『一番面白ぇ、最高の快楽悦楽の発生源だろうがぁ!!!』
ゾク・・・ゾクゾク
『てめぇと最高の
ワクワク、ワクワク
『でも、まだ足りねぇ・・もっとだ・・・もっともっと・・・もっともっともっともっともっとだ!!!』
ウンウン・・コクコク
『もっとだ、もっと・・・・もっと俺を楽しませてくれぇぇっ!!石蕗巌おお!!』
ウズウズ
ウズウズウウズ
ウズウズウウズウウズ
ウズウズウズウズウズウズウズ
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・・・・・・・・・・・《霊神眼》プチッ
「ああ~!!たまんねぇぞ!!!」
突然、暴れだした
堪忍袋の緒が切れたような爆発振りで喚き散らす
同時に彼の全身から感情の余波が当たりに撒き散らされる
その空間には彼ら以外は誰もいなかったから良かったがそうでなければ無視できない被害が出ていたことだろう
草も木も水も土も砂も大地も山も海も空も・・・・何もそこにはなかった
あるのは二つだけ
光と闇が混ざり合った混沌
二純融合化した世界
上も下も右も左も斜めも前も後ろもわからない
地平線も水平線も・・・境界線すらもわからない
そんな以上ともいえる世界に彼らはそこにいた
十数分前からソワソワ、ウズウズ、コクコク、ゾクゾク・・と忙しなく身動ぎと身悶えを繰り返していた少年
上半身を全て肌蹴だした〔斬覇装〕を纏い
全身に刻まれた混沌色で描かれ綴られた呪いの如き紋印
そして、背丈、体格、顔の造形、口調、そのほとんどが相沢祐一とほぼ同一
差異ある部分といえば、銀色の髪、鮮血色の左眼と蒼穹色の右眼
「・・・・・少しは落ち着かんか」
そして、彼女を抑える一人の女性
昔の言葉と口調で話す妙な人物
闇よりも黒く暗い衣に身を包む浅黒い肌と黒衣に同化する様な漆黒の長い髪
残念ながら衣のせいで顔が見えないので表情こそわからないが声の様子からしてかなり呆れていることだけはわかる
「ふざけんなよ、■■■!これが落ち着いていられるかよ!」
叫び返す少年
女の言葉は逆効果のようで返って少年の燃え滾る欲望をさらに活性化させてしまう
「そりゃあ、お前と俺の役目は違うがお前だって感じているだろうが!王の魂の震えを、慟哭を、叫びを、願いを、そして求めを!!発現する無限の霊力!それでも飽き足らずなおも求める力への渇望!!他者に影響を与えるほどの狂氣を身に纏いながらも狂わずただひたすらに一つの願いを欲し、求め続け、足掻き、昇華し続ける御魂!!もう限界だ!」
心臓を抉り取らんばかりに指が胸に食い込む
盛大なジェスチャーでその荒れた心を表現しているのだ
そこに痛みは無く、ただただ熱き魂が炎上するのみ
「されど、主はまだ妾らを求めてはおらん。己の力のみで敵を打ち倒す。妾らのことなど、思考の片隅にも存在せぬ。まあ、長年現れなかった妾らをこんな時に求めるのもおかしな話よ」
嘲るとも思える笑みを浮かべる女
その対象が自分か祐一かは彼女自身にしかわからない
「ソレでも俺は行くぜ!まどろっこしい条件も何も関係ねぇ!俺はもう闘いたくて堪らないんだよ!王の手で、王の力で、王と共に!!俺は俺の存在意義を刃で、刀で、力で示す!!それこそが俺の、王の剣たる、■天■の・・・!!」
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第20.7話 全門第3回戦~決着・証を示す絶技~
ドクンッ
「あ?」
突然、左手に握った小太刀が震えた・・・・ような気がした
携帯電話マナーモードのように物理的には震えていない
こう、なんと言ったら良いか・・・・・そう
ドクンッ
ドクンッ
やはりだ
震えてはいないけど、震えが伝わってきている
正常な心臓の音のように規則正しく、響いているわけではない
むしろバラバラで連続もあれば、単発でもある
ドクンッ
だが、その音は確実に多く、大きく激しく高鳴り始めている
岩礫と地面との爆砕音でそれ以外の音が拾えない状態でも、はっきりと・・・
俺の耳にはその鼓動の音が届いていた
どくんっ
どくん
ドクン
ドクンドクンッ
「・・・・・・何だ?」
『王よ、待たせたな』
呟いた瞬間、返される言葉と同時に・・・・目の前の視界が全て混沌に染めあげられた
一気に気分が悪くなり、視界がチカチカする
上下左右前後の感覚が無くなり、宇宙に放り出されたような感覚だ
宇宙に行ったことはないから比喩表現になってしまうが
そんなこと、今は重要ではない
今、早急に確認すべきことは
「ここはどこなんだ?」
立っているのか浮いているのかも定かではない
俺的意識では立っているつもりだ
声の反響も無いことからそれなりに広いこともわかった
だが、一体・・・・
「ここは俺の世界だ。本当なら王の世界でも良かったんだがあいつはまだ発言する気は無いようだから、こっちに呼ばせてもらったぜ」
「!?」
気を抜いていたつもりは無かった
巌との闘いがまだ続いている、つもりなのだから
さすがにこの場所に来たときは戸惑いが無かったと嘘になるが・・・
それでも、如何に志貴が全力で気配を消していても気付く自身はあった
本気の全力戦闘中であるのならば尚更だ
と、なると・・・俺を遥かに越える実力者
それがどうかはわからないが只者ではないことは確かだ
加えて、居場所がまだわからない
気配を探ってはいるんだが声の聞こえた方向もわからないとは・・・
「警戒すんなって。俺は王の敵じゃない。敵であるはずが無い。何せ俺は王の為にのみ存在する者なんだから」
王?王とは一体誰だ?
「王は王だ。俺の前に存在する相沢祐一、お前こそが俺の・・いや、俺らの王だ」
声は正面から聞こえてきた
そして、眼前の奥行きもわからない混沌空間がグニャリと歪み、そいつが現れた
「なぁっ!?」
思わず驚愕の声を上げてしまう
無理も無いって、絶対
この心境は誰だって経験すればわかる
上半身を全て肌蹴だした〔斬覇装〕を纏う銀色の髪、鮮血色の左眼と蒼穹色の右眼
全身に刻まれた混沌色で描かれ綴られた呪いの如き紋印
問題はそこじゃない、俺が驚いた理由はそこじゃない
驚愕にいたる真の要因は・・・その顔だ
紋印が刻まれているがその顔の造形は間違いなく俺と同じもの
ドッペルゲンガー?
「あんな呪いモドキと一緒にすんな!」
どうやら違うようだ
と、なるとこいつは一体・・・・
「本当にわからないか?俺が何者なのか・・・」
知っている、俺は知っている
刻印の少年は寂しさと申し訳無さと怒りが混ざり合ったような瞳で視線を交錯させてくる
なんだ・・・・俺は彼を知っているのか?
ああ、そうだ・・・俺は彼を知っている
だが、俺は彼を見たことなんてない
それだけは確かだ
直接会ったことはこれが初めてだ・・・だが、彼はいつでも俺の傍にいた
しかし、俺の心が、魂がその答えを否定させる
「俺は王の求めしもの・・いや、求めていたもの。王の独り善がりの傲慢で、半端に強き力と心と信念により、遠ざけていたこの逢瀬の瞬間」
そう、己一人で全てをこなせる強さを求めていた俺が招いた最悪にして最低の失敗
いつしか求めることさえ止め、それに変わる強さを求め・・・道を違えた
「あ、あ・・・ああ・・・・」
彼は刀、彼は刃、彼は剣、彼は俺
共に突き進むべき最高にして究極の相棒
『相沢』に伝わる至高の秘術にして、魂の別型
「お前は・・・」
「そうだ。さぁ、俺の名を叫べ!腹の底、いや魂の根底から咆哮しろ!!俺と王の前に立ちはだかる全ての者に俺の名を刻んでやれ!俺の名は・・・!!!」
「終われ、小童!」
全方位から岩礫弾が祐一に向かって降り注ぎ、飛来する
礫と礫の間は10歳の体格の祐一でも入りきれないほど密度が厚い
絶対に避けきれない!
巌は確信を得る
それは必殺
試合ならば殺しは肯定される
だが、もはや巌にはそのような意識は無い
敵を排除する、その意識しか無い
もはや寸前まで岩礫が迫り・・・・
「
〔絶天王〕」
噴火する火山の如き霊力の奔流
霊力という強大なエネルギーが礫の飛軍を受け止め、削滅させる
「馬鹿な・・・」
ありえない現象を目の当たりにした巌
彼の中でもこれほどの力の発現はそうそうない
「これが・・・【阿修羅王】の息子か・・・」
「《始解》と同時に具象化まで行ったか・・・はずみで出てきたのか、それとも・・・・」
「もう、そこまで通じ合ってるってことでしょ?落ちこぼれの鬼才が《卍解》習得への王手を一気にかけたわね」
嬉しそうに話す二人
永木に渡り敵わず、願い自体を忘却しかけていた我が子の念願、嬉しくないわけがない
そして・・・ようやく、手が届いた《始解》の門
しかも、《卍解》の領域に後一歩か二歩のところまでというおまけつき
今までの分も取り返さんばかりの勢いだ
「お兄ちゃん・・・よかった」
「祐一・・・・おかしいな、悔しいはずなのに嬉しいぞ」
「奇遇だな、私もだ・・・複雑な気分だな」
「俺は悔しいだけだ」
最後にいらないチャチャが入ったがまあよしとしよう
「〔絶天王〕・・・」
祐一は自身の両手にある始めて解放された斬魔刀の名を呟く
刀身の長さは半尺、柄も含めれば六尺に相当する片刃の刀剣
一見刀のようにも見えるがその長大さで直刀、通常の刀よりも刀身が厚く、幅も一回り太い
加えて、切っ先が両刃になっている
言うなれば、西洋風の刀、細長い
それが二刀
柄頭同士が灰銀色の布で、祐一の背中を通して繋がっている
あの少年の肌に刻まれていた紋印と同じものがびっしりと刀身にも刻み込まれていた
これが、これこそが・・・祐一が求めていた魂の刃
「〔絶天王〕」
もう一度、同じ言葉を呟き、ギュッとその柄を強く握り締めた
長年共に戦場を駆け抜けた愛刀のようなフィット感
しかも、比喩ではなく本当に羽のような軽さ
未発達の幼い体には不釣合いな武器と思っていた祐一だが
ビュンッ
右の刀を一振りしたらそれは誤解だと理解した
なんとも振りやすい
いや、手に伝わるフィット感からして予想はしていたがこれほどまでに手に馴染むとは思っていなかった《始解》する前の小太刀のようだ
さらに羽のように軽いとは思っていたが実際に見た目と同じだけの重さはあるようで振った時の遠心力によって生まれる重さが腕に伝わってきた
自然と頬が弛む
『気に入ったか?』
解放時と同時に消えてしまったはずの少年が再び現れた
腕を組み、ニヤリと口の端に小さな笑みを張りつけている
「気に入らないはずが無いだろ?」
もう一度、今度は左の刀を一振りし、応える
『だな。そんじゃ、行こうか?』
「ああ、試し切りには充分すぎる相手だからな」
二人・・いや、王とその剣は共に勝利への一歩を踏み出した
「何度も待たせて悪いが・・・これで、最後だ。後は決着まで突っ走るのみ」
右刀と右肩に乗せ、左刀を水平にして腕ごと前に突き出す
妙な構えだが正直な話、祐一は小太刀の二刀遣いではあっても大太刀の二刀は扱ったこともないのだ
と、いうか昔の侍でも大太刀の二刀を使うものなど存在しないだろう
斬魔士でも二刀遣いはいるがそんな始解は見たことが無い
二刀を合わせても足りないぐらいの馬鹿でかい剣の持ち主はいるが・・・
「ならば、終わらせよう・・・全力をもって!」
祐一に答え応えて、巌は完全なる全力に入った
今までのは戸惑いも多く、邪剣が多く含んだ祐一に翻弄されがちだった為にうまく、力が出せなかった
それこそ、祐一の思惑だったのだから、まんまと乗せられていただけの話だが・・・
今の巌は違う
完全なる全力戦闘モード
《始解》前の祐一ならば数分と持ちはしなかった
かった・・・あくまで過去形だが
その身体から放出される殺意ある闘志は紛れも無く祐一最強の敵になる者だ
「上ッ・・・等!!」
祐一もその闘志に勝るとも劣らない狂氣を開放する
互いの覇気は鬩ぎ合い、グニャリと空間が歪む
これは少し前よりも遥かに強大
精神汚染が蔓延し、力無き者は興奮を暴走させるか、気絶するか、の似た通りしかない
力ある者は固唾を呑んでソレを見守る
その他の生物は全て、その場から逃げ出すか、できるだけ遠くへ離れていく
前者は小動物などがその例で、後者は神凪家の女中などだ
地中にいる生物まで逃げそうなほど、彼らの覇気は凄まじいのだ
そうしている間にも戦況はすでに動いていた
先手は巌
地の精霊に呼びかけ、詠唱
「
硬き槍となりて、魔を穿ち貫け
〝牙礫鎗〟」
巌の眼前の地面が蠢き、30近い土槍が射出された
弾速はあの大技よりも少し遅い程度
どれほどの性能を持っているのか、小手調べのつもりだろうか?
「つまらんねぇこと・・・してんじゃねぇっ!!」
怒気と共に怒声を上げながら、右刀に霊力を喰わせ一閃
〝空刃閃・剛〟
祐一としてはそれを放ったつもりであった
30の礫弾を全て打ち落とすには鋭さより攻撃範囲のある技が良いと判断し、それを放ったつもりなのだが・・・
ヴオォォッ
そんなもの話にならないほどの横7m縦2mのレンズ状の光波が放出され礫弾を一個残らず、飲み込む
「・・・・ハンパじゃねぇな・・・面白い!」
狂った邪笑を浮かべる
最強技〝絶王呀斬〟にこそ、及ばないが近しいものはある
〝絶王呀斬〟に使う半分以下の霊力の量で、だ
(〔絶天王〕の力はおそらく喰わせた霊力を倍増するタイプ。比率は二倍以上か・・・もしかすると陪乗かもしれない・・・)
それほど力を込めず振り抜いた一撃に出鱈目な威力が生まれ、そのまま、巌へと襲い掛かる
「阻め」
巌は静かに告げると地面から三角柱のような岩壁が出現し、光刃を防ぐ
三角柱の角を前面に出し、小さな面攻撃である光刃を左右に別ち、受け流したのだ
三角柱自体の大きさは自身の体より少し大きい程度
過分な力は使わない玄人の戦法
〝瞬歩〟
祐一は三角柱が出現した所で瞬速の一歩を踏み出していた
一直線に三角柱へ迫り
刀式・緑廉
〝地割〟
《木氣》を宿した双刀でクロススラッシュ
ザンッ
霊光刃を防いだ岩壁はあっさりと四つのパーツに分解される
〝地割〟を解き、霊力を纏わせ、地を蹴る
その先にいるはずの男にこの技を食らわすために!!
〝旋咬顎〟
〝乱裂刃〟の突撃バージョン
弾丸のように吶喊しながら回転斬撃乱舞を浴びせる
如何な巌の防御力といえど、〔絶天王〕によるこの猛撃には耐えられまい
・・・・当たればの話だが
「なっ!?」
その刃の向ける先に巌の姿は無かった
すでに振り始めていた刀は空を切る一閃のみで技の不発を表した
(どこへ・・・!)
周りを見回そうと思ったが止め、下を向く
突進したとき、三角柱の上空と横へ逃げた様子は無かった
背後へ退いたのなら姿は見えたはず
姿を消せるとしたら、もうそこしか残っていない
さらに相手は上級の地術師
その答えは一つしかなかった
「おぅ・・・らぁっ!!」
空振りした技によって崩れ、流れた体勢を強引に捻って連撃
今度は二刀合わせての大斬撃を荒れている一箇所の地面に振り下ろす
ある程度は精度を欠いたのか、掘り起こされた地面の後がまだ残っていた
その地点へと双刀を振り下ろす
〝
ガギャァッ
しかし、それは狙った地面から飛び出してきた岩腕が受け止めた
「しゃらくさい!!」
上空からの大斬撃の威力は凄まじく、岩の腕を押し返す
ならば、と巌も両腕に切り替える
これは完全に拮抗
「せあっ!」
そこから独楽の様に回転し、薙ぎに変化
腕を切り落とさんばかりの斬撃
もっとも、腕を引っ込められたので空振りに終わる
「まだまだぁっ!」
再び霊力を喰わせて、地面に突き刺す
刀身がほぼ完全に埋まった
だが、その刃に手応えは無い
「土竜の真似なんざしてんじゃねぇっ!」
斬り上げると同時に霊力を解放
霊圧波動が振り上げた方向に放たれ、砕き払う
爆発爆裂
地中に埋められたダイナマイトが爆発したかのように大地が爆ぜ抉れる
砂煙と土が空を舞い、同時に一つの巨大な影が弾き出された
「ぐぬおぉぉっ・・・」
数度地面を転がった巌は片手倒立で片膝立ちまで体勢を持っていった
3mほど地面を削りながらブレーキをかける
その間にも巌は次の一手を発動
「
大いなる意志が眠りし地を揺るがすことを許されよ
愚者を飲み込む大波と化し、全てを土の下に帰さん
〝地覇・砂鈍爆浪〟」
泥土の大波が全てを飲み込まんばかりに高く高くうねりを上げる
超ビッグウェーブ、それが波だったとしても如何なるサーファーでも超えられない死の津波
だが、通常時でさえ、破った技を今の祐一が破れない道理がどこにある
たとえ方法は違おうとも結果は変わらない
「
死黒の闇より生まれし背徳の化身
天道を穢し、悪に堕ちろ」
得意破道を詠唱しながら、双刀を持った両腕を振り上げる
その刃に霊力を喰わせながら
今日だけですでに霊力の使用量は元来の祐一の
どんなに想いが力に変わろうとも霊力の保有量は変わらない
だが、その異常を可能にさせる物を祐一は所持していた
それが《霊神眼》
超越存在の力の一種
今の祐一を支える力
「
闇が集い核である漆黒の球体が前方に精製される
完全に集約したのを確認し、双刀を黒球に向かって振り下ろす
あの光刃以上の威力を持つ二刀による攻撃
「
霊光の刃二撃分が黒球に追加され、暴走寸前まで飽和された霊力が爆発するように放出される
本来の攻質であるレーザーよりも集束率の甘い放射だがその威力は本来よりも数倍アップしている
それを証明するかのように泥土の爆流を抵抗も無く易々と貫き、そのまま結界さえもぶち破った
パキィィッンとガラスが割れるような音を立てながら、ほぼ無色に近い赤色の結界の砕け散る様が一瞬だけ具現化し、再び霧散する
結界が打ち破られた瞬間、結界を維持していた術者がダンプカーにでも跳ねられたように弾け飛ぶ
召喚師で言う『返りの風』
構成し力を注ぎ込んでいた結界という力が強引に破られたのであれば、ソレは当然だ
幸い、『返りの風』よりも反動は少なかったようで気絶しているものすらいない
しかし、数秒だけなら上級妖魔の攻撃にすら耐える結界を破るとは・・・どれだけの威力だったのだろうか?
それよりも・・・
「あの馬鹿が!」
怒りを示すは祐羅
即座に結界に干渉し、その機能を向上させておいたから結界を張った術者はそれほど被害を受けずに済んでいたが干渉しなかったらどうなっていたかはわからない
「戻ったら説教だ・・・」
とりあえず、祐一の未来は少々暗雲に染め上げられている
結界の術者達は交代要員を呼び、更なる強固な結界を張る
だが、正直な話、術者達はまだ不安を拭い去ることは出来なかった
「・・・・どこへ行きやがった」
泥土の大津波をぶち破った祐一はその先にいるはずだった巌を完全に見失っていた
また地中に隠れ潜んだようだが今度は見失ってから数秒ほど経ってしまったので範囲を限定することも出来ない
舞台の地面全体から気配がして、逆に正確な気配が捉えられない
「斯く成る上は・・・」
〔絶天王〕に霊力を注ぎ込む
霊光が迸り、霊圧が周囲を薙ぎ払う
天に向けて突き上げ、構えた双刀の持ち方を順手から逆手へと、ペン回しのように軽やかに変える
もう少し短ければ双刀を地面に突き刺そうとする祐一、という絵になるシーンなのだが実際は刀が長すぎて、足下ではなく、視線を40度上げた前方の地面を狙わなければならない
少々間抜けだが今の彼の眼前でそう思える強者がいたら是非言ってあげてほしい
今ならミリ単位に爆散される五体爆裂の刑に処されるはずだ
何せ、彼はその双刀を地面に突き刺して、地中に霊力波を叩き込み、先ほどとは比較にならないほど広範囲に地面を爆発させるつもりなのだ
制御できるだけの全霊力を刀に注ぎ込み、暴走してもおかしくないほどに切っ先に凝縮させ準備完了
後はその刃を突き刺し、解放するのみ
だが、その両腕に力を込めた瞬間、地面が弛んだ
「!?」
全力攻撃の直前だったためか、思い切り、その罠に嵌められ、両足を地面に飲み込まれた
集中力が途切れ、霊力が霧散しかかったがなんとか留めた
だが、元々の3割ほど、減少している
〝
対象の足場の地面を泥状に変化させ、地中に相手を引き込み、圧殺する地術の中でも最もポピュラーな術
だが、祐一は完全にその技に嵌りかけていた
「ちっ、なめ・・・何!?」
もはや半分以下の威力しか出ないであろう霊力爆発で足下の地面を爆破させ、脱出しようとした矢先
祐一から見て左側の地面から大地を突き破り現れた巌
振り上げたその腕を岩の大蛇を模らせながら
「〝
ミドル級のジャブにも匹敵する拳速で振り下ろされた
鋼鉄すら打ち砕く、岩蛇の牙拳
足場がこれでは回避する暇もない
だが、生命の危機によって反射的に薙がれた左刀による斬撃が辛くも牙と打ち合い、受け止めた
そうでなければ、その瞬間に勝負は決まっていたことだろう
牙と刃が拮抗
しかし、これこそが巌の真の狙い
拮抗する牙と刃の傍らで蠢くもう一つ牙
「砕けろ、〝
ゴギバギィ・・グギャッン
双蛇の牙が狂戦士の左腕を砕く
それも〔武來〕ごと
肘が伸びきっていたところを狙われ、完全に骨が折れた
三段階以上、きっちり骨がイっている
〔武來〕自体も完全に噛み砕かれ、一切の能力が使用不可
右腕に填められた物とは共鳴はするが連動はしていないので問題なく動くが・・・・
(やっちまった・・・・こりゃ、完全に壊れたな。斎爺にドヤされる・・・)
新しいのを作り直してもらうしかないくらい派手に壊れた
相沢一族のお抱え霊具製作者である叶英斎に思い切りどやされることは間違いない
まあ、壊れてしまったものは仕方ないとすぐに戦闘モードで集中できる辺り、さすがと言えよう
握力が消えた左手からポロリと左刀が手放される
痛みは無い
そんなもの諾々と湯水のように溢れるアドレナリンですでに消去済みだ
いや、アドレナリンが無くとも今の祐一はただの怒りという感情だけで痛みを消し飛ばしていた
憤怒すら生温い激烈なる感情が狂氣と混ざり合い、更なる混沌とした霊圧となって、周囲にばら撒かれる
(野郎・・・ふざけんな!!)
腕を折られたことに怒っているのではない
〔武來〕を壊されたことに怒っているのではない
それは単に己自身が未熟だったせい
ならば、なぜ、祐一が激怒しているのか?
それは、巌が祐一の腕を砕いた後、追撃もせずに退いた事だ
試合終了とばかりに
ふざけるな
「だぁらぁああっ!!!」
残った右腕を振り下ろす
いくら刀が長大な大太刀といえど、さすがに5mは離れている巌に届くわけも無い
誰の目にも祐一の行動は滑稽に写ったのかもしれない
腕と共に戦意すら砕かれた愚かな敗北者
しかし、次の瞬間、それは完全に裏切られる
バゴォッ
空を斬った刀はそのまま、地面を切りつけ、大地が爆ぜた
霊力によって爆発が起こり、爆風が祐一の体を前へと押す
〝瞬歩〟
タイミングよく地を蹴り、爆発の反動とうまく合わせて、更なる神速を以って、巌へと向かった
大気を裂き、空間をも斬るような薙ぎ
横一線ではなく、斜めから緩やかな弧を超速の剣速を以って描いた
だが、気を抜いていたとはいえ、さすが歴戦の術者
岩を纏った腕が斬撃を弾いた
集束が甘かったせいか、その防御力を突破され、浅く斬られたが何も問題は無い
・・・・はずだった
次の瞬間
巌の体に逆袈裟の裂傷と血飛沫が走った
すぐ後に腹部へ衝撃
「ぐおぉっ!」
岩の如き男がうめき声を上げて、吹き飛ぶ
しかし、倒れるような無様な姿は曝さず、胸を抑えながら怒りも含めた視線を向けた
左脚を突き出し、左刀を口に咥えた祐一に
「かっ」
口を開き、左刀を手離しならぬ口離して、右刀を持っていた右掌を一瞬だけ開き、左刀を掴む
二本纏めて掌に収めるのは少し辛いらしく、指先で支える形となる
「何、勝利の余韻に浸ってやがる!たかだか腕の一本を折ったくらいで俺の戦意を砕けるとでも思ったか?笑わせるな」
狂氣に塗れた白銀の眼が巌をギラリと睨みつける
「腕が無くても、脚が。脚が無くても顎が・・・この五体が砕け、魂が消え去り、存在が消滅するまで俺は戦うことは止めねぇ!!」
鉄や鋼どころか、金剛石すらも凌駕する頑強さ
如何なる聖剣魔剣の類であろうと断てぬであろう絶対なる意思
幼き頃の一方的な想いを起源とし、闘うことを最も好む狂戦士の本能が混ざり合い、一つの結晶となった意志は今、更なる輝きを見せた
──Kureha Side
ブルル
携帯電話のバイブのような振動が全身から湧き出た
その言葉を聴いた瞬間、心の底から胸が苦しくなるほどの感情が渦巻き、それを表現するかのように全身に鳥肌が立つ
彼の闘いへの信念とも言うべき不屈なる意思はどんなに卑屈で臆病な弱い人間の精神を劇的に変化させてしまえるほどに強烈な波動を放っていた
周りを見ると誰もが私のように鳥肌になって、全身を抑えている
そうしなければ今にも暴れだしそうで
「祐一、貴方は・・・」
どこまで・・・どこまで・・・遠いの?
──Aizawa’s Family Side
「だあ~、やっぱあの状態の祐一はすげぇな・・・」
「同じ人間か、疑ってしまうな」
「乙女、それはひどすぎるだろう」
「あれこそ、本当のお兄ちゃんだよ!」
各々の感想を素直に述べる
中には中傷と思えるものまであったがそれは愛嬌というものまであるだろ
「だはははっ、根性が座ってるつうかなんつうか・・・」
「無茶苦茶ねぇ・・・わが子ながら」
「まあ、あんなもんだろ」
祐一の純粋な銀の瞳が更なる輝きを見せる
「決めてやるよ・・・・俺の全身全霊を賭けて!!」
最後の霊力解放
今日最大の霊力が放出される
天地を覆わんばかり・・・には少し大げさだがそう思わせられるほど莫大な霊力が全身から
「・・・・・いいだろう。ならば儂・・俺も乾坤を尽くすまでよ!」
口調が変わり、地の精霊を集約する
大地が鳴動し、今日一番の最大震度で揺さ振る
「
汝らが鱗は何者にも貫けぬ金剛
汝らが咆哮は鉄の矢を撃ち落す衝烈
その鱗と咆哮を以って敵の矛を阻む絶対の陣となれ
〝堅竜吼陣〟」
祐一の最強〝絶王呀斬〟を退けた防御術
しかも今度は五匹の土竜が巌を覆い隠すように陣と成す
倍近くも増え、先ほどよりも防御力も跳ね上がった巌の一手
それはまるで小さな要塞
防御力なら牙城にも劣らない
祐一はどう対応するのか?
「っ!」
膝を思い切り曲げてから、跳躍
天に逆らうように垂直一直線に飛び上がる
上空10mほどの所で霊子の足場を作り、停止
上から見下ろす祐一の視線と下から見上げる巌がぶつかる
「行くぞ、〔絶天王〕!!!」
全ての霊力を自らの魂の形である大太刀二刀に注ぎ込む
身体能力にまわす分も万一のための詠唱破棄〝護道〟の分も全てだ
掌に収まりきらずに不恰好に重ねられた刃にその全てが集約される
集いし霊力は〔絶天王〕の能力によって、全て増幅倍加される
ただでさえ、莫大な霊力が絶大な霊力霊圧に化け、霊質さえも変化させ、純化し圧縮
暗き銀色の輝きが大太刀から発せられ、霊圧として、この場にいる全ての生物に強烈な圧迫感を与えた
『無論だ、王よ!俺たちの最強の一撃!見せてやろうぜ!!』
天に向かって振り上げられた大太刀二刀の向こうに絶天王が薄く現れ
「『お、おおオオオオっっっ!!!!!!」』
共に咆哮しながら、その刃を振り下ろした
「〝
シュゥガアアアァァアァッァァンッ
それは牙
愚直なまでに一方的で相手には認識もされていないような憧れが真似て、生み出された
だが、執念とも捉えられる深く固き想いに染め上げられ、昇華したその一撃は何よりも強大な力をこの世に顕現させた
その牙の前ではどんな盾も壁も城さえも意味を成さず、ただ食い破られ、砕かれるのみ
威力を減衰させんと五匹の竜が砂泥のブレスを吐くが超霊の光牙は一瞬の拮抗も許さず、ブレスを呑み込む
そして・・・大爆発
ズゴォォッン
爆音が都市全体に響き渡り、大地が爆ぜ、爆風で建造物が吹き荒らされ、強化された結界は余波で紙切れの如く、ぶち破られる
ダイナマイト50発分にも匹敵しそうな爆発はその音だけでも周囲の表社会に多大な影響を与えることは間違いない
明日の朝刊は『大都市で大爆発!!爆弾テロか、過激派!?』で決まりだろう
テレビでも特集が組まれそうだ
冗談ではなく本気で・・・
それほどに強大な威力だったのだ
そんな牙に呑み込まれた巌はただでは済むまい
鉄壁の守護だったはずの陣は完全に突き破られ、巨大な長い縦型のクレーターが出来上がっていた
その中心に何かがいた・・・・巌だ
半ば地面に埋め込まれたかのような姿を晒していた
晒しているとはいっても決して恥じることではない
並みの結界師とて、どれだけ防御を尽くそうともこの一撃を防ぎきることなど不可能
現に最強の地術師であり、強固なる防御陣をに護られた石蕗巌ですら、牙の前に屈した
これを防げなど酷な事を誰が言えようか?
いや、この会場の中には数人はいるかもしれないが・・・
だが、その中に巌は入っていなかった
そのことだけは確実に現実として証明されている、今この場で
そして、誰もがそれを成した牙の持ち主に注目する
全身全霊限界突破の一撃を放ち、上空から降り立ち、着地する祐一
だが・・・
「ぐぼぉぇえっ・・・」
着地した瞬間にいきなりの吐血
その数瞬後に全身から鮮血が吹き出た
外傷ではない
莫大な霊力の放出によって大半の毛細血管がぶち切れ、内出血だけに留まらず、外皮を突き破り漏れたのだ
一瞬にして、全身を血で染め上げる
〔斬覇装〕はすでにボロボロになっており、覆い隠すことができていない
出血多量が原因の怪死とも見えなくない
周りから息を呑む声が聞こえる
しかし、その予想に反して、祐一はまだ生きていた・・・生きて立っていた
〔絶天王〕を杖代わりに、地面に突き刺しながら前へと進む
その先には巌
自分で作ったクレーターを無様に転げ落ちながら彼の元へと辿り着く
「・・・・ぁ・・ぜぁ・・・」
喉がイカれてしまったのか、声が声にならない
そのことを承知でゆっくりと立ち上がりながら、ジリジリと巌を見上げるような形まで体を持って行く・・・・
そして、〔絶天王〕を振り上げた
誰もがトドメを刺す!!
そう感じ取り、再び息を呑む
数秒かそれにも満たない刹那の沈黙
音が切り取られた世界の中で時がゆっくりと進行
誰の眼にもはっきりとわかるほど刃が残像を残しながら振り下ろされる
ザグッ
巌の顔のすぐ横へ
しばしの、沈黙
音の無い世界が形成されたところで
「俺の・・・・勝ちだ」
死闘の決着が今、勝者によって宣言された!
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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