「お、おはようございます」
千影が試合前に集まっていた和麻達の所へ挨拶しに来た
結局、千影は初めての長旅に疲れたのだろう
祐一とある程度、話したらすぐに眠ってしまった
だから、和麻達と顔を合わすはこれが初めてになる
「相沢千影・・お兄ちゃんの妹です」
和麻他、相沢一族+水瀬一族以外の者達は唖然と口を開く
誰が思うだろう
この見目可愛らしい可憐な少女があの自己最上存在の少年の妹だなんて
誰が信じられる!と言いた・・・否、むしろ叫びたい
叫んだところでどうしようもない現実ではあるが
「信じられん」
「同感だ」
和麻と式の見解
現実を見ても信じないのは愚かだが二人ともわかって言っている節がある以上、結構リアリストだ
「ひ、ひどいな」
「あははは・・・」
志貴と和樹は乾いた笑いを上げて、現状維持
本心こそ、彼彼女と同じだ
「そういや・・えと、千影ちゃん?祐一君はどうしたんだい?」
景太郎がそんな四人を尻目にこの場所にいるはずの少年の事を聞きだす
千影は昨日、祐一と一緒に寝ていたからである
だって、そうしないとごねるし・・・
「お兄ちゃんなら、直前まで寝るから、起こすなって・・・二度寝しました」
一度起きたのは、千影の世話をするため
彼女を起こし、顔を洗わせ、髪を梳かして・・・さながら使用人のような世話をやいてから、眠りについた
「武、乙女、智代・・・お兄ちゃんの様子が変だったんだけど、何か知らない?」
再び唖然とする一同
礼儀正しかった口調が自分より一つ二つも上の三人にタメ口を聞いているのだ
しかも、呼ばれた三人もそれを当然のように受け止めている
「?変なところなんてなかったぞ、なぁ?」
武の問いかけに他の二人も頷いて答える
「いつも通り、戦いに向けて最善を尽くしている辺りが変わらないだろ」
「と、いうか、いつもより張り切っている感じだな」
千影は俯き、何かを思い出し、考える
「そうかなぁ?」
最も近くにいる少女が覚える違和感とは・・・
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第20話 全門第3回戦開始
天低門
白銀武VS斉藤名雲
狭地門
乙姫むつみVS七夜志貴
浅海門
神凪和麻VS鉄乙女
これが行われる今日行われる第3回戦の試合表
小人門が無いのは第2回戦で智代と香里が相打ちで引き分けになったため、神凪綾乃の勝利が自動的に決定した
神凪では早くも祝勝会の準備が始められていたほどだ
(こちらとしては書く量が少なくて大助かりだが)
中盤から終盤に差し掛かったということで術者が増え、結界が強化されている
神炎≠ネどの馬鹿げた超威力を持つ攻撃などはさすがに防げないが祐一の絶王呀斬≠ュらいなら一撃二撃、直撃しても保てる防御力を兼ね備えている
舞台も昨日の傷跡はすっかり修復されていて、一日目とほぼ同じ状態だ
完全ではないのは多少なりとも消滅しているからである
「よっしゃ、行って来い、武」
初日と同じようにバシンと背中に真っ赤な紅葉ができそうな張り手を叩き込み、息子を押し出す影行
今回は押す力のほうが強かったのか、予期していた武が前に飛んでいたからか、10mほど吹き飛びように舞台に放り込まれた
空中感覚が優れている武はトンボを切って着地
「って〜な・・・試合前だぞ!!しかも二回目!」
「そんぐらい元気なら大したことあるかよ」
最初のときもそうだが無茶苦茶な親父である
ぶつぶつと文句を垂れながら武は舞台中央へと向かう
すでに相手の斉藤名雲は雅人の前に立って、武を待っていた
(相沢祐一の仲間・・・)
斉藤の視線に殺意が込められている
忘れているかもしれないが斉藤は名雪に惚れており、婚約を迫った
今考えればかなりマセているかもしれないが彼らの常識では珍しいことでもない
一族の反映は彼らがこなすべき責務の一つでもあるのだから
まあ、それはともかくとして・・・
婚約は迫ったがあっさりと断られ、さらに水瀬宗主自ら祐一に名雪との婚約を申し出たのだ
きっちり断ったところは聞いていなかったようだが
(絶対、ただじゃすまさへん!!)
逆恨みは祐一の仲間にまで火の粉が降りかかる
もっとも・・・・
「白銀武VS斉藤名雲!始め」
降りかかったところでどうにかなる相手かどうかはこれからわかることだが
「
〔御雷〕」
油断は無く、初っ端から《始解》
紫電纏う異型銃剣
その間、斉藤はバックステップしながら風の精霊を纏い始めていた
彼の戦法は変わらず、姿を消しての遠距離攻撃でちくちく削り
別に卑怯だとは誰も直接的には言わないが陰口では密かに囁かれている
それには一つの理由があるのだ
ぶっちゃけた話、面白みがない
姿も攻撃も見えない戦い方
しかも三戦全てそれだ
誰であろうと飽きてしまう
単純且つシンプルで効果的なことは確かなのだが・・・ねえ?
・・・たとえそうであっても斉藤は戦法を変える気はなさそうだが
斉藤の足が透け始めている
正確には光学迷彩をかけているだけなのだが
「(消えられたらアウトだ)させるか!」
完全に消えられる前に〔御雷〕の銃口を斉藤に向けて、トリガーを引く
銃声と共に雷弾が連射
今まさに消えようとしていた斉藤は慌てて、回避に専念する
和麻に多少劣る旋風を纏い、高速移動
だが三方向に撃ち放たれた弾丸は斉藤を直撃コースで捉えていた
斉藤は必死に体を捻り、弾丸を避けようとする
雷弾が斉藤に着弾・・・・せずにギリギリ脇を通り過ぎていった
智代VS香里戦で智代が使った旋流≠ニ同じで受け流したのだ
当然、斉藤もその試合を見ていたのでこの防御法を使ったわけで
憎き男の一族の技だろうと関係ない
(情報こそが力なんや!)
むしろ、敵の技で敵の攻撃を防ぐ
優越感に浸れるというものだ
だが、そんな斉藤の内心を嘲笑うかのように攻撃をかわされた武は笑みを浮かべている
斉藤は負け惜しみか?と考えたが違う
優越感に浸りすぎて、気付くのに遅れた
武が笑ったその意味は・・・・
「迷彩が・・・・」
もう少しで完全に消えられた姿隠しが解けている
無様にも無防備な姿をさらしていた
精霊を使役するということは集中力がいる
光学迷彩などは小技などと言われているが普通に風刃を作るよりも集中力を要する
当たれば一発KO威力の乱発射撃を避けながら、展開できるほどの集中力は現段階の斉藤にはない
「(一気に攻め込む!)おらぁぁっ!!」
撃ち捲くる武
『下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる』の精神だ
乱撃とはこのことを言うのだろう
ちなみに連撃は繋げ技、所謂コンボのことを言うので今、行われている連続射撃のことではない・・・・と思う
正直なところ、探索系の鬼道≠ヘ苦手な武は姿が見えなくては勝負が決まる!・・・と、断定するわけではないが不利になることは確か
相手の集中を妨害するために直撃を狙う以外にも地面に撃って、爆発で弾け飛んだ地面が斉藤に降りかかる
一張羅が土色に汚れた
斉藤自体を狙って、外れた雷弾は結界に当たって欠き消される
「調子のんなぁ!
斉藤は風の刃を四刃作り出し、射出
その刃は和麻のように三日月状の月刃ではなく、円形のチャクラム
サイドから挟み込むように武へ飛ぶ
武は挟み込まれるギリギリ三歩手前でバックステップ
その間に再び光学迷彩を施そうとした斉藤に雷弾をぶっ放す
避けられたチャクラム型風刃はその形状に相応しく旋回し、背後から武に奇襲をかける
どうやら、自動追尾型のようだ
そうでなければ斉藤は光学迷彩に入ることすら出来なかったであろうが
武は祐一以上に空間把握にも優れているため、それに気付いていた
(このままじゃ、イタチごっこだな・・・・・よし)
武は妙案を思いついたらしく、ギリギリまで風刃チャクラムを引きつけ・・・
瞬歩
そのまま、後ろに下がって回避
すぐ目の前には自身の体を捉え損ねた刃
そして、武は銃剣を突き出す
「拡散しろ!!」
言霊と共にトリガーを引く
回数は二回
〔御雷〕の銃口から撃ち放たれた弾丸は通常の単発式ではなく拡散式
つまり、ショットガンのような範囲射撃
ばら撒かれるように放たれた本来の雷弾を十分割した本物の9mmパラベラム程度の弾丸
合計に30程度の散弾が射出された
弾丸はチャクラム風刃四つに数はバラバラだが大体一つに対して三つ着弾
風刃は撃ち消され、風刃に当たらなかった弾丸は斉藤に向かう
今の攻撃は攻防を兼ね備えた戦法だったのだ
「あじぢゃっ!」
光学迷彩をかけようと集中していた斉藤は意表を突かれ、散弾をその身に浴びてしまう
散弾は、命中率自体は上がっても一発一発の威力は低くなる
意識を完全に刈り取るには至らなかった
それでも麻痺を起こさせ、集中力を乱すことには成功
通常の雷弾を撃ち、今度こそKO・・・・
(あ・・・あかん、体が痺れて・・・動かへん)
迫り来る雷弾が走馬灯のようにゆっくりと眼前に迫りながらも言うことを利かない身体に苛立つ
別に白銀武に負けたからといって相沢祐一に負けたというわけではない
だが、相沢祐一より弱い白銀武に勝てない自身が相沢祐一に勝てるのか?
斉藤が考えることはその一点につきた
相沢祐一を目の前にすれば、白銀武よりも遥かに高い執着を見せ、今よりも遥かに強い自分になれるだろう
だけど・・・・
(本当に勝てるんかな?)
疑問が解決せぬまま、闇に沈んでいった
天低門
白銀武VS斉藤名雲
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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