輝明学園教室:天野美汐

 昨日、アンゼロット様は、私の身近なところに裁定者がいるとおっしゃられていた。
 しかし、周囲をぐるりと見渡すも、そんな大層な人物に心当たりはない。
 私の交友関係なんてたかが知れている。
 このちっぽけな教室の中にも、私に友人と呼べる人物など、ほとんどいない。せいぜいが、私と同じく、巫女クラブで共にウィザードとして活動する数人程度。しかし、その誰もが、裁定者の素質があるとはとてもではないが、考えにくい。

(八方手詰まりですかね……)

 そう思いかけたとき。
 私は、ずっと高等部に入学してから、ぽっかりと空いている席に目が行った。
 あそこは確か、何かの病気で長期入院している女子生徒の席。いまだ登校したことのない少女。
 確か入学式のときに、軽く声をかけられた記憶がある。
 その時には、軽く挨拶を交わした程度だったが……顔もよく覚えていない。
 私は思い切って、隣の女子生徒に声をかけてみる。

「すみません、ちょっといいですか?」
「何? 天野さんから声かけてくるなんて、珍しいじゃん」
「大したことではないのですが……入学式からずっと学校を休んでいる生徒がいますよね?」
「あー、美坂さんのこと? あたしもよく知らないんだけど、何でも重い病気で長期入院って話でしょ?」
「美坂?」
「そ、美坂栞。知らない?」

 首肯で受け答えする私に、これ以上は興味なくなったのか、女子生徒は退屈な授業に耳を傾け始めた。
 しかし、私はその空いた席から目を離せずにいた。
 まさかとは思うが……

「美坂……栞。調べてみる価値はあるかもしれませんね」



名雪の夢:水瀬名雪

 久しぶりに見る夢。
 大きな洋館の中庭に一人たたずむわたしを、クマのぬいぐるみを抱えた小さな女の子が、迎えてくれる。
 この子がわたしのウィザードとしての目覚めを促した子。
 今でもこうして、わたしの夢の中で時々色んなアドバイスをしてくれる子。
 彼女は
TIS
 夢の中でしか会うことの出来ない、わたしの友達。

「こんにちは、お姉ちゃん。今、お菓子とお茶を用意するね」

 夢の中では何でも彼女の思い通りになる。彼女がお菓子とお茶を求めれば、まるで最初から存在していたかのように、熱いお茶と、クッキーが、テーブルと椅子と一緒に突然現れる。
 TISは、ちょこんと椅子に座り、空いたもう一つの椅子に、わたしを誘った。

「お姉ちゃんも一緒にどうぞ」
「うん、いただきます」

 どうせ夢の中なのだ。遠慮なんていらない。
 わたしは彼女に勧められるまま、椅子に座り、クッキーとお茶を堪能する。

「お姉ちゃん、今日はとても悲しそうな顔をしているね」
「うん……あのね、TIS。もしも、友達が何かを隠していて、それを何とかしたいと思うのは、おかしなことじゃないよね?」
「お姉ちゃんは、その友達の力になりたいの?」
「うん。だって香里はわたしの親友だよ? 困ったことがあったら、助けてあげたいと思うのは当然だよ」
「大丈夫だよ」

 TISは確信に満ちた声でわたしを励ます。

「その香里というお姉ちゃんを助けられるのは、お姉ちゃんだけだから」
「え……?」
「……ごめんね。もうすぐ時間みたい」

 世界の景色が急激にモノトーンに変わり、夢の世界に色を残しているのは、わたしとTISだけ。

「待って、TIS! 最後の言葉、どういうこと!?」
「……ごめんね、お姉ちゃん、これ以上わたしは何も言っちゃいけないの」

 申し訳なさそうに、小さな声でつぶやくTIS

「でも、その意味が分かるときはきっと来る。それまで何があっても、お姉ちゃんのお友達を支えてあげてね?」

 声は段々とフェードアウトしていき……

「おい、起きろ名雪」
「うにゅ……」

 祐一の声で目を覚ますと、そこは見慣れた教室の中。でも、祐一以外人が誰もいないのはどうして……

「みんなは?」
「帰った。もう放課後だ」
「……いけない、また寝ちゃった」
「それより早く教室から出てってくれ。この後俺の補習が待ってるんだから」
「あ、ごめん……」

 祐一のその言葉に、わたしは眠い目をこすりながら、教室を後にする。

「香里を支えて、か……」

 道すがら、夢で見たTISの言葉を反芻する。

「もちろんだよ。だって、香里はわたしの親友なんだから」



黄昏時の商店街:相沢祐一

「し、死ぬ……」

 今日も補習は厳しかった。そして家に帰れば秋子さんの補習。最近寝るのは、1時を回る頃。はっきり言ってエミュレイターをやり合っていた方が幾分か楽だ。
 ふらふらする頭で、商店街を歩くと、何か聞き覚えのある声が……

「うぐぅ〜! どいて! どいて〜!」

 鈍った頭で反応することもままならず、振り向いた瞬間、猛スピードで何かを両手に抱えながら走るあゆと激突した。
 衝撃であゆ共々転び、したたかに後頭部を打ち付ける。

「うぐぅ、痛い……」
「痛いのは俺の方だ……」

 〈月衣〉のおかげで幾分かはましだが、全く痛くないというわけではない。
 あゆも鼻を思いっきりぶつけたらしく、鼻をさすっている。
 涙目のあゆが、俺に抗議の目を向ける。

「どいてって言ったのに……ひどいよ」
「あー、補習の疲れで頭がぼーっとしてたもんでな。で、何でお前は商店街をそんなに急いで走っている?」
「あっ、それ所じゃないんだよ!」

 立ち上がり、わっしと俺の手をつかみあげると、あゆは猛スピードで俺を引っ張りながら走る。

「ちょ、ちょっと待て! 何がどうなってる!?」
「説明は後でするから、今は急いで!」

 あゆはそれだけ言うと、商店街を抜け、住宅街の入り組んだところへ走り出す。そして、周囲を見渡すと、ほっとしたように、俺の手を離して、大きく深呼吸する。

「こ、ここまで来れば、大丈夫だよね?」
「……一つ聞かせろ。あゆ」

 俺のどすを聞かせた声に、びくりと、体を震わせるあゆ。

「な、何かな?」
「何でお前は大慌てで商店街を走ってたんだ? さっきお前、ここまで来れば大丈夫と言ってたな? どういうことだ?」
「う、うぐぅ……お、怒らない?」
「ああ、俺は寛大だからな」
「じ、実は、商店街でタイヤキ屋さんを見つけて……」

 そういえばあゆはタイヤキが大好物だったな。

「それで?」
「それで、タイヤキが欲しくて、注文したんだけど……」
「だけど?」
「お金がないことに気が付いて……」
「……もういい、大体分かった」

 頭痛くなってきた。
 要するにこいつはタイヤキを食い逃げしてきた、と。
 金がなくてタイヤキ食い逃げするウィザードなんて前代未聞だ。
 俺は縮こまっているあゆの手を強引に引く。

「あゆ、商店街に戻るぞ」
「え、ええっ!?」
「今ごろそのタイヤキ屋、まだお前のことを探してる。きっちり事情を話して、許してもらうんだ」
「う、うぐぅ、ここまで逃げてきたのに……」
「そういう問題か!? 大体、なんでお前、金がないこと素直に言わずに逃げたりしたんだ!?」
「だ、だって、あのおじさん、凄い怖い顔だったから、言いにくくて……」
「……分かった」

 俺は財布の中から、クレジットカードを一枚取り出す。

「どこか適当な所で金を卸す。これでも、ウィザードで食ってける位には稼いでるからな。お前の金を立て替える程度なら、どうにかなる」
「祐一君、そのカード、何?」
「ウィザード御用達のクレジットカード
MUGEN-KUN。どこでも自由に金が引き出せるという代物だ。お前はまだ持ってないだろ?」
「う、うん。
0-PHONEはこの間秋子さんから連絡用に、ってもらったけど……」
「後で秋子さんに頼んでみろ。無駄遣いしないという前提で、お前名義の奴を作ってくれると思うからな」

 ただし、と俺は付け加える。

「今後またタイヤキを食い逃げするなんてことしたら、カード取り上げるからな」
「うぐぅ! それ、横暴だよ!」
「食い逃げの方がよっぽど駄目だろうが! とっとと謝りにいくぞ。俺も付き添ってやるから、安心しろ」
「う、うん……」

 ほれ、と差し出した手をおずおずと握り返すあゆ。
 俺とあゆは元来た道を戻ろうとする、が……

「なあ、あゆ」
「何かな?」
「ここは一体どこだ?」
「そ、そんな事分からないよ。こんな所、僕初めて来たし」
「何で分からないんだよ!?」
「夢中で走ってたから分からなかったんだもん!」
「そんなもん言い訳になるか! 俺だってこの辺の地理、そんなに詳しくねえんだぞ! 大体お前、ここの生まれだろうが!?」
「それはボクだって同じだよ! 七年間も寝てたんだよ!? 周りの風景が昔と全然違うんだから、分からないのは同じだよ!」
「ええい、使えん!」
「祐一君だって!」
「何を!?」
「何さ!?」
「あの……」
「「何!?」」
「きゃ……」

 突然声をかけられ、俺とあゆは反射的に睨み返してしまう。
 声からすると、女の子のようだったが……
 女の子は俺たちにびっくりして、へたり込んでしまっている。
 ストールを防寒具にした、ショートボブの女の子。
 コンビニで何か買い物をしてたのか、随分と大量のビニール袋を、両腕一杯にぶら下げている。びっくりした衝撃で、それらが散乱し、道一杯に散らばっている。

「あ……ごめんなさい、つい……」
「あー、俺の方もすまなかった。立てるか?」
「あ、はい……」

 俺の手を引っ張って立ち上がる女の子。

「あー、一杯物が落ちちゃってる。ボクが拾うの、手伝うよ」
「あ……」

 女の子は、何か一瞬言いたげな顔をするが、すぐにその顔を引っ込める。

「大丈夫です。自分で拾いますから……」
「そうか? 結構な量が散らばってるが……」
「平気です」
「……そうか」

 それ以上は何も言わず、彼女は黙々と落ちたものを拾い集めた。

「随分一杯買い込んでるんだな?」
「わたし、あんまり外出できないから、たまに外出するときに、まとめて買うんです」
「……なんだ、引きこもりか何かか?」
「ち、違うんです。ちょっと、身体が弱いから、なかなか外に出られないんです……」
「……そういうことか」

 ……少し悪いことを聞いてしまったようで、バツが悪い。
 頬をかき、視線をそらす。
 その俺のしぐさを見て、くすり、と少女が笑う。

「いいですよ。大したことじゃないですから」
「いや、悪いことを聞いた」
「それより、どうしてお二人は喧嘩してたんですか?」
「ああ、それはこのちびっ子が商店街で悪行三昧をした挙句に俺を巻き込んで、道に迷ってしまったから、だ」
「あー! 今、聞き捨てならないこと言った! 悪行三昧って何!? ボク、悪いことなんて全然してないもん!」
「食い逃げは立派な犯罪だ! バカもん!」
「うぐぅ! バカって言った!」
「言っちゃ悪いか!?」
「悪いもん!」
「ふふ……」

 少女が俺たちの口げんかを見て、笑う。

「な、なんだよ?」
「いえ、お二人とも仲がいいんだな、と思いまして」
「そ、そうかな?」
「そうですよ。言いたいことがいえる間柄って、仲がいい証拠です」
「まあ、確かにこいつに対しては遠慮はいらないと思うが……」
「……そういうの、ちょっと、羨ましいです」

 その少女は、寂しげに、ふっ、と笑うと、きびすを返す。

「それじゃ、どうもご迷惑おかけしました。これで失礼します」
「ちょ、ちょっと待った!」
「……はい?」
「商店街まで、案内してくれないか?」



「これでいいですか?」
「ああ、助かったよ、ありがとう」

 俺は少女に礼を言う。ちなみに商店街に近づく毎に逃げようとするあゆの襟首を引っつかんで。

「それじゃ、さようなら」

 少女は一礼して、俺たちから雑踏の中へと消えていった。

「さーて、と」

 俺はあゆを一睨みする。あゆはびくり、と身を縮ませて、怯えている。

「一緒に謝りに行くぞ、あゆ。事情を話せば、わかってくれる人だといいな」
「そ、そうじゃなかったら?」
「諦めろ。お前のやったことは犯罪だ」
「うーぐぅううう!」

 もがくあゆの襟首をずるずると引きずって、俺はタイヤキ屋の親父を探し出した。



香里の家:美坂香里

「ただいま」

 それに答える声はない。基本、父も母も、絶滅社の研究に掛かりっきりで、このカモフラージュに買った家に帰ることなんてめったにない。2階に用意されたあたしの部屋に、かばんを放り投げ、制服を私服へ着替える。
 あたしの両親は絶滅社でも、かなりの地位を占めている研究者で、主に薬物による人間強化のプロフェッショナルだ。実際、緋室さんをはじめとする、絶滅社の強化人間の多くは、調整に、うちの薬を頼っている。なんでも、副作用もそんなに厳しくないため、うちの薬を服用している間は、強化人間としての寿命も長いからとのことらしい。
 あたしも子供の頃、人為的に(ロン)を引き出す実験用の薬を強制的に服用されて、結果的にウィザードとして覚醒した。今でも、両親はあたしの身体を臨床実験に使って、薬の効果を研究しているが、実際に、今あたしが飲んでいるのは偽薬である。両親は気づいていないが、あたしは、今は薬に頼らずとも、自力で龍使いとして活動できる。それを秘匿しているのは、いつかこの家を出て行くための切り札にするため。少なくとも、あたしは両親に対していい感情は持っていない。少なくとも、実の娘を人体実験に使うような親に親近感を持て、というのが無理な話。それでもこの家にいるのは……

「ただいまー」

 玄関から聞こえた女の子の声。
 びくりと身体を振るわせる。
 それは、あたしの妹の声。
 あたしはとんとんと階段を駆け上がって、自分に近づいていく。

「お姉ちゃん、帰ってる?」

 扉越しに、無邪気に尋ねるその声に、あたしは無言で返す。

「…………」

 寂しげな沈黙。
 そして、あたしの返事がないことを悟ったのか、自分の部屋へと入っていくのを音で確認する。

「……っ」

 あたしは、自分の勉強机の引き出しを開ける。
 そこには、あたしと妹が写った写真の数々にまぎれて……一丁のハンドガンが収められていた。
0-PHONEのメールを開き、任務内容を確認する。

『対象:裁定者・美坂栞の監視。状況によっては抹消を許可する』

「なんで……あたしに……」

 あたしは
0-PHONEを叩きつけてやろうという衝動に駆られるが、そんな事をしても意味がないことぐらい、とっくに分かっていた。



天野神社:天野美汐

「美坂栞……確かこの子でしたね」

 私は私室にあった学園の写真付き名簿を取り出し、顔写真と名前を確認する。
 ショートボブのおとなしそうな子、というのが私の第一印象だ。

「ねー、美汐、何してるの?」

 私の隣にぴたりと張り付いている真琴が、私に尋ねる。

「いえ、ちょっと調べ物をしてるだけですよ」
「真琴もお手伝いしていい?」
「大丈夫。真琴は、漫画でも読んで、待っててください」
「はーい」

 真琴は言われたとおりに、自分が買ってきた漫画を読み始める。私が彼女にお小遣い代わりにあげた真琴名義の
MUGEN-KUNを渡したら、真琴は遠慮なしに好きなものを買い始めだした。翌月の料金がものすごいことになって、私が全額立て替えることになり、結果私に大目玉を食らったこともあって、最近は自重しているが。
 真琴が漫画を読みふけっている間、私は名簿をめくり、2年のクラスをめくっているとき、ぴたりと、ある一人の人物に目が留まる。

『美坂香里』

 彼女のことならよく知っている。私は同年代のウィザードとはめったに組まないが、彼女とはたまにではあるが、組んでエミュレイターと戦ったことがある間柄だ。
 しかし……
 私はもう一度、栞さんの写真と、香里さんの写真を見比べる。

「似ている……」

 珍しい姓もそうだが、微妙に二人の面影が似ている。もう一度二人の写真を見比べるが、やはりなんとなく面影が似通っている。

「もしかして……」

 後ろの住所録のページを開き、栞さんの住所と、香里さんの住所を比べてみる。
 そして、その住所は一言一句完全に一致していた。
 これはもう確実だろう。

「美坂栞と美坂香里は……姉妹」

 そして香里さんは絶滅社と繋がりがあると聞く。
 ということは、何かしらの情報はあるかもしれない。
 これで、ある程度方針が決まった。

「明日、香里さんに聞いてみましょうか……」



水瀬家:相沢祐一

「よかったな、あゆ。とりあえず親父さんがいい人で」
「うん、本当によかったよ」

 あの後。
 コンビニの
ATMから金を引き出し、あゆを探し回ってたタイヤキ屋の親父を見つけ、俺が代金を支払って一緒に平謝りをすることで、どうにか許してもらえた。
 代金を支払ったということで、あゆはリビングでタイヤキを美味そうにほおばっている。

「……反省してるんだろうな、お前」
「も、もちろんだよ。反省してる」
「よーし、もう食い逃げなんかしないって、俺の前で約束しろ」
「うん、約束……」

 あゆはそう言うと、俺の前に小指を差し出す。
 その意味に気づき、俺はあゆの指に小指を絡めた。

「……隙あり!」

 俺はあゆの抱えた紙袋から、タイヤキを一つ奪い取る。

「あー! ボクのタイヤキ! ドロボー!」
「はっはっは、隙だらけのお前が悪い」
「返してー! ボクのタイヤキー!」
「はっはっは、そんなものこうしてしまえば!」

 俺はひょい、とタイヤキの尾をつかんで一気に一口で食い尽くす。

「あー! あー!」
「はっはっは、ご馳走様!」
「うぐぅ! もう怒った!」

 あゆは赤い左目を輝かせ、左手を俺にかざす。
 っておい、お前まさか……

「スターライト!」
「うおおおっ!?」

 いきなり魔法をぶっ放すあゆに、避けきれず、まともに食らう俺。派手に吹き飛んで、リビングがめちゃくちゃになる。

「あらあら、何の騒ぎですか?」

 丁度その場に居合わせた秋子さんが、困った表情を浮かべて、俺たちの間に立つ。

「あ、聞いてよ秋子さん! 祐一君が、ボクのタイヤキを食べちゃって……」
「まあ、それはあまり感心しませんが……あゆちゃん、あまり魔法をむやみに人前で撃つのはいけないとあれほど言ったじゃないですか」

 秋子さんのその声色は、外の氷点下の気温よりももっと冷たかった。

「うぐっ!」
「あゆちゃんはもう少し『お勉強』が足りなかったようですね」
「ご、ごめんなさい秋子さん! だ、だから『あれ』はもう許して!」

 『あれ』? 何だ『あれ』って!? あゆが秋子さんの下でウィザードの訓練を受けているのは知ってるけど……どんな訓練をしてるんだ?

「さ、まずはリビングのお片づけから始めましょう。それが終わったら……分かってますね?」
「は、はい!」
「祐一さんも、喧嘩両成敗ということで、今日の夜の、補習分のテキストは2倍に増やしましょう」
「ぐあ……そ、それだけはご勘弁を……」
「勘弁できません。それとも……留年の方がお好みですか?」
「……はい。がんばります」

 留年の話を持ち出されたら、俺に勝ち目はない。
 今日は何時に眠れるだろう。そんな事を俺は考えていた。



Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


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