「さて、俺の役目はもう終わりか・・・」

明日も流也の所に行けば、終了

和麻は・・・・普通なら自分の方に転ぶと思うが別のファクターの存在が懸念される

「和麻の家族構成は確か・・・・」

父は神凪厳馬、母の深雪、妹に咲耶、弟が煉

(父親と母親は無関心だから問題ない。懸念すべきは妹弟の存在か・・・)

俺にも妹がおり、とても可愛がっている

いや、自分で言うのもなんだが『とても』などという言葉では足りない・・・凄まじく非常に異常なほどに可愛がっている

だから、もし和麻が引き抜きに関して、戸惑ったとしても不思議ではない

と、いうか、それしか考えられない

「って、俺は人のこと、気にしてる場合じゃない!!」

明日から大人子供両部門の第一回戦が始まる

いろいろとゴタゴタしていたのですっかり忘れていたが・・・

「時間はそうないか・・・・父さんにでも付き合ってもらおっと」



(だれ)よりも()(だか)(つよ)く、そして・・・


第1章  第13話         
風の行方





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ボーっと空を見上げる

何をするわけでもなく、ただ・・・呆然と蒼穹の空を見上げていた

ふと、徐に腕を掲げて

(まわ)れ」

俺の意思に従い、呼ばれた風の精霊が旋風を起こす

螺旋の如く、掲げた右腕に纏わり付く風

これが俺の得た・・・いや、持っていた力だ

「風術・・・か」

神凪では下術とされてきた力

第一印象はソレに尽きた

神凪で育ったから仕方ないのかもしれない

だが、次に思ったことはあの蒼き竜巻

「アレは・・・一体・・・・・」

不思議よりも先に嬉しさが込み上げた

力だ

力が手に入った

自らが編み出した武十星術≠謔閧燉yかに強大な力

炎にも負けない強い力

トドメは祐一だったとはいえ、神凪宗家に匹敵する炎を宿した巨人を追い詰めたのは俺の風

コレで俺はもう誰にも馬鹿にされない

誰からも認められる

そんな確信があった・・・しかし、それは力に眼が眩んだ慢心でしかなかった

そのことはすぐに身をもって知ることとなる

ある程度回復すると乙女と模擬戦闘を行った

俺の慢心を完全に見抜いた祐一からのプレゼント

あの蒼き風こそ出せなかったが風の精霊は呼び出し、風牙衆より強力な風は操れた

それだけ・・・・

その力を持ってすれば、あの時の神凪の分家9人くらいなら一人でどうにかできた

だが、それを軽々とやってのけることが可能な祐一や乙女といった実力者を相手にするにはまったくの力不足

完膚なきまでに叩き潰された

集めた風という風を斬り散らされ、攻撃という攻撃を裂かれた

今、考えれば、武十星術≠ニ組み合わせれば勝ち目はあった

しかし、風術という力に驕っていた俺は戦術など欠片も入っていない力まかせの戦法で乙女に立ち向かい、フルボッコ

慢心と同時にちっぽけな自信を木端微塵に粉砕され・・・・

『和麻の戦い方、分家のガキ連中と同じだったな』

物理的にも精神的にもボコボコにされた

全力でこそなかったが手加減もなかった

だが、ソレでよかったと思う

・・・・別に俺がMと言うわけじゃないぞ?

もしも、あのままだったら、俺は嫌悪していた奴らと同存在になっていただろう

それを拳と刀を以って治してくれたあいつらには本当に感謝している

一種のトラウマが出来上がってしまったことについては・・・まあ、受け止めておく

「それにあのままじゃ、祐一にも見捨てられていただろうしな」

あんな無様な俺なら、例え俺が祐一の立場でもいらない

「・・・・・ん?なんだ・・・俺・・・・・祐一達の所に行きたかったのか?」

口に出して言ったことは確かにそう取れる発言だった

自分でも意外だったのだがなぜか、動揺は無く、すんなりとその言葉を受け入れられた

それが初めからの答えであったように

「でも・・・・」

なら、何で俺は祐一の誘いにすぐ応じなかったんだ?

あの時・・・祐一に誘われた時、俺は即答できなかった

いや、わかっている

多分だが、その理由は・・・・・

「お兄様、こんなところにいたの?」

我が妹の存在だと思う

亜麻色の長髪をツインテールに分けた智代達にも劣らない美少女

神凪咲耶

俺と違い、炎術の才能溢れる少女

一つ下の歳ですでに黄金の炎を使いこなしている天才

再従兄妹である綾乃よりも実力は高く、努力を怠らない兄の眼から見ても立派な妹

次期宗主候補1と期待されている【神凪の双巫女】の一人

「咲耶・・・どうかしたのか?」

「む〜、せっかく可愛い妹がお父様の目を掻い潜って来たのに・・・」

拗ねた表情で睨んでくる

「ああ、悪い。嬉しいよ、咲耶」

ポンと妹の頭の上に手を置き、優しく撫でてやる

眼を細めて気持ち良さそうな顔になる咲耶

すぐにハッと眼が覚めたように覚醒し、む〜とこっちを睨みつけてくるがまるで怖くない

「いつもそうやって、ごまかすんだから・・・・」

そう拗ね気味に呟いて、隣に腰を下ろす

「・・・お兄様、変」

いきなり、そう告げ出す

「何か、悩んでいるみたい」

どうやら、顔にまで出るようになったか

分家連中に迫害されていたときから、相手に優越感を与えないようにポーカーフェイスだけはプロギャンブラー並のレベルには達していたってのに

「なぁ、咲耶・・・・」

「なぁに?」

聞き返されて、今更ながらに迷う

これは言って良いことなのか?

いや、良い筈が無い

祐一の話だと、まだ重要な前準備が終わっていない

そんな場面で俺が咲耶にこの話をすれば・・・おそらく俺を止めるために動く

そのためなら、父上にも進言することを厭わないだろう

父上なら、俺を捨てることはどうとも思わないだろうが風牙衆は別だ

あれほどの風術師集団を手放すようなことは絶対にしない

それが『神凪』のためであらば、父上は必ず計画を破綻させるために動く

と、すれば・・・全てが終わる

それだけは絶対に避けなければならない

「・・・・・」

俺の言葉を待つ咲耶

ミスった

ここでなんでもないと答えても、嘘である事はバレバレ

だが、咲耶にだけは嘘は付きたくない

板挟み状態・・・だが、話し始める

「眼の前に二つの道がある」

左手の指でVサインの形を作る

そして、中指を曲げた

「一つはいつも通っている道・・・何も変わらない、いつも通りの日常へと続く世界」

数秒躊躇しながら・・・次は人差し指を曲げる

「もう一つは・・先が見えない道・・・日常を捨てた、可能性に満ちる未知の世界」

神凪和麻のまま生きる世界とただの和麻となる世界

「お前なら、どっちに進む?」

咲耶には少し難しすぎる質問か

「お兄様の・・・・()きたいほうでいいと思う」

「え?」

今、なんて・・・

神凪(ここ)じゃ、お兄様は強くなれない。お兄様にとって神凪(ここ)は良い場所じゃない・・・・・でも!」

咲耶は言葉の途中で胸に飛び込んできた

俺の背中に手を回して、ギュッと強く強く抱きしめた

「私はそばにいてほしい!私のそばに・・・・」

服の一部に冷たい感触

これは・・・涙

(ああ・・・・・・泣かせちまったか)

「ごめん、咲耶」

優しく・・・優しく、彼女の全てを包み込むように抱きしめてやる

(こいつだけは泣かせないって決めていたのに・・・・)

でも、決まってしまった

よりによって彼女の涙で俺が進む道を決めてしまった

「俺は・・・神凪(ここ)を出る」

かくして、風は流れる

物語は中盤へと入り込む




続く



Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


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