「
遠見・磁耳・盗精の横槍を挫け
許可得ずして、歩を進めん愚者には裂呪
得し者は空の鈴を鳴らせ
護道の四十一 密戒域
以前、祐一が風牙衆の密会の時に使用した結界よりもさらに強力かつ隠密性の能力も付け加えた結界
密談会議にはコレ以上無い位うってつけのものだ
結界を敷いた影行は胸の前で人差し指と中指を付ける剣印を取らせ、結界の維持に努める
もっとも、彼ほどになれば、他の事をしながらでも維持など、お手の物ではあるが今回は内容が内容なだけに気を抜かない
「さて、始めようか?」
自分達の一族に割り当てられた神凪屋敷の一室にて、相沢祐羅は呟いた
周りには白銀影行はもちろん、坂上闘夜が座っている
そして、今回の密談の重要なポジションを果たす浅葱空もそこにいる
風の精霊を通じて、精霊の力を高める水晶玉型の霊器〔霊晶玉〕を使用し、伝達手段役として、存在している
もちろん、相手は・・・
「はい、よろしくお願いします」
風牙衆が当主風巻兵衛だ
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第19話 業と報い、そして前夜
「シッ!」
瞬歩
気合と共に瞬歩
瞬速で移動し、抜刀一閃
速い剣速を得るため、弧を出来る限り直線に近づけた刺突のような薙ぎ
レーザーの如き、鋭い一撃だ
ガキィッ
相手に刃が届く前に槍の柄に阻まれる
しかし、威力に押され、後退させられ、地面を削る
「ずいぶんと威力が上がったね」
「景さんのおかげだ」
詳細は景太郎との戦いのおかげでさらに上の段階に上がった、という意味
「おしゃべりしていていいのか?」
声と同時に祐一はバックステップ
次の瞬間、数十にも及ぶ真空の風刃が空間を裂き囲んだ
地面に数条の刃跡が刻まれる
風による精霊魔術の攻撃ではあるが皮、肉はおろか、骨まで切断する威力を持っている
肉体の硬度は常人のそれとさほど変わらない
まともに受ければ、バラバラの肉片となる
「離れたら独壇場になるぞ?」
腕を振るうこと三度
一振り十四の風刃が生まれる魔手から、四十二の刃が空を裂き、射出される
その刃に意思は無く、ただ無造作にばら撒かれた乱撃
敵意や悪意などの相手の意思を(ある程度はだが)感じ取れる祐一にとって、意思を持って制御された攻撃は回避が容易くなる
そのことを考えれば無駄が多く生じるとはいえ、こちらの方が祐一の回避率を上回れるはずだ
全刃回避は不可能と感じ取り、迎撃に思考をチェンジ
「意思は感じられなくてもな!・・・・」
風刃の集合が甘いところを己の直感を頼りに割り出し、信じて突っ込む
四十二の内、八刃に向かって行く
数的には少ない方だろう
八刃の内、半数は致命傷となる威力と着弾箇所だ
残りの半数ですら、当たれば戦闘能力を激しく激減させられる
だが、恐れることはない
「そこに刃はある!!」
奥義之弐
虎乱
二刀による乱撃斬
射程に入った風刃を次々と斬り落とす
刃一つ一つに三撃ずつ
合計24の斬撃を以って、和麻の攻撃を無効化
「次、新技、行くぞ」
「おう♪」
嬉しそうな声音の返事を返し、小太刀を構えた
その言葉は祐一に向けられたものではなく、己の隣人であり、友人であり仲間でもある風の精霊に呼びかけたもの
風の精霊が和麻に集まると同時に彼を護るかのように旋風が包みこむ
和麻は集めた風精を掌に集中させた
そして、静かに詠唱
「
我が掌に集い、来たれ
回り廻る螺旋と為りて、宝珠を模れ
旋珠」
まるでNARUT○の螺旋○のような、螺旋回転を行う球体状の風
触れるもの、全てを切り裂き、砕く削岩の風
「行け!」
本来なら、接近して、相手に叩き込む技なのだが今回は敢えて、操作して放つ
一直線に祐一へ向かって飛ぶ風球
和麻が纏っていた旋風によって巻き上がった木の葉が一枚、風球に吸い込まれる
すると、木の葉は風球の表面に触れた部分から粉々に斬り裂かれ、吸い込まれているのに風球の中に入ることなく、視覚不能範囲にまで裂き散った
「その威力はやばいだろ」
空刃閃
大気を裂いて飛ばす真空の刃
一直線に飛来し、風球に直撃
和麻の制御力でも刃を躱すことはできただろうがそれをしないということは試作技の強度を試してみたいのだろう
激突した両者は圧倒的な敗北の刃、祐一
拮抗すらする事無く、刃は散らされる
これが風の精霊による攻撃だったら取り込まれる可能性もあっただろうがただの大気を裂く刃にそんな力は付加されていない
そのまま、勢力を弱めることなく、祐一に向かっていくだけ
「ま、破れないことはないけど」
クルッと二本の小太刀を回し、翅を畳む蝶のように刀を持った腕を後ろに回す
瞬歩
瞬速移動で風球に突っ込む
そのまま、最初の斬撃のように突き出すような薙ぎと逆薙ぎ
そして、その斬撃同士が耕作するように風球の斬り打ち、急速停止
奥義之肆
雷徹
御神流の基本三技の一つ、斬るのではなく、着弾時に発生する衝撃を貫通させる徹≠フ強化版で御神流奥儀の中では奥儀之極を抜けば、最強の威力を誇る
しかも、祐一のそれは霊力を纏わせてあるので風球にも対抗でき、
バガンッ
和麻の新技を破砕する
砕かれた風球は砕かれると同時に裂風となって、祐一の技を放ち伸びきった腕に切り傷を多少つけた後、霧散して消える
「まあ、こんなもんか」
「俺はちっとばかし痛いぞ」
恨みがましい眼で和麻を睨む祐一
すぐに癒道≠ナ治していたが痛いものは痛いらしい
「硬氣功℃gえば、痛くなかっただろうに」
「そんな一瞬では入れるかっての」
「どんな攻撃かわからないのなら、最初に用心しておかなかった君が悪いよ」
「ちぇ」
唇を尖らせて、舌打ち
自覚していたのか、それ以上言い返す気はないらしい
「まあ、いっか。それより、今の旋珠≠ネ、まだまだ改良の余地はあるぞ。爆螺≠ンたいなことできるんじゃないか?」
確かに技の外見上、あの爆発連珠に似ている
爆発はどちらかといえば、炎に属する現象
風で行っても威力があまり期待できない
だが、何も中身が爆裂である必要は無いのだ
「なるほど、そういうことか」
「・・・二人だけで納得しないで欲しいな」
発案した祐一と納得したような和麻に景太郎が疎外感を感じ、仲間外れをぼやく
「慌てんな。イメージが固まったら見せてやる」
右掌の上に何度も風の球体を作り出し、感触を確かめながら言う和麻
勢力は祐一に放ったそれに比べてずいぶんと弱々しいが球体の中に何かが生まれ始めている
その正体が明かされるのはまだ後のことだが確実に和麻は力を付け始めていた
「・・・・よく、これだけ、集めたものだ。いや、よくもコレだけ隠しているものだというべきか」
祐羅は風の精霊を通じて、目の前には無い資料を確認する
内容は当然、神凪の隠してきた闇
その情報に最も近い風牙衆なら相当の量を確保してあると確信してはいたが・・・出るわ出るわ
量にしてノートがダンボール一箱分
ノートの中身にしても綺麗にまとめられているがびっしりと書き込まれている
全て読み上げるのには半日以上は確実にかかりそうだ
少々うんざりな気分になりながらもポーカーフェイスで本心を顔に出さない
「これだけあれば問題はないだろう。この件に関しては、だ」
彼の言葉がズンッと兵衛らに重く圧し掛かった
紅羽の力とほぼ同質の効果を言葉だけで顕してみせる
どれほど途方もない力を持ち合わせているか兵衛達には見当もつかない
だが、それは兵衛達の神凪に対する恐怖心に対抗する唯一の希望がさらに輝くことに等しい
「それでは返答を聞こうか?風牙衆の諸君・・・神凪への妄執を捨て去る覚悟はあるか?」
「・・・・・」
兵衛はしばらく黙り込んだ
もう答えは決まっている
一晩中、衆の皆と話し合い、決めた結果だ
だが、いざ、新しき主の前で答えるとなるともう一度、自分の中で思い返した
祐羅も急かさず、兵衛の言葉を待つ
そして、沈黙すること、2分
兵衛は口を開き、答えを出す
「答えは二つございます」
「二つ?」
「はい、この兵衛を始め、一族の約6割が神凪への妄執を捨てることに賛成しました。同時に風牙衆であったことも・・・。ですが残りの者達は神凪に夫、妻、子を殺され、妄執から逃れられぬ者達です。ですから・・・」
「なるほど、二組に分かれたということか。そこで神凪に復讐することを選んだ者達に『風牙衆』として残り、お前達は我らに組するということで相違ないか?」
「はい・・・・勝手ながら我らの願い、聞き遂げてはもらえませぬか?」
兵衛は土下座して、祐羅に頼み込む
恥も外聞もない
それだけ、親族だった者達への最後にすべき想い
「・・・・・・ふむ。確認するが、彼らがもし復讐に成功したとしても我らは彼らを受け入れぬぞ?それでもいいのか?」
「はい・・・構いませぬ」
兵衛はそう、言い切った
祐羅はその言動と声音で断固たる決断と判断し
「承諾、『相沢』十二代目宗主相沢祐羅の名を以って、汝らを受け入れよう」
違える事無き契約の言葉
正式で物理的な契約はまだではある
だが、祐羅の言葉一つ一つが術式のように耳から脳、そして全身に入り込んでくるような感覚に兵衛達は侵される
もっとも、悪い意味ではないが・・・
「正式な契約は明日だ。神凪へは最終日に言い渡す。それでいいか?」
「はっ」
ようやく、この件については無事に終わりそうだ
祐羅はふぅと張り詰めた思いを吐き出す
確かに、この件については無事に終わる
だが、これを引き起こした人物に関しては別だ
まだまだ、歯車の休まるときは遠い
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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