死闘が行われた狭地門第2回戦第1試合
その後で試合する者達にはプレッシャーがかかることだろう
次の第2試合に臨んだ式森和樹と乙姫むつみ
試合はすでに始まっており、氣と魔力が舞台に撒き散らされていた・・・・が
ガギャァンッ
「くぅっ・・・・」
大剣〔アルテマウェポン〕を支えにして、立ち上がる和樹
対して、むつみは
二人の勝負は一方的な展開で始まり、続き、今に至る
先手必勝とばかりに初手からは攻め手に回り始めようとした和樹なのだが・・・
初手をいなされてから、始まる反撃一閃からの怒涛にして、舞の如き連続攻撃の前に押されに圧された
「アルヴァンス・・
真鳴流槍術
「秘技 旋突=v
和樹の必殺技が放たれるより速く、むつみの風を纏った円運動からの高速突きが炸裂
防御できずに直撃
和樹は呆気無く、気絶し、地面に倒れる
意外な敗北に未だ前試合に興奮冷めやらなかった観客はまた捕らわれた
天低門
白銀武VS七夜香奈美
斉藤徹VS浦島可奈子
狭地門
両義式VS七夜志貴
式森和樹VS乙姫むつみ
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第16.3話 全門第2回戦開始〜爆炎の少女達〜
「・・・・ここで和樹が落ちるか」
試合が次にある乙女は緊張して、まだ始まってもいないのに刀を握り潰さんとばかりにギュッと強く握り締めている
〔地獄蝶々〕は中で悲鳴をあげていることだろう
残念なことにまだ同調率の低い彼女には聞こえることは無いのでしばらくは放置だ
そして、次の試合に視点を移す
浅海門
神凪和麻VS石蕗真由美
和麻の試合が始まる
相手は紅羽の妹
と、いうことは、あの石蕗巌の娘でもある
ただし、疎まれた
「手加減はいらないな」
物騒なことを呟く和麻
だが、彼は別にフェミニストというわけではない
むしろ、祐一以上の平等主義者
虐待には女の子も参加していたので当然といえば、当然だ
『神凪の小僧』
舞台に足を踏み入れようとしたとき
呼魂法≠ノよって、誰かの声が聞こえてきた
声だけなのに威厳と圧迫感を与える
声の主に心当たりは無いが大体の見当は付いている
『真由美に毛ほどの傷を与えてみろ・・・ただでは済まさんぞ』
石蕗巌
祐一の現在、倒すべき敵1に位置づけられているおっさん
堂々と脅迫してきている
「くくっ・・・」
笑い声が後ろの方から漏れるのを聞き取った
漏らしたのは『相沢』に仕える風術師『浅葱』空
どうやら、盗み聞きしていたらしい
しかし、和麻が気付いたのは漏れた笑い声であって、盗み聞きについては一切、感じられなかった
(これが積み上げられた実力と経験の差か)
能力が発現して間がないとは言え、自身の未熟さを知る和麻
と、それは別として・・・
「俺に命令すんな」
吐き捨てるように巌に言い返して、舞台に出た
『貴さ・・』
巌が何か言い出す前に風の精霊を操作して、呼魂法≠切る
あんな安っぽい脅しに怯む様な男ではいられないし、いない
それから、開始位置に着くまで何度か、呼魂法≠ェ来たが空に妨害され届くことは無かった
「試合開始!」
結果だけ言おう
浅海門
神凪和麻VS石蕗真由美
内容は圧倒的な和麻の勝利だった
相手が地術師なので舞台全体の地面を常時探査対象に設定し、攻撃のタイミングを読み取る
それに合わせて回避すれば相手の攻撃は恐れるに値しない
後は《木氣》を中心にして、防御を打ち破り、真由美をノックダウン
例え少女だとしても地術師の防御力と回復力は侮れないので腹と首に《木氣》が込められた拳撃を一発ずつくらわせ、気絶させた
試合開始から終了、そしてその後もずっとプレッシャーがかかってきた
発生原因は言うまでもないだろう
次は乙女と咲耶の試合
和麻からしてみれば非常に困る組み合わせだ
と
乙女本人にも世話になっているため、どちらを応援したらよいのか、わからない
和麻としては、断然咲耶を応援したいのだが・・・・
「バ〜カ、一々、悩むことじゃないだろ。好きな方を応援しろよ」
そんな悩みを二言で切り捨てる
「乙女もそう思ってるぞ」
(乙女の場合、祐一の応援さえ、あれば他はいらないだろうがな)
智代がフォローに回りつつ、本心を心の中で呟く
「和麻の妹か・・・顔はあんまり似てないな」
対峙した咲耶を見て、素直な感想を述べる
「お兄様を知っているの!?」
「私達の仲間だ」
一言で答える
咲耶は「そう・・・」と悲しげに呟いた
内心では複雑な気持ちで一杯なのだろう
現在の状況になったのは偶発的とはいえ、今までの『神凪』が積み上げたものなのだから
「いいかな、二人とも」
雅人が乙女と咲耶に聞く
「「はい」」
「それでは鉄乙女VS神凪咲耶・・・・始め!!」
今日二番目の注目試合
『魔』からも『人』からも対象を守れる守護一族
日本で『相沢』に次いで古き退魔一族
二族の若手最強クラスの実力者である彼女達の試合
神凪にとっては式と志貴よりも見逃せない
「(お願い、私に力を・・・さぁ、行きましょう)
黄金の輝きを放つ炎が咲耶の体から溢れ出す
《浄化》の力を秘めるエネルギーは咲耶に纏わりつく
差し詰め、炎の鎧といったところか
「神凪の炎で作られた鎧・・・・素手では触れられないな」
乙女は霊力を集中させ、詠唱開始
「
鍛腕・剛脚・錬鎧
我が身に纏わり憑くがいい
護道の三十一 武魂招=v
全身と刀に蒼金の霊力を纏う乙女
武魂招≠フ効果は腕力、脚力の上昇と肉体の硬化、そして、纏わりついている霊力がバリアの役割を果たし、その防御力を上回る攻撃以外を寄せ付けない
「行くぞ!」
瞬歩≠フ瞬間的な速力には及ばないが順ずるに値するスピード
咲耶の目はそれをギリギリ捉え、反応
炎の精霊に意思を込め、前方に展開
ガリガリ
金属が削れるような異音が鳴る
荒々しく響く音は決して、音源である刀と炎から出る音ではない
しかし、それは所詮物理法則の粋を超えない誰もが知る世間一般常識の範囲での話
炎術師に限らず、精霊魔術師は炎、水、風、地の属性を操るのではない
精霊が持つ世界を構成する力の一端を借りて、自らの意思を世界に顕現させる
意思が強ければ強いほど、術者としての格は高く、物理法則すら超えられる
例えば、『水の中や無酸素状態でも燃える炎』
半物質である炎を物質化させることなんて訳は無い
「今度はこっちから!」
放ったのは拳大くらいの炎球
久我透達、分家のそれとは密度、熱量、召喚速度、その他もろもろの全てが段違いの攻撃
一気に十数個、密度、弾速も一流と呼んで遜色ない
乙女を囲むように出現し、始動
同じタイミングで一斉に射出
「
護道を詠唱破棄で起動
円球状のバリアのような光学防壁が乙女を包むように発生
詠唱を破棄した分、その性能は低下
その分、霊力をより多く込めることで低下分を補う
次いで連続爆発
荒々しい爆音が鳴り響いた
咲耶は笑みを浮かべる
・・・が、すぐに笑みを消した
巻き起こった爆煙を突き破り、突進する乙女の姿
鞘に手を掛け、鯉口を軽く切って、柄に手を添えているその体勢はすでに抜刀の構え
「
咲耶は両手を広げ、両掌を乙女に向ける
その動作は炎を呼び連れ、巨大な炎の壁を作り出す
防御系の炎術でその硬度は先ほどの炎の盾とは比べ物にならない
さらに炎壁は二人を遮断するように展開され、回り込むのは手間だ
飛び越えようにも8mもあっては、同じぐらいの手間がかかる
だが、乙女は気にせず、霊力を初刀に注ぎ込み、炎壁に向かって突っ込む
「
抜刀、始解発動
炎の壁に向かって一閃
次の瞬間、炎が揺らぎ爆裂
硬いはずの壁が一瞬で爆ぜ破られた
これが乙女の《始解》斬魔刀〔地獄蝶々〕
解放時に能力を発動し、発動後《初刀》状態に戻る瞬時解放型
能力は刀が通過した空間を歪曲、爆裂させる
能力発現時は刀身に物を斬る力は無く、鉄でも金剛石でも透過する
ただし、同じ〔斬魔刀〕や高い神秘性を持った宝具や魔導具、遺産は透過できない
「嘘・・・赤壁≠ェこんな簡単に」
「戦いの最中におしゃべりは感心できないぞ」
声が聞こえたは上空
見上げる咲耶の眼には刀と鞘を片手ずつに持ち、上半身を捻っている攻撃体勢の乙女が映っていた
「はぁっ!」
「ッ!っは」
薙ぎ降ろされる斬撃に咲耶は迷わず、両足を滑らして、地面に背中を落とす
受身を取ったが衝撃を完全には殺せない
だが、斬撃は回避し、おまけに乙女は今、無防備状態
「いけぇぇっ!!」
黄金の炎を渾身の力を込めて放出する
大出力の炎が乙女を覆い尽すさんばかりに大展開
(空中なら身動きは取れない・・もらった)
「斬魔士を甘く見てもらっては困るな!」
炎に飲み込まれる瞬間、乙女の姿が消える
瞬歩
瞬速移動で炎に包まれる前に脱出
「
反転しながら、再び始解
今度は解放の言葉が違う
爆裂予定の歪曲空間自体を移動させる能力の応用技
この空間は乙女の任意で爆裂できる
「
咲耶は自身が使える最強の防御術を展開
バァァンッ
爆音が舞台と観客席に鳴り響いた
「咲耶!」
和麻が堪えられないとばかりに立ち上がり、舞台上へ入ろうとする
「こらこら」
「やめろって」
祐一と武が羽交い絞めにして彼を止める
気が気ではない和麻は二人の拘束を強引に突破しようともがく
志貴に勝るとも劣らない身体能力を誇る和麻
おまけに焦っているくせに妙なフェイントがかかっていて二人がかりでも的確に抑え込めない
なんとか、止めている状態だ
「祐一、武!邪魔すんな!!」
「馬鹿ヤロッ!風術師なら、わかれって!」
「二人とも無事だ。少なくとも外傷はほとんどない」
その言葉に和麻は大人しくなり、爆煙の中を調べる
砂煙は地術師のテリトリーだが風の範疇でもある
調べられないことはない
「・・・・ほっ」
どうやら、無事な様子で安心の息を漏らす和麻
ため息を聞いた二人は拘束を解く
「まったく・・・少しは自分の妹、信用しろよ」
「悪い・・・・・・」
恥ずかしそうに俯く和麻
「気持ちはわからなくもないけどな」
(だろうよ)
祐一の言葉に武は内心呟く
この少年がどれだけ自身の妹を可愛がっているかいつも目の当たりにしている正直な感想
和麻と咲耶のそれよりもはるかに上だ
武からしてみれば祐一がさっきの和麻と同じ行動をとられたら止められなかっただろう
ま、もっとも・・・
(必ず止められる人が近くにいるから安心だけどな)
祐一より遥かに強い一族の長がいるのだから
「おっ、決着がつくみたいだぜ」
「はぁはぁはぁ・・・・・」
咲耶は大きく息を荒げながら、腹部を押さえていた
外傷としては掠り傷が数箇所程度だが内部ダメージは相当残っていた
ダメージの正体は爆発による衝撃
神凪の炎は衝撃ですら焼き尽くすことは可能
だが、衝撃自体に別の力が付加されていれば、後は術者同士の意思に勝敗が委ねられる
〔地獄蝶々〕の空間爆裂はいずれも神凪の炎を上回った
つまりはそういうことだ
「でも・・・私は負けない」
炎を両腕に灯す
「お兄様は、お兄様だけは・・・・渡さない」
わがままと言われ様と、例え兄の選択に背くことになろうと、自分が兄に言ったせりふとは正反対の内容であろうと、そして、兄が傷つこうと・・・・・
譲れない思い、間違いだとわかっていても叶ってほしい願い
それが砕かれない限り、咲耶は祐一と敵対する道を歩む
「それは祐一に言った方が良い。決定権はあいつにある」
あっさりとバラす乙女
観客席から一筋の鋭い視線があったが乙女はすまなく思いながらも無視した
風牙衆は抑えられる自身はあるのでどの道、神凪にばれることはないだろう
それは祐一もわかっているはずだ
だが油断の怖さを知っている大胆なる無鉄砲改め完璧主義者こと相沢祐一
敵は神凪一人ではないのだ
黒い腹を抱える水面下での戦いを知らない祐一にとって代わり、それを行う祐羅のために己に出来ることは情報の漏洩を出来る限り、抑えることのみ
それゆえの視線
「ゆういち・・・相沢祐一ね・・・わかったわ」
炎がさらに燃え上がる
乙女の、柄を握る手にも力が入る
「鉄乙女・・・いざ尋常に勝負」
「神凪咲耶・・・・参る」
そして、勝敗を決める一歩を踏み出した
刀と拳
互いの一撃は交わる事無く・・・・・勝負は決す
「勝者!鉄乙女!!」
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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