「これより人門代表者決定戦を開始します!!」

雅人の声が高々と響き、観客席が湧いた

各門の代表者がようやく全て決定する中での最後の試合

それもかなりの好カード

片や、最強の地術師一族の頂点に立つ男

片や、最強の退魔一族と名高い一族を束ねる者の息子

特に後者は最年少でありながら、低級妖魔を倒すという条件を満たして、参加してきた麒麟児

それに他の参加者にとっては優勝を争う競争相手でもあるのだ

見逃せるわけもない

「それでは、石蕗巌、相沢祐一!両者、前へ!」

普段より少し着膨れのしない着物姿に着替えた巌

〔斬覇装〕〔武來〕、そして斬魔刀小太刀二刀と、フル装備の祐一

観客席から舞台上に入る

ジャリジャリと地面を削る音をさせながら二人の距離はドンドンと零に近づく

同時に覇気と覇気がぶつかり合い、距離が近づくにつれて、ピリピリとしたものからビリビリと変化し続ける

停止線の前にもなるともはや空間が軋む様な感覚に雅人は襲われる

(・・・これが本当に人間か?)

そう思わせるほど、二人の放つプレッシャーは凄まじい

それでいて、なお、互いに感じる覇気をものともせず

「二度と刃向かえないほどの敗北を与えてやろう。感謝するがいい、小童」

「ああ、感謝してやるよ。礼は前金でたっぷり払ってやるよ、岩男(ロックマン)

憎まれ口を叩き合う余裕もある





(だれ)よりも()(だか)(つよ)く、そして・・・


第1章  第20.4話         
全門第3回戦~逸れ始めた道~






「始め!!」

とうとう始まった大激闘の始まり!!

・・・・かと思いきや

すぐに激闘が始まる様子はなく、二人とも最初の対峙の体勢のまま、不動

睨み合って、そのままフリーズしている(上の文と意味重複)

「今ならばまだ間に合うぞ?この場で土下座して謝罪すれば、今までの非礼、許してやろう」

「不要結構ノーサンキューだ。墓場まで持って行け」

舌戦ならすでに始まっているらしい

互いに隙こそ見せないがきっかけさえあれば、すぐにでもおっぱじめる筈

観客からすれば、そんなギリギリ感がダイナマイト爆発うん秒前で堪らないそうだ



だが、そんな様子の二人を訝しげな視線を向ける千影

「・・・・・・」

何を言うわけでもなく、ただじっと二人・・・と、いうより祐一を見ていた

それは何かを考えているようにも見え・・・実際、考えていたのだが答えが出たのか、それを確かめるべく、口を開く

近くにいた親戚、乙女が対象となった

「乙女、お兄ちゃんに何かあった?」

「いや・・・どうしてだ?」

「変、お兄ちゃん、変だもん」

唇を尖らせ、機嫌悪そうに言う

「どこか、変か?別にいつも通りの祐一だろう」

二人の話を聞いていた智代が話に参加

乙女と同意見だ、と答える

「あの毒舌っぷりはまさしく祐一のものだ」

「そうだ。年上を年上と思わない不敬極まりない物言いは・・・」

「そこじゃないよ!」

千影は「なんでわからないの!?」と言いたげな瞳で二人に訴える

あまりの形相(それでも可愛いのだが・・)に圧されてしまう乙女と智代

「試合が始まる前ならおかしくないけど、試合が始まってからあの言葉はおかしいもん。いつものお兄ちゃんなら平気で土下座した後、フランケンシュタイナー決めてるはずだよ!」

それはそれでどうかと思うが・・・・

だが、千影の言葉を聞いた二人はハッとなり、祐一の方向へ振り返る

「そう言えば・・・・祐一にしては潔すぎる」

いやいや、おいおい・・・・

「気に入っていようがいまいが卑怯な小技を使わないなんてあいつらしくない」

あのぉ、皆さん・・・・

「「どうしたんだ、祐一の奴」」

もう、いいです・・・視点切り替えON




(さて、まずは・・・・)

戦霊(せんれい)覇者(はしゃ)
鍛腕(たんわん)剛脚(ごうきゃく)錬鎧(れんがい)
()()(まと)わり()くがいい
()(どう)三十一(さんじゅういち) 〝武魂招(ぶこんしょう)〟」

乙女とは色違いだが同じ術式の黒銀のオーラを纏う祐一

彼女より多少術式の構成が甘いが構成速度は彼女より速い

逆手で腰の二刀の柄をがっしりと掴んだ

前方突進に特化した前傾姿勢の体勢になり、ギリギリと弓の弦が引き絞られる音が人体から発せられる

体中の組織は限界を示す痛みをまだ発してはいない

だが、戦闘準備の最終段階は完了

(やはり全力はまずいか・・・・・この勝負は必ず長引く。8割程度で様子見程度に潰す)

斬魔流(ざんまりゅう)歩法(ほほう)
瞬歩(しゅんほ)

強化されている分、いつもより一段階速い彼のスピード

さすがに志貴の〝極走・刹那〟には及ばないが今迄で一番の速度

巌の動体視力からしても追いきれるような生半可な速度ではない

「ぬんっ!」

巨体に似合わぬ滑らかな動きから突き出される前蹴り

と、いうより、格闘戦に出たというのが祐一には意外だった

祐一はさらに体を沈めて、脹脛の下に潜り込む

同時に伸びきった足の踝辺りに二刀を当て

小太刀式(こだちしき)斬術(ざんじゅつ)
裂巻(さかま)双蛇(へび)

蛇が木に巻きつくように祐一自身が巌の脚に巻きつく

押し当てた二刀の刃を以って滑るので巌の脚は二条の傷が螺旋状に描かれる

まともにくらっていればだが

「硬い」

祐一は手応えこそあったが渋い顔をしている

それもそのはず

精鎧装(せいがいしょう)武岩脚(ぶがんきゃく)

巌の脚は岩と化し、祐一の攻撃に耐えたからだ

二条の螺旋傷は確かに付いてはいるが攻撃は届いていない

武岩(ぶがん)炸撃(さくげき)

岩の脚甲が爆発し、炸裂弾のように周囲に飛び散る

ほぼ零距離地点にいた祐一に避ける術はない

()(どう)十一(じゅういち)
「〝光守(ひもり)〟」

反射的に小太刀を交差して炸裂岩に向かって翳す

光の盾が交差する小太刀の前に出現する

だが、霊力と精霊の力では、精霊の力の方に分がある

詠唱破棄しなければ、完全に防げただろうが、術名のみの言霊ではこれが精一杯

急所に当たる軌道部分だけは出来るだけ強化しておいた

その分、他の部分は脆くなり、炸裂する岩弾が貫く

「くっ、ヅゥッ!!」

右頬を掠め、左太股に突き刺さり、脇腹を貫通

大きな岩礫では無かったので傷は浅い

後退しながら残りを避けながら、詠唱破棄した〝癒道〟で回復を図る

貫通した部分を筋肉で強引に血止め、最優先で治療する

(さすがに・・・そう簡単に攻めさせちゃくれないか・・・・)

強引に真正面から行ってみたが結局ダメージは与えられず

軽く返り討ちにあった

本気じゃなかったことも関係しているだろうが・・・

それでも祐一の猛攻を軽くいなすとは・・・さすがといったところか

「なら、今度は本気で行くぞ・・・」

「来てみるがいい」

闘氣を全身に漲らせ、祐一は再び、前傾姿勢

隠すことのない突進の合図

そして、間髪入れずに

斬魔流(ざんまりゅう)歩法(ほほう)
瞬歩(しゅんほ)

「甘いわ」

巌がそう呟いたのは祐一が〝瞬歩〟の一歩を踏み出したときだった

実力の片鱗が知れた後の始手に最高の攻撃を持ってくるのは明らかに相手の実力が自身より高い場合、一番使われる良作の一手だ

最も良いのは数で攻めることだが試合なのでそれはない

そして、防御を最も得意とする精霊魔術属性《地》

さらに当主たる巌は今までにそういう輩そういう戦法に何度も応対したことのある正にベテラン

最も効率の良い対応を知っているし、攻撃を耐え切るほどの防御力

四肢を一指たりとも動かさずに地の精霊に呼びかけ、祐一の進行方向と自身の間に岩壁を出現させた

「自爆するがいい」

あのスピードで止まれるわけがない

壁に激突して、少なくないダメージを負うはずだ

仮に止まれたとしてもかなりの負担が足に響く

どの道、ただではすまない

祐一が巌の前に立ちはだかった者達のレベルならば

「お・・・おおおぉぉぉぉおおおおっっ!!!」

祐一は勢いを止めることなく、咆哮を上げながら岩壁に突っ込んだ

小太刀二刀ごと抜き放ち、体を弾丸の如く、螺旋回転させる

(和麻との修行の成果、見せてやる!!)

そして、彼が祐一でもそこで使用したのだろう

祐一の考えと同調したかのように

「行けぇっ、祐一!!」

和麻の声が大きく投げ掛けられた

その声に後押しされるように無駄のない絶妙な+αの力が入る

武十星術(ぶとうせいじゅつ)
刀式(とうしき)緑廉(りょくれん)
地割(じわり)

小太刀の刀身に深い深緑のオーラが纏わりつく

これこそ、和麻に教わった対地術師用五行戦術

《木氣》を使用し、応用する斬術

武十星流(ぶとうせいりゅう)小太刀二刀式斬術(こだちにとうしきざんじゅつ)
緑廉之秘刀(りょくれんのひとう)
破岩(はがん)乱裂刃(みだれば)

大地を砕く《木氣》が宿りし、刃

そこに超高速のスピードが加わった

如何なる大岩も斬り砕く!!

ズバババババババッ

牙に触れた岩壁はまるで熱したバターナイフに溶け切られるバターのようにほとんど抵抗無く、小太刀の刃を受け入れ、斬り崩された

拳大程度にまで斬りバラされた岩が三桁にまで空中に放り去られる

刃に触れた部分のみを斬りバラし、スピードが多少落ちた程度でそのまま、巌へと突進する勢いは止まらないし、止めるつもりもない

《木氣》を宿したまま

「くらいやがれぇぇっ!!!」

御神真刀流小太刀二刀術(みかみしんとうりゅうこだちにとうじゅつ)
緑廉式(りょくれんしき)奥義之弐(おうぎのに)
虎乱(こらん)

至近距離で放つ斬撃乱舞

ザンザザンザザンッ

巌も地精霊の加護を得た防御力があるが《木氣》を以って、その防御力を突破

「ぐおぉっ・・・ぬぅぅ」

派手に切り刻み、鮮血が飛び散る

着物も派手に飛び散り、全身に裂傷が刻まれた

だが、所詮、人が生み出した氣と精霊の加護では後者の方が圧倒的に強い

だいぶ、威力を削がれた

ここまではまだ祐一も承知済み

だからこそ・・・・

破壊(はかい)(たみ)
()(こく)(やみ)より()まれし(はい)(とく)化身(けしん)

次の手もすでに詠唱中

普通ならこんな激しい行動中の詠唱なんて、できるはずも無いが複数の事を考えら得る《分割思考》だから可能なのだ

二刀を逆手持ちのまま、巌の体に押し付け、跳躍

跳んだ勢いで斬り走る

強化された祐一の身体能力での跳躍は斬撃の抵抗があろうと巨漢の巌を超えられる跳躍力

天道(てんどう)(けが)し、(あく)()ちろ」

飛び越える前に両足で巌の首を挟み、全身の力を使って、逆海老反り投げにかかる

と入ったところで如何に祐一の強化パワーといえど、反抗する巌を投げ飛ばすには及ばない

だから、小太刀を二刀とも仕舞い、彼のもう一つの相棒を使う

〔武來〕に霊力を送り、能力発動

両肘部分から霊力の奔流がブースト全開

エネルギーが放出され、両腕が勝手に飛び出す

それに合わせて祐一も両拳を突き出した

〔武來〕のブースターが加わった高威力双拳撃

我流白打(がりゅうはくだ)
撃逓(げきてい)武双破陣(ぶそうはじん)

かなりの手応えと共に両拳が巌の背中に突き刺さる

ゴォッン

人体ではなるはずもない奇音

「ぐぬぅ・・・かは」

呻き声が漏れた

如何な巌とはいえ、この一撃は効いたらしい

それは防御力を突破したということ

瞬間、体中の筋肉が弛緩して、巌が揺れた

斬魔流白打(ざんまりゅうはくだ)
首狩(くびがり)()とし〟

身体の力が抜けた隙に前身に力を込めて、再び首を狩り投げる

逆フランケンシュタイナー

祐一を中心に半回転する巌の頭が舞台の地面に突き刺さった

大地が砕け、クレーターができる

同時に拳を開き、掌を撃逓・武双破陣の直撃箇所に押し当て

(れん)(ごく)(しん)(えん)(えん)()(さん)(ごく)(くだ)りて、その()(きざ)
()(どう)四十九(しじゅうく) 〝黒威(こくい)〟」

零距離射撃

黒い粒子砲が祐一の掌から放出される

シュダァァーィィィィッッ

地面から足が離れ、空へと浮かび上がる

それとは反対の、漆黒に押し潰される巌

地面にその巨躯をグリグリと埋もれていく

漆黒のビームがまるで如意棒の様

自分の攻撃に浮かび上がらされた祐一はクルッとバック宙を決め、華麗に着地

そのとき、すでに巌の体は地面より上には爪先たりとも、見えなかった



続く


技名について今更ながらに気付きましたがここでちょっと修正+訂正
                           〝〟
                           〝〟
上が普通のフォントサイズで下が太字だとわかりますよね?
ここで訂正したいのが上のフォントサイズは無属性、つまり何の属性も付加していないまたは霊力や魔力を纏わせただけの攻撃で
太字の方は闇属性、闇黒系鬼道ということにしました
多分、だれもがそのくらいのことには気付いているとは思いますが私の気分的な問題ですので一応、あとがきとして伝えておいた次第です
実際に修正するのは少し後になるとは思います
では、これからもご愛読の方、よろしくお願いします


Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


高さ自由様へのメールはこちらへ。

戻る  掲示板