四月の風
writeen by 佐藤こみのち

四月の風

〜The first grade〜


この俺もついに高校生か。桜が眩しい。この桜の眩しさが俺の未来を暗示している。
……とかだったらいいなあ。
そう考えながら、俺北川潤(この春から高校一年生)は
これから自分が通うことになる学校の門をくぐった。
これから始まる学生生活。期待に胸を膨らますばかりだ。

冬が厳しいこの地方で春が来るのは喜ばしい。
暦の上で春といえば一月、二月、三月をさすが、この北国では三月までは冬と言っていいだろう。
え? 北国なのに桜が入学式で咲くのは変じゃないかって?
またそんな細かいことを……
この桜は生物学者キャット伊藤(愛称)が品種改良して作り上げた、
ソメイヨシノより早く咲く桜で、学校の近くに沢山植えられてるんだ。ピンクの度合いはソメイヨシノに劣るけど
気の持ちようでソメイヨシノより濃いピンクに見えるんだよ。わかったか。
おっとそろそろ時間だ。急ごう。

俺は人が特に集まっている、クラス発表の張り紙の前まで来た。
見るまでに時間がかかったが、何とか見ることができた。
1年F組か。
見る限り中学時代の友人とは皆はぐれてしまったようだ。
まあいいや。別のクラスに居たほうが忘れ物を借りる時とかに便利だしな。
新しい友人を作ればいいさ。


「今日から皆の担任になる佐藤だ。よろしくな。フルネームを漢字で書くと……
あれ、チョークが無いぞ……」

ザワザワ声が静まったところで担任の自己紹介。まだちょっとは話してる奴も居るがな。
担任はごくありふれた名字の男の若い先生だった。

「趣味とか教えてくださーい」

誰か知らないやつの声。後で名前はわかるだろう。

「ま。チョークは後でいいか。趣味はクイズだ。クイズ番組はいつも欠かさず見ているぞ。
いつか学校の全部の授業をクイズ番組形式にするのが夢だ。そのときは皆も協力してくれよな」

無茶言ってやがる。まあ担任の趣味なんてどーでもいいよなー
俺の人生にまったく影響ナッシングだし。

「次は皆が自己紹介する番。自己紹介した奴から最初の席替えのくじを引いてもらう。
順番決めるから出席番号最初と最後、じゃんけんしなさい」

いきなり席替えか。最初の席替えは高校生活を占う大事な儀式だからな。
勉強する気もしない気もこの時にかかっているんだよ。
最初に隣になった奴に何て話かけようか。いやそんなこと考えるのは俺らしくないな。
俺らしく思ったままのことを言えばいいんだ。うん。

「北川潤です。よろしくお願いします。」

普通の自己紹介をした後運命のくじを引く。
本当は普通じゃない自己紹介もしてみたかったと思うが、思うだけにしておいた。

6番。


教卓
13 19 25 31
14 20 26 32
15 21 27 33
10 16 22 28 34
11 17 23 29 35
12 18 24 30  

後ろの角の席だ。しかも窓側。やった。
嬉しさのあまり右隣の席の女子に話しかけようとしたができなかった。
机に張り付いて睡眠の真っ最中だったから……
自己紹介の時はちゃんと起きてたのに。早業だ。
初日からよく寝れるなこいつは。すごい度胸だ。大物だな。

   ■     ■     ■     ■

「全員の席が決まった所で先生からクイズ
このクラスは全部で三十五人ですが、そこで問題
大衆文芸作品中最も優秀なるものに与えられる直木三十五賞
初の受賞者で、『鶴八鶴次郎』『風流深川唄』『明治一代女』などを書いたのは誰?
わかった奴にはごほうびがあるぞ」

さっぱりわかんねぇ。答えもこのクイズの意図も……
本当に分かってるのか、ボケたいのかポツポツと手を上げる人が出てきた。

「はい、じゃあ先生の前の席の君。久瀬君だったね。答えは」

「川口松太郎です」

「ピンポンピンポーン大正解!
ちなみに今のはアタックチャンスの問題でした。
というわけで正解者。君は川口松太郎君だったかな。好きな席を奪い取ることができます。何番?」

「久瀬です。じゃあ6番の席を」

「久瀬君は6番か。いいぞ。じゃあ北川君は入れ替わりで13番の席に」

「ちょっと待て。うそだろぉ……」

「文句があるなら正解するんだな」

アタックチャンス? 納得できるかよ!
せっかく角の席を取ったのにいきなり教壇の前の席に移動かよ。
あんまりだぁぁぁぁ


北川潤は凹んでいた。そう、朝とは対照的に……

「ふっ、俺にはもうどうでもいいことさ。このまま、あの空の向こうへ…。」

「元気出しなさいよ。そういうこともたまにはあるって。
こんなことがしょっちゅうある訳じゃないんだし。ね」

北川の新しい席の左隣に座っていたウェーブ髪の顔の整った女子、美坂香里はあまりに可哀想に思って
励ましの言葉をかけた。

「……ありがとう。美坂さんだっけ?」

死にそうな声で礼を言う北川。

「あたしは美坂香里。香里でいいわよ」

「じゃあ美坂って呼ぶよ……
ははは、新学期初っ端からツキゼロって縁起悪すぎだな俺って。美坂もそう思うだろ?」

「どうかしら。学生生活の不運を最初に使ったわけだから 後はいいことだらけかもしれないわよ。根拠はないけど」

これが美坂香里と北川潤の出会いだった。
美坂香里の北川潤の第一印象は、『ついてない星の下に生まれた男』だったという……
ちなみに彼は2年の3学期まで三列目より後ろの席を取れることは無かったのだった。

おわり


あとがき&次回予告

祐一「なるほど。俺がいない時にこんなことがあったのか。ふーん」
北川「ちなみにKANONの舞台が新潟あたりならソメイヨシノが咲いてて丁度いいくらいなんだけどな。
 作者のイメージでは東北北部だし、解釈の余地を残しておいた、ことになるかな?」
祐一「ああそう。ま、このSSが言いたいことは
 新学期いいことがあった人もロクな事がなかった人も、明日はor明日もいい事があるかもしれない
 前向きに新生活を送れってことだな」
北川「そうかもな。感想等あったらお便り待ってるからな。
 それじゃ、お元気で。」
祐一「バーイ」


Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


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