははは」


おいおい。それでいいのかよ。

で?あんたぁ

「覇王丸でいいぞ」

そうか。俺は

「岡崎朋也だろ?」

!!なんで!!

「あぁ、ちょっと知り合いがいてな。お前の事も知ってる」

俺の親父とも知り合いってか?

「ん?あぁ、知ってはいるが会った事はねぇなぁ」

じゃあなんで

「今は良いじゃねぇか。それより……」



そう言って覇王丸は川澄に向き合い。腰の剣を鞘ごと取り出した。


すぅぅ


「コレを……お前に」

「コレは?」



「お前の父、京也の剣だ」

「!!!」



川澄は剣を受け取ろうともせず、黙って、剣と覇王丸を見上げていた。

「この剣はお前が持つべき物だ。アイツの血を受け継ぐお前がな」

「………父は……」

「うん?」

「父は野党に襲われて死んだと聞きました。遺品はどは何も無かったと……この剣が本物の訳は無い」

川澄……


それは川澄の今を作った理由


「違うな」

なにが?

「何もかもがだ。この剣は正真正銘、奴の剣だし、奴は野党になんか殺られてねぇ」

「!!!」


川澄は覇王丸の目を正面から見据えていた。

「どういう……こと?」


「あの時……奴はザナファーとの戦いで受けた傷を癒しに、ある村の魔法医の元に身を寄せていたんだ。傷は順調に癒え、もうじき国に、お前の元へ帰れると云う矢先に事件が起こった」

事件?

「ああ。隣の村が襲われたのさ。襲ったのは……数体のグレーターデーモンだった」

!!ばかな!


グレーターデーモンは魔界にしか居ない筈!

降魔戦争の折、魔界の門が開いた時に数体現れ、人類に多大な被害をもたらせたと云う、悪夢の魔物。

「ザナファーの件じゃ、魔界とコッチの境界がかなり緩んだからな。その隙間から這い出たんだろう。そして、それが村を襲った……京也は独りで、奴らと戦いに出たのさ」

「……そんな……」

無茶な


それは無茶苦茶だった。

グレーターデーモン数体を相手にたった一人でなんて…

「奴は戦ったよ。俺達が村に駆け付けた時には、グレーターデーモンは全滅してた。力尽きた、アイツと共にな」

そんな!ならおかしいじゃねぇか!だったらなんで野党に殺されたなんて話が出るんだよ!

「当時はまだザナファーの残した傷跡が深くてな。この上、グレーターデーモンまで出没したとなると世界中に混乱が広がる。そう判断したエアーや各国は、この件を葬り去ることにしたんだよ。人知れずにな」

そんな……そんなのってあるかよ!護る為に戦って、傷ついて!それでも尚戦って!……それを闇に葬り去るってなんだよ!無かった事にするって……そんなのねぇじゃねぇかよ!!


それじゃあ、川澄の親父さんは一体なんだったってんだ?戦うための駒なのか!

それがエアーの意思ならば!!

「分かってる!!」

あんた…


覇王丸の表情は苦渋に歪んでいた。

「アイツとは馴染みだったんだ!降魔戦争でも、ザナファーの戦いでも!俺はアイツと一緒に戦ったんだ!そして陛下だって!!みんなアイツと一緒に地獄を乗り越えて来たんだ!!……だけど仕方ねぇじゃねぇか。他の誰がアイツと同じ目に遭ったとしても、俺達は同じ事をするだろう」

でも!

「そして!自分がアイツと同じ目に遭ったとしても、同じ事を望むんだ」


俺にはもう何も言えなかった。

たぶん、言う資格が俺にはない。

それはきっと、時代を切り開いた男達が背負う、壮絶な思いなのだろう。

綺麗事じゃ無い。

今の地獄を自分が背負い、後の世に未来を残す。

きっと其処には覚悟がある。


平和な時代に生きて、本物の戦場を知らない俺には、誰を責める権利も無いのだろう。


そう。だって俺は…俺達は……戦場へ出なかっただけだから。

たとえ同い年でも、年下だって、戦う奴は戦った。必死で戦っていた。

俺達は自分の力不足をいい事に、後ろに隠れていただけだ。

年を理由に、力を理由に




「さぁ、受け取れ。舞。それが京也の願いだ」

「!!父様の?」


「ああ。アイツが逝く間際に、俺に託したお前への願いだ」


「願い……」


「そうだ。この剣をお前に…と。そして奴が伝えてくれと」







「人は皆命を削る……どんな人間も掛け替えの無いモノの為、護りたい者の為に命を削って生きていく

父もまた、愛するお母さんやお前の為に、お前達が生きる世界(ばしょ)の為に、命を削って生きて来た。

そして舞。お前も見つけなければイケない。お前が己が命を削る事が出来る、誇り高く尊い戦う理由を…

その為に、私が最後にしてやれることは、私の残した()で少しでもお前を護ってやる事だけだ。

忘れないで欲しい。

この世界の何処かに必ず……舞の戦いが

舞の命でしかできない戦いが、必ず在ると云う事を

舞になら出来る。その戦いを見出す事も、その戦いに打ち勝つ事も。

お前は私の愛する舞だから」




「と……父様」

静かに剣を受け取る舞の姿が、俺の目には神々しく見えた。


「………さてと!俺の用事はここまでだ!まだコレから行かなきゃなんねぇトコもあるんでな。まぁしばらくはカノンに居るから、またその内、な!」

「待!!」

消えた?



一体、覇王丸ってのは何者なんだ?

それにしても………

近いうちにまた辻斬り集団とは殺り合う事になるだろう。

奴らの狙いもいま一つはっきり見えないしな


どうにも。物騒な話になってきやがった












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薄暗い小部屋に数人の男が何やら話しこんでいる。

それは先の辻斬り集団の数名だった。

一人を除いて

「そうですか……とうとう川澄舞と出くわしましたか」

「ああ。まぁ思ったよりは強くなかったぜ?」

「そう仰るのでしたら、ココでケリでもつけてこれたでしょうに」

「邪魔が入らなきゃそうしてたがよ」

「邪魔?」

「ああ。岡崎って小僧に、あと途中から出てきた覇王丸とかって剣士に」

「!!!覇王丸!!」

「知ってるのか?」

「………そうですか………まぁ良いでしょう。それでは手筈通り、明日、一気にカタを付けて下さい」

「それは良いがよ。分かってんだろうけど、今さら裏切りは無しだぜ?」




「いらぬ心配はしないで下さい。後の始末は全て、我が久瀬家が引き受けます」


久瀬家を名乗ったのは若い男だった。

そう、ソーサリアン。アカデミーの生徒会長を務める男



「拝命十三貴族の名に懸けて……ね」


第3話 完

Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


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