「おまた〜」
「せ」がないぞなんてツッコむ者が誰一人いないほど、彼を多少なりとも知る者達がいる集まりにようやく主人公が来た
智代と香里は回復したといってもまだ心配なので安静にしてる・・・はずだ
本当なら残っても良かったのだがある報告をしなければならないために和麻達の所へ向かった
後ろに一人の少年を連れて
少年という表現は間違っていないだろう
連れてきた彼よりも年上であろうとも
「喜べ、諸君!率先役もう一人ゲット!」
パッパラパーとBGMが聞こえてきそうな古いフリで背後にいる連行してきた少年の本当にささやかな歓迎パフォーマンス
今時芸人がやっても恥ずかしいパフォーマンスで迎えられた少年だがまったく気にせずに自己紹介
「会って話すのは初めてだから、初めまして、浦島景太郎です」」
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第18話 幕間〜その女の子は最愛の・・・・〜
「よし、ならこの観光も問題なくできるだろ」
和麻が組分けを書いた表をトントンとまとめる
まだ祐一や智代、香里の三人の希望を聞いていないのだが率先役さえ、足りていれば、後は好きな班に入れればそれで問題無しなわけだ
話からわかるとは思うが景太郎には観光案内人をお願いし、承諾を貰っている
さらに良い事に景太郎の知り合いである青山鶴子も東京を良く知っているということなので彼女の妹である素子と景太郎の妹である可奈子も参加させることを条件に案内役を引き受けてもらうことに成功
これで何の問題もなく、観光が可能となったわけだ
「東京なんて初めてだから、楽しみだよ〜」
「あまりはしゃぎすぎるなよ。節度というものをしっかり守ってだな・・・」
「乙女、固いことはいいっこ無しにしようぜ」
・・・・・メンバーには大いに問題ありだが
まあ、ここにいる大半がそうなのである意味問題はないだろう
『毒をもって毒を制す』という諺もあることだし
「んじゃま、ここら辺で解散するとするか。出発日は試合が終わった後になると思う。もし怪我で出て来られない奴がいたら、諦めろ」
身も蓋もない
もっとも、その中には自分も含まれるのでそうとも言い切れない
まあ、本人は自身が休むなんてことは考えてもいないだろうな
「自分のせいで全員に気を使わせて、自己嫌悪になられても困るから、行けない奴は捨て置く。勿論、その分、土産物を買って帰るか、また別の日にもう一度観光するかを考える」
一応、全員のことを考えているので文句の一つも言えない皆
ぶっきらぼうで捻くれた優しさ
「景さん、軽く付き合ってもらえませんか?明日の調整に、和麻さんも」
「構わないよ。君に負けてから暇だしね」
「さり気無く、根に持っていたのか」
景太郎の皮肉にツッコむ和麻
二人の答えは了承
和麻も明日試合があるのでタイムリーな頼みだった
「よっし、じゃあ解さ・・・え?」
突然、祐一の顔がとある方向を向く
その方向は神咲薫
「・・・そ、そげん見詰められたら、恥ずかしかぁ」
何やら勘違いしている人物は置いといて・・・・
祐一の視線は彼女ではなく、その先にある何か
物理的には見えない、壁の向こう、屋敷の向こうにいる誰かを・・・
「・・・・・!!」
祐一は何も言わず、部屋から出て行った
かなり慌てていたのか、一直線に突き進んで壁をぶち破りそうな勢い
さすがにそんなことはせず、ちょっとグレードが下がって、窓から出て行く
残された者達は呆気に取られている
だが、納得したような表情をしている者が3名
白銀武、鉄乙女、水瀬名雪
窓から出て行ったときは3人とも驚いていたがよくよく考えてみれば・・・の表情だ
「千影か」
「だな」
「わぁ、千影ちゃん、来たんだぁ」
彼女の来訪を確信した
デデンッと建ち誇る神凪屋敷
その入り口に美女美少女コンビの二人がその風景を眺めていた
16話で電車に乗っていた二人組だ
「ここね、神凪本家の屋敷は・・・それほど広くないわね〜」
神凪屋敷の前に立ち止まった赤みを帯びた黒い長髪の若い女性がぼやく
東京に建てられたこの大邸宅を広くないと一体、誰が言えよう
彼女だから言える台詞だ
なぜなら、彼女は・・・彼女こそは
相沢祐羅の妻にして、《卍解》使い
と、いうことは相沢祐一の母親
先ほどの台詞もそんな彼女でなら納得できる理由だろう
まあ、それは置いといて・・・
傍らに立っている可愛らしい少女がクイクイッと女性の袖を引っ張る
一々の仕草がとてつもなく可愛く、またそれがよく似合う少女
「どうしたの、千影?」
千影と呼ばれた少女は不安そうな瞳で千夏を見上げる
相沢祐一がこの世で1番愛している最愛の妹
相沢屋敷を囲む森林地帯
斬魔師が仕掛けた鬼道≠ノよる半永久連続的な数々の罠と天然の要塞が誇る自然の罠
その二つが組み合わさった幻迷守森
そんな森の中に捨てられていた所を祐一が見つけ、拾い義妹となった少女
宗家の伝統を重んじる老人連中は難色を示したが千影が斬魔刀を保有していたこともあり、受け入れられた
彼女の経歴は重要だが今は関係ないので、取っておいて・・・
「お兄ちゃんは?」
ちょっと潤んでいる瞳で言葉にされた一言が無茶苦茶可愛く萌える
その手の人なら悶え死んでしまうほどだ
千夏は軽く死にそうに悶えながらも、自分の
「大丈夫よ。祐一なら・・・ほら、わかるでしょう?」
霊圧を感じるように言う千夏
千影は教えられたとおりに心を澄ませ感じる
目の前の屋敷には大量の人がいるために判断はしにくいが兄の気配は義父、義母よりも一番長く多く感じている
当然だがほぼ毎日
そして、何より祐一の溺愛を真っ向から受け止め、また同等の親愛を送るほどだ
間違えるはずが無い
感じた霊圧の主は・・・上!
上空を見上げた千影
その視線の先には太陽が逆行する眩しい白輝の中に存在する一点の影
「千ッ影ェッ!」
影から叫ばれた言葉は少女の名
屋敷の屋根を飛び移ってきたらしく、屋根には足跡が残っている
超人技・・・いや、ヒーロー技だが彼にとってはどうってことないらしい
フワリと羽が落ちたかのように静かに地面に降り立った
「お兄ちゃん!」
千影は目の前に降下して出現した祐一に走り寄り抱きつく
祐一は衝撃を限りなく零になるまで吸収し、優しく優しく抱き締めた
ついでに千影の頭を撫でる
「ッ〜〜♪」
撫でられて気持ちよさそうに眼を細める千影
よほど、祐一に会えて嬉しかったようだ
至福の表情に似た満面の笑みを浮かべる
「気持ちよさそうね、千影・・祐一、私には?」
千夏が自分にもしろとしゃがみ込む
175と女性ではかなり大柄な彼女ではしゃがまないと祐一の手が届かないのだ
「父さんにしてもらったら?」
冷静にツッコまれた
「馬鹿ねぇ、息子にしてもらうからいいんじゃない」
何がいいんだろうか?
まあ、母さんだし・・・・と思うことにした祐一であった
「そう言えば、母さん達が来るのは明日じゃなかったっけ?なんで?」
思っていた疑問を聞いてみた
千夏はやれやれとジェスチャーをして
「馬鹿ねぇ、それくらい察しなさいよ。相変わらずこういうところだけは鈍いんだから」
そう言いながら視線は俺・・・
正確には俺の腕の中にいる千影のほうを見ている
そこでようやく理解した
「千影にねだられた、と」
「あったり〜♪やっぱり、かわいい娘のお願いは聞いて上げなきゃね♪」
(なにが「・・ね♪」だ。いい歳して、まったく・・・)
頭の中でぼやくが突如、殺気が飛ばされた
飛んで来た方向を見ると千夏が満面の(コロス)笑顔
ゾクリと心臓が跳ね上がるような衝動を受けたがなんとか顔には出さずにいられる
「何か、失礼なこと考えなかった、祐一?」
「気のせいじゃない?」
もし、どもったり動揺を見せたりしたら、瞬間、炎で焼かれる
それはもう、灰も残らないくらいに
眼を逸らす意味もかねて祐一はこの腕の中にいる妹の方を向く
「お兄ちゃん、駄目だった?」
千影は瞳を潤ませながら上目遣いに不安そうな声で聞いてくる
そんな姿は祐一の心に
危うく萌え殺されるとこだった
千影からは見えないが祐一の視線の先には先ほどの千影を垣間見てしまった千夏が倒れながら痙攣している
千影、恐ろしい子!?
「んなわけないだろ、俺も早く千影にあえて嬉しいぞ」
さらに千影の紫髪を撫で、強く抱き締めた
千影は苦しそうにしながらも嬉しそうに目を細める
もはや仲の良い兄妹のレベルを超えていきそうな勢いだが『相沢』ではまあ日常茶飯事な光景ではある
「そういえば・・・試合の方はどうなの?」
「もちろん、連勝中♪」
Vサインを見せ付ける祐一
それから、と続け・・
「武と乙女も勝ち残ってる。智代は香里と引き分けた・・・後、和麻さって、そうだ!」
現段階の試合状況を教えようとした祐一は重大なことを思い出した
今、現在、遂行中の重要作戦を千夏に伝えようとするが・・・再び、沈黙
(ここで言うのはまずいよな。誰が聴いてるかわからないし・・・ここは父さん達に任せるか)
思い直した祐一はとりあえず、父親に全て任せることに決定
「父さんが
含みの存在を声の中に潜ませるように伝える祐一
「大事な話?・・・・・ふぅん」
千夏は息子の視線とその裏に隠された本当の言葉を受け取る
さすが
「じゃあ、祐羅のとこ、行ってくるわね。千影のこと、お願・・いしなくても、やるわね、あんたなら」
「勿論」
「無論♪」
千影も続く
千夏は可笑しそうに笑って、門の中へ入っていった
「よーし、千影。新しい友達、紹介してやる」
「友達?」
「こっちに来てから出来た奴らだ。それに香里達もいるぞ。会いたいだろ」
「うん♪」
「よし、じゃあ行こう!」
祐一は千影をお姫様抱っこで抱き上げて、再び、屋敷の屋根で移動すべく、跳躍
軽業師のように駆け飛び移り、仲間の下へ走っていった
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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