ここは天空城。
今より8年前。
20年以上続いた世界大戦を経て、このキー大陸を平定した神聖王国『エアー』その王城だ。そしてここはその城の王の間。
玉座に座ってる俺は…まぁこの国の王ってことになってる。
俺自身、国王なんてモノには興味も無いし、取り立てて成りたいってシロモノでも無かったんだが……この国の姫だった美鈴に出会っちまったのが運の尽きだ。
大体が……
何の関係も無い俺をいきなり争乱に巻き込むわ。
やっとこ戦争を終わらせたかと思えば美鈴と一緒にこの国まで面倒みろだ。
美鈴は美鈴で次から次へと厄介事に首を突っ込む!
その度に俺に話を振ってきやがる!
3年前に他所の大陸に出た魔獣を「討伐する!!」とか言って城を飛び出した時にはホトホト参ったさ。
なんとかケリが付いたから良い様なものの、その地の国々がエアーの領土に成っちまって、俺はまた面倒事が増えていく……
コイツわざとやってねぇか?
ま!それでも俺はなんとかするさ。
美鈴は俺の大事な女。だからな。
10年前に誓ったのさ!俺、国崎往人は何があっても美鈴を護るってな!!
と……誓ったんだが…今回はどうにも厳しい事になっちまってる。
困った時の神頼みじゃねぇが、コイツ等に頼る以外に道がない。
「広瀬 琢磨。お召しにより
ったくコイツは
おい琢磨!
「はっ!」
はっ!じゃねぇよ!俺と話す時は普通で良いっていつも言ってんじゃねぇか!毎回毎回仰々しい。
俺はお前をダチとしか思ってねぇよ!それを他人行儀に!
これはアレか?新種の虐めか何かか?
「そ!そんな事は」
だったら普通に話せよ、琢磨。
「……ふぅ。分かりましたよ。ほんとに往人さんは変わりませんねぇ」
たりめぇだ!こちとら20年以上国崎往人をやってんだ!そうそう変わってたまるかよ
「ははは…まぁそこが往人さんらしいけど……で?」
あん?
「往人さんが僕を呼んだんです。何か厄介事ですね?」
あぁ
「何がありました?」
まだ何も
「ではこれから?」
………
「………」
………
「………あのぉ、往人さ」
鬼珠が雷光を放ってるらしい
「!!!」
それに伴ってかどうかは分からんが、各地で魔物が活発化の兆しを見せてる
「かのモノが復活する……と?」
それは分からん。が、その兆しが出てきたってトコだ
「しかしなんで急に…僕達がアレを鬼珠に封じ込めてからまだ5年。鬼珠の力が弱まるには早すぎるんだけど……」
……美鈴だ
「はい?」
鬼珠の力が弱まったのは美鈴が原因だ
「……あの〜〜〜それって3年前の?」
あぁ
「でもあの魔獣退治は他の大陸でしたし、特に美鈴様が何かしたとは思えませんが」
俺もそう思ってたんだがな。鬼珠の件を聞いてからどうにも挙動不審だったんでな。昨夜問い詰めたらゲロしやがった。今は罰ゲームの真っ最中だ
「ははは、罰ゲームって…で、美鈴様は何をしたんですか?」
それがな……どうやら3年前、美鈴の奴は封剣を持ち出していたらしい
「なっ!!!」
琢磨の奴でも驚くか…まぁそうだろうなぁ
大体普通なら封剣を抜いちまったら、その段階で封印が解けちまうだろうからな。
「そんなバカな。封剣を抜いても封印が解けないなんて………!!そうか!」
そうだ。美鈴は翼人としての力で封印を補っていたのさ。ばれない様にニセの封剣まで用意して、わざわざそれを触媒にしてな
「それでですか。もし封印が解かれる事にでもなれば僕達に分からない筈が無い。でも僕達にも気付かれる事無くそんな事が出来るなんて……さすがは翼人の末裔ですね」
間違ってもアイツには言うなよ?褒められたと勘違いするからな
「はは…それは…なんとも……」
一瞬、琢磨に凄いと言われて満面の笑みで自慢げに剣を抜いた話をする美鈴の姿が頭をよぎりやがる。
え〜い忌々しい!
どうにもアイツはネガティブシンキングタイムを持続する能力に欠けるからな。少しは堪えてくれんとコッチの身がもたん。
まぁ、そんな封印も弱りかけてる。どうやら魔獣の件が終わった時には封剣は元に戻したらしいが、それでもその僅かな時間は、封印に致命的な
「まぁ僕達の封印は4人がかりのモノですからね。片時とは云え封印を持続出来たのは、やはり流石と言えるでしょう」
しかし解けてしまえば元も子も無い。このままでは5年前の降魔戦争の再来だ
「させはしませんよ」
琢磨?
「…人同士の争いを収めて8年。闇の軍勢を祓って5年。3年前の様なイレギュラーは有るにせよ、このキー大陸に平和が訪れて、まだたった数年…往人さんが創ったこの平和な時代が再び闇に覆われるのを黙って見ている程、僕の心は広くありませんよ」
俺が創ったんじゃ無い。俺達が創ったのさ!創って、護る!なにがあってもな
「はい!」
すまんが力を貸してくれ
「陛下。令を…貴方の意に、持てる総てを尽くし応えます」
戦争を収める為に…魔を退ける為に…悲劇を食い止める為に…幾度となく俺を救い、国を守り、人の世を守護して来たお前達に再び俺は縋らねばならんのか…
いいだろう
全ての者達の為にお前達を犠牲にしよう。
その罪、我が背負い許されざる咎人と俺はなる。
そして咎人が告げよう……
四天よ!鬼珠より出でる
「四天が一つ『
----------相沢祐一----------
俺はなんで毎朝走らされにゃならんのじゃ!
「大丈夫だよ祐一ぃ。100mを7秒で走れば充分間に合うよぉ」
ちぃ!
朝っぱらから無理難題を吹っ掛けられて激走を強いられている俺は相沢祐一。
最近、この街に来たばかりだ。
で、このノホホンと俺に無茶を言い放つのは、俺の
そして、どうして俺達が朝っぱらから2人並んで人も跳ね飛ばしそうな勢いで走っているかというと……
どういう計算で出したデータだそりゃ?だいたい名雪は起きなさ過ぎだ!どういう神経ならアノ状況下で眠り続けられるんだ!
「え〜〜。普通だよぉぉ」
やかましい!異常だ!不思議だ!問題外だ!!真琴もあゆもとっとと行っちまうし!明日起きなかったら寝てる口に秋子さんのジャムでも突っ込んでやる!!
「えーーーーー!ぅぅぅ…祐一極悪だよぉ」
嫌なら起きろ!
と、云う様に、この名雪の異常とも言える寝起きの悪さが、俺達がしている早朝マラソンの理由である。
ま、本来。俺が起こさなきゃならん理由も無いのだが、そこは居候の身。少しは役に立たねば居心地が悪い。
俺と同じ居候のくせに、とっとと見捨てたあの2人の神経が俺にも欲しいところだ。
この街に来て、俺は名雪の家、水瀬家で名雪と名雪の母・秋子さんと一緒に暮らしている。
俺がこの街に来た理由はひとつ。
この剣と魔法を学ぶ名門校、ソーサリアン・アカデミーに通うためだ。
もともと歴史有るこの学園。8年前にエアーが大陸を統一してからは、その門戸を大陸全土、ひいては他の大陸へも開く事になり、その規模はキー大陸最大の学園となっている。
そんな学園に俺も通う事となり、母の妹である秋子叔母さんの家に居候することになった。
っと!どうやらもう間に合う所まで来たようだな。見知った顔を見る事も出来る。
「あっ!おはよぉ香里ぃ」
「!?あら?今日は早いのね?名雪。それに相沢君も」
簡単に言ってくれるな。なんなら替わってやろうか?この時間に此処に居るのが奇跡に思えるぞ?
「遠慮するわ。昔、散々同じ目に合った事有るから」
「うぅぅ…二人とも酷い事言ってない?」
「「そんな事無い(わ)」」
「うぅ、極悪だぉぉ」
うん。朝の一時を飾るにふさわしい穏やかな会話だ。「おい」
名雪はまぁ、とんでもない寝呆スケではあるが、外見は母である秋子さん同様、可愛いと言って問題無い「…おい!」
香里はまぁ美人の部類に十分入る。ウェーブ掛った髪が印象的だ「おいってば!!」
こんな2人の美人と一緒に3人で登校出来るのは、普通の健康な男子である俺にとっては、まぁ喜ばしい事であ」「おいったらおい!!おーーーーーい!!!!」ちっ!
「おい相沢」
なんだ北川よ
「せっかく登校時に会った親友に無視をくれた挙句、舌打ちのオマケまで付けるのは何処の国の習わしだ?」
!!知らんのか?知識が不足してるな
「何!」
このカノン領ではいざ知らず、そんな事では王都エアーでは生きては行けないぞ
「そうなのか?」
うむ。そうなのだ
「そうか…知らなかった」
感謝はいいぞ。
「あぁ、すまんな……って!んな訳あるかーー!」
ちっ!って、ん?どうした?名雪?香里も
2人とも顔を赤らめて立ち止まってしまっている。このままだと遅れるんだがなぁ
「あ…あんたねぇ…朝っぱらから恥ずかしい事言わないでよ!」
「そうだよ祐一ぃ。わたしは……その、嬉しいけど…」
ってちょっとまて!
声…出てたのか?
「はっきりとな!お前もその癖治さなきゃ、思ってる事筒抜けだぞ?で、ちなみに香里は俺のハニーなんだから変な色目で見ないでくバキィッ!ぐはっ!」
うん。飛んだな。
「朝から変な言い掛かりは辞めてよね!」
ふぅ。やれやれだ。
まぁ、いつもの光景ではあるが……
なぁ香里
「なに?」
何かあったのか?
「………何かって……何よ」
いや。なにって事は無いんだがな。北川の妄言は毎度の事だが、今日は幾分突っ込みが激しいと思ったんでな。何かイラついてんのかと思ってさ
「えっ?そうなの香里」
「…………」
「香里…」
う〜ん。朝っぱらから暗くなっちまったな。
香里は俯いちまったし、名雪も不安気だ。
ほんと。どうかしたのか?香里
「そうだぞ香里。なにか心配事ならいつでも俺に言ってくれよぉ!」
北川!どっから湧いて出た!
「ふっ!愛の成せる業さ」
なぜだ?今日はコイツを無性に殴りたいぞ?っていいか?殴っても!」
「云い訳無いだろ!」
ぬ!またか
「まただ!っとに。今はそれどころじゃないだろう」
ちっ!北川に諭されるとは屈辱だ
「……栞が………」
!栞が?
「ここ暫く体調も良くって安定してたんだけど……昨日、1日部屋に閉じこもって何かしていたと思ったら急に体調が悪化して………今朝は若干良くなったんだけど、衰弱が激しくて………」
「香里ぃ…」
「香里」
………くそっ!
香里の妹、美坂栞は病に臥してる。
4年前まで、栞は父親と一緒に他所の地に住んで居た。
昔、一緒に住んでいた時には普通の体だったのが、4年前に再会した時には既に今の様な状態だった。
この地を離れていた間に、栞に何があったかは知らない。でも、その数年の間に確実に何かが栞に起こり、アイツは未来への時間を失った。
原因となったのはおそらくあの降魔戦争だ。
この地でも被害は甚大だったが、当時、栞達が居た地方はまさに激戦地だったそうだ。
現に香里の父親は魔物との戦いで命を落としてる。
戦争が終わり魔が退いたあと、衰弱しきった栞を見つけ出した時には、香里は気が触れるくらい取り乱していたそうだ。
まぁ、アイツの妹への溺愛振りは昔から変わらないそうだからな。
香里と母親は、それこそ世界中の魔法医や魔道士を訪ね、栞を見て貰ったそうだが、彼女の病が治る見込みは無い。
ある有名な魔道士は「魔力の枯渇」が原因だと言っていたそうだが、それも可笑しな話だ。
なにせ栞は魔法使いじゃない。癒しの奇跡を起こす神官なんだからな。
自らの魔力を高める魔術と違い、神の力を借りる神官に魔力の枯渇なんて本来無縁の筈だ
もう俺達にはただ弱っていく栞を見続けるしか手は無いのか。
「たしか先週も栞ちゃんの事、診て貰いに行ったんでしょ?」
「うん…前に絶望的な患者を何人も治した人だって聞いて……でもダメだった…」
くそっ!
駄目なのか…やっぱり栞はもう……
「……ここで香里と一緒に俯いて栞ちゃんが良くなるなら幾らでも落ち込んでやるさ!でも違うだろ?だったらせめて顔を上げようぜ!俺達が諦めなきゃ何も終わりじゃないさ!」
北川…
「北川君」
「潤……」
まったく…コイツにはつくづく救われる。
そうだな!諦めないさ!諦めれる訳なんか無いさ!!
珍しく北川が良い事言ってるんだ!行こうぜ香里!まだまだこれからさ!俺達も栞も!
「相沢君…うん!そうよね!それにね、全くの無駄てわけじゃなかったの」
「ほんと?」
「ええ。その法師様って『
「ほんと?香里!!すごいじゃない!!」
「うん!『法皇』なら何か良い方法を知ってると思うし、それに『
「そいつはかなりの希望だな!っつうかそれ以上の希望って無いじゃん!」
「うん!」
『法皇』と『聖姫』……四天滅殺の2つ…か
【四天滅殺】…それは5年前の降魔戦争を終わらせた4人の英雄の総称だ。
それぞれ
一人は剣士………『
真紅の刀を持つ、すべての剣士の頂点に立つ者。
一人は
神の意を借る者であり、神の威を狩る者でも在ると云う
一人は魔術師………『法皇』の字名を持ち、全ての魔法をその手に修める
その知識はこの世の理を修めているとも噂される程のもの。
一人は神官戦士………『聖姫』と崇められる神の奇跡の代行者
全てを愛す者。そして全てを癒す者。
四天滅殺争うを禁ず
その強大過ぎる力故、四天が争う事を固く禁じたのはエアー王国そのモノだ。
大陸を制した王国が最後に恐れるモノが同じ人類。それも自分達を魔王から救った者達と云うのは皮肉な話だ。
だが、それでも、そうせざるを得ない程の力が四天には在ると云う事になる。
そうだな。『法皇』なら何か知ってるだろうし、なにより『聖姫』の力を借りる事が出来れば、栞だって治るに決まってる!
「うん!私もお母さんもそう信じてる!だから希望は消えて無い!」
「よかったねぇ香里」
きっと上手く行く。行くと信じるさ!すべては信じる事から始るんだからな!」
「かなり臭いけど相沢に言う通りだな!」
!!またか?
「あはははぁ。祐一ったらカッコイィ」
「ふふふ。ホント、あんた達って暑苦しいわね。さっ!行きましょっ。そろそろ遅刻しちゃうわよ!!」
「まじ!?」
なんと!
「あははぁ」
元気に走りだす美坂を追いかけて、俺達は学園へ駈け出した。
その為に気が付かなかった……俺達を見つめて居た者の視線に……その声に……
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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