「祐一」
背後から和麻さんが声をかけてきた
振り向くと和麻さんの隣にもう一人、知らない人がいた
背は和麻さんと同じくらいで歳は上そうな少年さん
「こいつが風巻流也だ」
「この人が・・・・はじめまして、相沢祐一です」
ペコリと頭を下げる
長い間、下にしか見られなかった流也にとって、それは久しぶりの経験(風牙衆の中では長の息子としてが数回だけ)で、大いに戸惑わされる
「さっそくだけど、流也さん」
「・・・なんでしょう?」
真剣な表情で見てくる頭半分ほど小さい少年に気圧されながらも聞き返す
怖いとは思わなかったが少なくとは自分とは格が違うと流也は思う
「とりあえず、遊びましょう」
「は?」
あんな真剣な表情の次に出てきた言葉のギャップに固まる
和麻も唖然
と、そこにガヤガヤとやかましい集団がやってきた
「お〜い、祐一!」
「人数、集めてきましたよ〜!」
武、智代、志貴、乙女、和樹、凛・・・・・・etcetc
中には祐一の知らない奴がちらほらいたが数としては充分だった
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第12話 作戦開始〜仕込み編〜
「
乙女がサイドスローで投げるボール
そこらの小学生が投げた球と思ってくれるな
常人ならざる身体能力から放たれたボール
それは直撃すれば骨すら折れる高速弾
高さ自由(設定が設定なのでゲーム版と比べたら今でようやく同等)
狙われたのは志貴
しかし、モーションから大体狙われていることを察知していた志貴は右へサイドステップ
「甘いぞ!」
乙女の言葉通り、一直線だったボールの軌道が志貴の動きを追うように左へシュートする
急激な変化にかかわらず、ボールは完全に志貴を捉えていた
しかし、忘れてはならない
ここにいるほとんどの人間が常人ならざる身体能力の持ち主であり・・・
七夜志貴はその中でも特に高い身体能力を誇るのだ
「ほっ!」
上体を反らして、シュートボールを回避
バシィッ
弾丸ボールをキャッチしたのは外野にいた武
総合身体能力は乙女のほうが上だが力と脚力は武に分がある
ガッチリとキャッチしたボールを振りかぶり
「もらい!」
志貴に向かって投げる
体勢の悪い今の志貴では避けきれない
「いなせ、志貴!」
祐一の声が響く
一瞬で反応し、至近距離から放たれたボールをいなして、地面へ向かう斜めの軌道から地面との並行軌道に変える
「和麻さん!」
「任せろ」
今度は和麻ががっちりキャッチ
いなした分、威力が弱まったので難無く腕に収めた
「沙弓!」
ワンハンドで裏拳のような形で投球
速効性を重視した投法で外野の沙弓に回す
「薫さん!」
「祐一君!」
「おっし!」
和麻→沙弓→薫→祐一への高速パス回し
祐一は回されてきたボールを左手でワンハンドキャッチ・・・・せずにスルー
スルーされたボールは軌道上にいた流也がキャッチ
投球して、神咲楓を撃破
「うぇ〜ん、もう負けたばい」
悔しがりながら外野へ移動する
今更だが説明しよう
祐一達はドッジボールで遊んでいる
地方によってはドッヂボールらしいが・・・まあ、そこらへんはどうでもいい
すでに子供の遊びとは、言えない内容ではあるが・・・それもどうでもいい
祐一の目的はそれではないのだから
流也の傍に移動
向かってきたボールを避ける
「風巻流也、話がある」
小声で話しかける
周りはボールに集中しているので誰にも声は聞こえない
再び、飛んできたボールを避け、今度は流也から離れた
(一体、彼は何を俺に・・・・・!)
流也は横目で祐一を観察していると、祐一の口がパクパクと動いているのがわかる
祐一が何を望んでいるかを察すると、風術を起動
祐一の魚のような動作、パクパクの正体
本当にゴクわずかな音量で出される声を風の精霊が拾ってくれる
『声は聞こえるよな?』
自身の読みは外れていなかったようで風術でこちらが声を聞こえているのを確認するような台詞を告げる祐一
それにコクリと頷き、同意を示す
『長ったらしく話してる暇はな・・・!・・いから単刀直入に言う』
ボールを受け止め、味方にパスしながら会話を続ける祐一
相当器用でないと思考を分割するなんて器用なことは出来ないはずなのだが
『明後日の午後2時、風牙衆の長と幹部連中と対談したい。なお、これは相沢家宗主の申し出と判断してもらっても構わない』
流也の驚きを祐一は感じ取る
だが、かまわず続けた
『対談するに関して、明日、一度風牙衆の屋敷に俺と和麻さんを招待して欲しい。時間は・・・午前11時、できるか?』
『・・・・一体、何を考えているんだ?』
流也は不安を抱えながら、恐る恐る聞く
『それも含めた全てを明日説明する。だが、これだけは知っていて欲しい。多少の無茶はあるが絶対に風牙衆の為になること、デメリットを吹き飛ばすほどのメリットを約束する』
『・・・・・・』
流也はしばらく黙り込む
頭の中を過ぎるのは父上や一族の者達の顔
それにやはり『相沢』の名
流也が下した決断は・・・
『わかりました、相沢祐一殿、長にはそのように伝えます』
『感謝する。それからもう一つ・・・・・・ボーッと立っていると危ないぞ』
ハッと気付いたときにはすでに遅かった
乙女の直線ストレートボールレーザービーム≠ェ眼前に迫っていた
技の名称は科学的なのにボールに纏わり付いた氣が龍なのかが疑問点だ
などと、くだらないことを考える祐一を尻目に・・・・
流也は意識を手放した
「う・・・」
意識が覚醒する
眼を開けて、初めに見た光景は・・・・
「・・・知っている天井だ」
え、知ってるの!?と、ついツッコミたくなる発言をしてしまった
ここは嘘でも知らないといっておくべきだったか
・・・・・・・・・
・・・何を言ってるんだ、俺は?
ここは俺の部屋だよな・・・なんで、こんなところに
「乙女のレーザービーム≠ナ気絶した。そりゃ、意識も飛ぶ」
「あれはもう必殺の粋だ。普通の奴がくらったら死ぬな」
本人の前では言えない様な事を軽く言ってのける和麻
後にばれて制裁されるとも知らずに・・・
ちなみに犯人は同席者
「祐一殿、和麻様・・・・」
なぜ、あなた方がここに・・・・?なんて質問はしない
目覚めたばかりの時と違い、意識がはっきりとし、大体のことを察したからだ
「殿なんてやめてくれ、友達だろ?」
「だ、そうだ。俺も様付けすんなよ?」
二人は笑いながら、そう言ってきた
心にジンと暖かい何かが湧く
正体がわからないソレはとても心地よいものだったが・・・
わからないが故に怖くなり、ソレを押し殺す
「そんな・・・俺、いや私なんかが・・・」
「やれやれ・・・ま、その態度は後々壊すとして・・・」
なにやら物騒な発言に、心の中で思わず引いてしまう
祐一殿はそんな俺に気付かず、続ける
「明日の予定だったのにこんな形で早まるとは思ってもみなかったけど、これはこれで問題ないよな。
一日繰上げってことで・・・・・本題に入ろうか」
最後の一言で場の空気が一変
俺と和麻様は強制的に精神を引き締められた
証拠に顔が引きつってしまうくらい強張っている
「その前に・・・」
祐一殿は目を瞑り、何かに集中している
全身から少量の霊力が溢れ、部屋のいたるところに飛び散った
「
音界を断じて聞けよ
護道の二十九 遮塔寺=v
風の結界が張られるのを察知する
相沢の斬魔師が使う特殊霊術の一つ護道
実際に見るのは初めてだが高度な術式だ
結界の展開はわかったがどんな効果なのかはまるでわからない
「これで(結界の)外に音が漏れることはない」
それでいて、外からの音は遮断されないという
風術師でも、これができるものは大勢いるが特化型の精霊魔術師だからこそだ
それ以外の術者がするには難しい
と、考え耽っているうちに祐一殿が話し始めた
「率直に言おう。『相沢』は『風牙衆』を傘下に入れたいと思っている」
「「!!?」」
驚愕すべき発言に思考がフリーズ
それは和麻様も同じで時が止まっているような表情
「和麻さんから流也との接触を求めたり、わざわざドッジボールまでして密談を交わしたりしたのも全てはそのため。一度、ここに来たかったのは神凪の連中に俺がここにいても不思議に思われない前準備と思ってくれてかまわない。あ、和麻さんと出くわしたのは偶然だから悪しからず」
まだ、全ては答えたわけではないのだろう
驚愕なこととは驚愕だったが・・・
これは、もしやチャンスではないだろうか?
「対談は変わらず明後日、対談方法は呼魂法≠ナの遠距離対話だ。長や幹部連中には近くの部屋で連結・呼魂法≠使ってもらう。神凪にばれるとまずいから直接対談は無し。カモフラージュのために幹部連中には仕事でも将棋でもいいから何かしてもらっておいてくれ・・・俺が言うべきことはここまでだ。念の為、明日も見舞いを口実にして、行くから寝ておいてくれよ?」
途中からメモを取り出して、書き記しておいた
父上達に告げた後は微塵も残さず消しておくように念を推される
しかし、この会議方法はなかなか、斬新な方法だと思う
戦闘力特化の神凪相手には、かなり有効な手段だろう
欠点があるとすれば、会議に参加する風術師より有能な風術師の存在
可能性は低いだろうがもしいるとすれば盗聴の可能性がある
まあ、ないだろうが・・・
「じゃあ、お大事に・・・行きましょう、和麻さん」
「え?あ、ああ・・・・」
和麻様は和麻様で第三者のような形で呆けていたが祐一殿の言葉で覚醒
従者のように祐一殿の後ろを歩き、俺の部屋を去っていった
「なあ、祐一」
和麻が目の前の少年の名を呼ぶ
しかし、祐一が振り返るより早く、続気の言葉を口にする
「風牙衆の件、
先ほどの重要な話・・・・一応神凪の宗家である自身が聞いてはまずいのではないだろうか
今回の場合、神凪は敵に位置する・・・・普通なら聞かせない
(まさか、今から気絶させて、記憶を奪うって言うんじゃ・・・・)
「俺はそういう細々とした事は苦手なんで、しない」
まるで心の中を読みきったような台詞
ドキッと和麻は動揺する
「読心術じゃないですよ。ただの直感です」
(それはそれですごいぞ)
呆れ果てる和麻
そんな彼を尻目に祐一は和麻の問いに答える
「別に構いやしませんって。風牙衆を参加に入れるのは『相沢』にとっての目的だが
え?と和麻が呟くより早く、祐一が回れ右
和麻と向き合うような形で対峙する
視線こそ下だがその年不相応の強大な力に裏付けされた双眸と視線を交わすとなると逆に圧されている感じがする
父である厳馬とはまた別の圧迫感
そんな和麻に気付いてか気付かずか、祐一はさらに続ける
「俺は和麻さんに相沢へ来て欲しい。勿論、来る来ないは和麻さんの意思次第だ。無理矢理、連れてきても意味ないからな」
祐一にとっての目的なだけに『相沢』には迷惑はかからないと告げておく祐一
和麻にとっては旨過ぎるほどの条件と内容
「だが、俺は貴方に来て欲しいと思っている。この出会い、偶然にしたくない」
委ねられた選択
和麻が選ぶ道は・・・・・
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
高さ自由様へのメールはこちらへ。
戻る 掲示板