ジリリリリリィィンジリリリィ
今時田舎でも珍しい黒電話のような目覚まし音
今は誰もが試合に行っているのでほとんど周りに人がいなくて、とても静かだ
その分、音が響いてかなりの音量に錯覚して聞こえる
ああ、聞こえる
煩わしいほどにうるさく・・・
眠気たっぷりな身としてはこの騒音の原因を今すぐに速攻で斬り裂いてやりたいところではある
・・・が、さすがにこの目覚まし時計は俺が所有する物ではない上にこの程度の我侭を感情に任せて、実行するのは嫌だ
「・・・・起きるか」
睡眠時間としては十分すぎるほど取ったが、おかげで試合・・主に景さんとの戦いで受けたダメージを完全に綺麗さっぱり消すに至った
ウォームアップして、意識と身体が完全覚醒すれば、これまでにないくらい絶好調な仕上がりになるだろう
後は今の意識を強引に捻じ伏せるだけ
と、そこへ・・・
「失礼します。朝食をお持ちしました」
神凪の侍女さんに頼んでおいた朝食が到着
ちょうどいいタイミングだ
「ありがとう、そこに置いといて」
「ッ!・・・・はい」
おっと、少々生意気すぎた
怒らせたな・・・・ま、いいか
早いトコ、飯食ってウォーミングアップせねば
「力を充分に蓄えないとな・・・くっくっくっ、今から武者震いが止まらん」
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第20.3話 全門第3回戦~すれ違い~
「地門最終回戦が終わったところで舞台の修復に入らせていただきます」
天門の試合で式森牙威が、地門の試合で神凪厳馬が加減抜きの力を振るって、舞台の原型が無くなってしまう一歩手前レベルにしてしまったのだ
地面に多くのクレーターが生まれ、爆心地を超えた隕石落下地点のようである
天災レベルの力を持つ二人であればこそ、余波だけでこのレベル
直接ぶつかり合えば、どのようなことになるか・・・恐ろしい
と、まぁ、彼らの話は置いといて・・・
海門最終戦参加者の青山鶴子は暇を持て余していた
「妙な暇ができてもうたわ・・・どないしまひょ、景はん?」
「そうですね・・・祐一がウォーミングアップしてる時間でしょうから行ってみませんか?」
景太郎は昨日、祐一達と行動していたので予定を知っている
「あの麒麟児か。私も話してみたいな」
二人の話に入ってきたのは景太郎の叔母にあたる浦島はるか
彼女は地門一回戦で運悪く影行と当たり、敗北
まだ14の若輩者なのだ
さすがに影行が相手ではレベルが違い、軽くあしらわれた
「じゃあ、はるかさんも一緒に行こう」
「・・・・・ふぅ」
朝食を一人寂しく終えた私は朝からずっと、中庭の庭石に三角座りで座り込んでいる
ため息はすでに38回目に突入した
それもそのはず
今日は私自分の運命が動くかもしれない日
いや、正直なところ、そんな運命など、どうでもいい
私が思うのは初めて護ってくれた、たった一人の少年のこと
化け物、忌子と呼ばれた私を遥かに凌駕する幼き『男』
雲を蹴散らし、天を遡る牙を有しようとも・・・
だが、それでも父には及ぶべくもない
「祐一・・・・」
彼はこんな所で負けてはいけない
彼はもっと気高く、激しく、雄々しく、強くあるべきだ
今も、そして、これからも・・・
「お父様に今日の試合を止めるようにお願いする・・・それが私に出来ること」
「本当にそうかな?」
決意した答えに返事が返ってきた
しかも、こんな近くにまで・・・
今の私はかなり無防備だったとはいえ、ここまでの接近を許すなんて
振り向くと、そこにいた返事の正体は・・
「景太郎さん・・・」
浦島景太郎であった
後ろに二人の女性を連れて
「どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。祐一君はそんなことされても喜ばないと思う」
そんなこと、わかりきっている
喜ばないどころか、彼は怒り狂うだろう
でも・・・
「それでも、私は祐一が・・」
「俺が祐一の立場だったら、紅羽ちゃんの行為は甘んじて受け入れられるものじゃない。むしろ、試合で負うだろう怪我より遥かに重い傷を受けるんだ」
遥かに重い傷?
馬鹿な・・・戦闘を回避するはずなのに傷など負うわけがない
「その顔、信じてないね?」
「!」
図星
思わず、動揺してしまったわ
「まあ、あんさんのような
話し出したのは後ろにいた京都美人
その口調には何か、境界線で遮られたようなニュアンスを感じる
それも彼女と私だけではない
祐一と私の境界線にも感じられた
「誇りなんて二文字で言い切れるモノじゃない。俺達から言えるのはこれと後一つ・・・・・・・・」
景太郎さんは優しげな表情で告げた
「祐一君を信じるんだ」
今の私には彼の言葉は痛いほど、心に刃となって突き刺さった
「ん?何やってんだ、お前ら?」
空気を読まない男、登場
もうウォーミングアップが済んでいるのだろう
すでに漆黒の戦闘衣〔斬覇装〕を纏っている
腰には斬魔刀小太刀を二刀、上柄交差差し
景太郎のときには着けていなかった鈍色の腕甲型霊具〔
特殊能力を兼ね備えているが内容はまた後ほど
「やる気満々だね」
「まあな・・・家に置いてきた装備も来たし」
〔武來〕を持ち上げて、見せる
必要ないと思い、部屋に置いといたのだがどうやら、千影が発見したらしく、持ってきたようだ
使うつもりがなかったとはいえ、千影が両手で「頑張ってね、お兄ちゃん♡」の笑顔付きで言われたら、使わない選択肢は存在しない・・・もちろん、祐一の場合
どの道、手元にあれば、迷いなく使うつもりはあったのだ、今の祐一ならば
「全力でブッ倒すからな。一分一秒だって、見逃すなよ」
自信満々に言ってのける祐一
その表情に曇りなど一点としてない
己の力を・・というより、己を信じて止まない、止むことなど考えもしない
(眩しいわね・・・でも、だから!)
「ゆう「紅羽」なっ、何?!」
「何、慌ててるんだ?」
出鼻を挫くとは正にこのこと
あまりのタイミングの(紅羽にとって)悪い呼びかけに思い切り動揺する紅羽
声にもそれが感染したのか、震えている
内容にも夜が細かいところはあまり気にしない祐一は気にせずに続けた
「それよりもあいつへの要求は考えてあるか?」
「要求・・・!!」
最初は祐一の言葉がわからなかった紅羽だがその言葉の意味を思い出した途端、ハッと祐一を凝視する
その言葉の意味は祐一と巌との賭けの内容
祐一が勝てば、紅羽の願いを一つ適えるというもの
紅羽自身、それどころではなかったのですっかり忘れていた
「その様子じゃ、まだか・・・まったく、困るのはお前だぞ?」
ケラケラと笑いながら、からかう
と、いうより何より、紅羽を戸惑わせたのはその絶対なる自信
強大な敵を相手にするとしても揺るがない自信を支える強さ
「まあ、いいや。それより、そっちの二人は?」
祐一が鶴子とはるかに視線を向ける
「ああ、俺の叔母のはるかさんと青山家の鶴子さん」
「初めまして、浦島はるかだ」
「青山鶴子言います。どうぞ、よろしゅう」
「相沢祐一、よろしくぅ!」
馬鹿に明るい挨拶
それが強がりなのか、喜びなのかは・・・祐一しかわかるまい
「祐一君、ウォーミングアップは済んだのかい?」
「大体は・・・もうちょっと欲しいけど、消耗しすぎても困るしな」
ここまで、と腰の小太刀をカチンと両刀鳴らした
「祐一はん」
「なんですか?」
「祐一はんが勝ち上がったら次の相手は私どす。気張ってくれやな困りますえ?まあ、石蕗巌はんでも、楽しめると思いますけ・・!」
瞬間、爆発でも起こったかのような衝撃と圧力が鶴子、そしてその場にいた全員を吹き飛ばさんが如く、打つ
「なぁっ・・・」
「く」
「こ、これは・・・」
「祐一」
発生原因は勿論、祐一
その小さな体からは信じられないほど強大な霊圧を発している
それも闘志と憤怒に満ちた霊圧を
「なめんなよ?」
泣く子も黙るのではなく、気絶という形で強制的に黙らされるような威圧に満ちた声
「俺は勝つといったら勝つ。負けられない相手ならば、尚更の事・・・俺の全力を以って、あいつを叩き潰す」
「ふぅぅぅぅぅっ・・・ぅううぅっ♡」
鶴子は先ほどの祐一を思い出して、歓喜に震えていた
語尾に♡マークを付けるほどだから、相当なものだろう
「ゾクゾクしたわぁ・・・あの子、最高やなぁ」
回想だけで、これだけ、体が歓喜を示すのだ
実際やられたときはもっと凄かった
「私も負けられんなぁ・・・本気であの子と戦ってみたい」
鶴子は気付いていないが全身から闘氣が溢れている
そして、まだ闘ってもいないのに瞳が凶眼へと変貌していた
「必ず・・・勝ちなはれ、祐一はん・・・・でないと、おもろないからなぁ」
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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