「父さん!!」
ダンッ
襖を開けた音が短く響く
勢いやれば、スパァァンと気持ちの良い音が出るのだがそれ以上の力でやったため、力強い音となってしまった
おかげで襖の寿命がかなり短くなった
まあ、それはいいとして・・・どうせ神凪の家なので・・・
襖を開け、部屋の中に入ってきたのは・・・我が息子、祐一
なぜか、額や腕、脚を包帯で巻いているがスルー
この子にとってはコレくらい日常茶飯事だからだ
「ど、どうした、祐一?」
突然来た息子の訪問に驚いてしまった
それも少々、興奮気味だ
息子がこれほど、慌てているのは千影が熱を出して倒れたとき以来か
もっとも、俺も似たり寄ったりだったが・・・
つい騒ぎ過ぎてしまって、二人して千夏の奴に怒られた
ちなみに、千夏に怒られた=斬魔刀解放状態で追い掛け回される、だ
あれはさすがの俺も死ぬかと思ったな
まあ、それはいいとして・・・・
「冬治さんから話は聞いてるよな?」
ズズイッと迫る祐一に思わず、後ずさる
かなり格好悪いとは思ったが怖いものは怖い
しかし、話の内容を聞いて、頷く
冬治からの話といえば・・・神凪和麻君のことだろう
「?・・・ああ、あのことか。確かに聞いてはいるが・・・・・・まさか、お前・・本気で通す気じゃないだろうな?」
あの自分の仲間以外は無価値と決めている祐一が・・・・・
「事情が変わった」
どうやら、本気で通す気らしい
それくらい、最初から祐一の眼を見ていればわかる
だが、言葉とその声色を聞いて、本気だと、改めて理解する
「しかし、どうする気だ?仮にも宗家の息子、そう簡単にはいかないぞ。第一、証拠が足りなさ「足りないなら増やせばいい」簡単には言うがな・・・」
そう上手くいくわけがない
と、続けようとする前に祐一が喋りだした
「幸い、ここにはそれをしこたま抱えている者達がいる」
なるほど・・・・我が息子ながら良い所に目を着ける
「風牙衆か」
確かに彼らは神凪に不満を持つ・・と、いうか、昇華して憎悪を持っている連中の頂点に位置する者達だ
実際、神凪に弄ばれ、殺された者も少なくない
しかも、風術師で情報関連のスペシャリスト
神凪の内部情報を全て握っているといっても過言ではない
そんな彼らは物理的な力によって従わされている
おかしな話だ
「お前の言いたいことはわかった。風牙衆なら、確かに適任だ。だが、踏み切れるかな?」
踏み切るチャンスはいくらでもあっただろう
だが、最終的には踏みとどまった
今回もそれがないとは言い切れないぞ、祐一
「踏み切れなかった理由は多分だけど、『退魔』の世界において、神凪の力が強すぎて、後ろ盾が弱すぎたからだと思うんだ。その点、今回は俺達『相沢』」
な〜る・・・・一理あるな
と、いうか、それぐらいしかない
忠義精神なんてものを抱けるはずもないし・・・・・・
「接触はどうする?まともに会いに行くと怪しまれるぞ」
「そこは考えてあるから大丈夫。ただ、最短でも二日かかる」
こいつのことだ
妙案が浮かんでいるんだろ
なら、俺の役目は風牙衆と神凪の交渉だな
しっかし・・・・・・・
「相変わらず、自分のことにしか、働かない動かさない、ムラのある天才だな、お前は」
いつもその状態なら、天才と呼ばれているはずなんだが・・・・
自分の興味があること、友人や悪戯、戦闘にしか、発揮されないし、発揮しようとしないからな、こいつは・・・・
「どうでもいいことを考えても仕方ないと思うけどな」
いろんな意味で泣かせてくれる奴だ
ま、珍しい息子の頼みだ
聞いてやらないわけにはいかないな!
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第11話 合同訓練
二日目の予定
合同訓練の日だ
神凪屋敷内にある道場は五つある
神凪宗家の者が使う、宗家が住む一角の中庭に設置され、空調設備も万全な一番広い神凪道場
その他は分家である『久我』『結城』『四条』『大神』の名をつけた四つの道場で、いずれもその名の分家の住まいの近くに建てられてある
神凪屋敷は大人部門の出場者が使っている
子供部門の出場者は『大神』道場で訓練を行うことになっている
「死にやが・・ガフッ!」
「うらぁぁっ!!ゲヴォッ!!」
「ツィリャー!ビャボベッ!!」
少年がそいつに襲い掛かる度
次の瞬間には天井近くまで跳ね上がって・・・・・床に墜落する
さすがに突き破りこそしないがゴッと生々しいほどに痛そうな音を立てる
他にも床と平行して空を飛び、道場の壁に激突する
その吹き飛ばされた奴らには二つの共通点があった
一つは神凪の分家であること
もう一つは・・・・・
「いい加減、うっとおしい!」
「ぶびゃぁぁっ!!」
「べむべー!!」
訓練用の木刀で二人の少年の顔面を打つ
一人は地面に叩きつけた
頭が床と激突
反動で1mほど跳ね上がり、昏倒
もう一人は肘打を腹に打ち込み、後ろ回し蹴りで首を刈った
神凪和麻の方向へ飛んでいったが彼は軽く避けた
と、いうことは壁に激突して、漫画みたいに静かに地面へとゆっくり落下
「ったく、雑魚と戦っても得るものがないんだぞ?」
・・・・傲慢な台詞を吐く一人の少年
もう一つの共通点は彼、相沢祐一にやられた者達であることだ
どうやら、昨日の出来事は神凪・・・ひいては屋敷にいるほぼ全員に知れ渡ってしまったらしい
ここぞとばかりに『相沢』を責め立てる者達がいたが真実を知られて困るのは『神凪』
『相沢』を責め立てる者は一人もおらず、逆に『神凪』へねちっこい矛先が向いた
だが、その代わりとばかりに『相沢』の・・それも子供、つまり祐一や武達が狙われている状況だ
向こうの方で智代や乙女が囲まれながら戦っている
・・・・・・いや、でもなぁ・・・・
状況は確かにその通りなんだが・・・・・・・・・
はっきり言って分家の連中が10人や20人集まったところで烏合の衆
能力の使用を制限されているこの状況下では100人集まったところで祐一達に勝てるはずもなかった
さらにメンバーが相沢祐一を筆頭に鉄乙女、坂上智代、白銀武、七夜志貴、式森和樹、石蕗紅羽、八神和麻と豪華メンバー
祐一や志貴は完全なスタンドアロン、単独で敵を薙ぎ払う
乙女と智代、武と和樹、紅羽と和麻はコンビを組んで敵を確実に仕留めている
瞬く間に数が減っていき・・・・・・
30分もすれば、ほぼ全ての相手が死屍累々とばかりに道場の外へ放り出されていた
殺してはいないので死血山河こそ築けなかったが小さな堀程度に積み上げられた神凪連中
その他のメンバーは唖然としながらその光景を眺めるしかなかったという
そして、掃除が終わると、訓練再開
祐一は最初に志貴、和樹、和麻、紅羽・・・・・ここで知り合った者達と一通り、手合わせを済ませた後、端っこの方で休憩に入っていた
破道≠ナ生み出した水と氷を手持ちの水筒に入れ、グィと飲み干す
「はぁぁ・・・・・生き返る〜」
冷たい水が咽喉の奥を通る
火照った身体が一気に冷やされ、チョー気持ちいい
その冷水で湿らせたタオルで両目を覆い、壁に凭れ掛かる
体力がグングン回復するのを感じるがそれはただのまやかしだ
筋肉が休憩状態に入っているだけで疲労は取れてはいない
ま、そんなことはどうでもいい
(あ?なんだ?)
壁に凭れ掛かるとズボンにかすかな違和感を覚えた祐一
ポケットの中に何か入っているようで体勢を変えて、ポケットの中に手を突っ込む
指先に違和感の正体が当たり、人差し指と中指で掴み取り出す
「ああ・・・・これか」
掌の上で転がる赤い球体
そう、これは昨日倒した灼熱の巨人の核とも言うべき物
あの後、冬香さんに回復してもらいながら聞いたのだがどうやら、あの辺りに結界が張ってあったらしく、空さんでも中の様子を見られなかったらしい
どうやら、トドメにはなった絶王呀斬≠ェ結界を撃ち破り、俺達の存在に気付いた空さんが他の皆を連れて、迎えに来たらしい
その時、現場に落ちていたこれも持ってきた様子
コレの正体は未だに解明不可能
魔導具系に詳しい『式森』に解析を頼んだが何の変哲もない宝珠だとか
で、俺の下に帰ってきた
捨てるには勿体無い上に、これがあれば、またあんな巨人と戦えるかもしれない
だったら、持つ理由はあれど、捨てる理由はどこにもない
閑話終了
「あ!危ない!!」
祐一の近くで訓練を行っていた少女の木刀が弾き飛ばされ、祐一に向かう
回転しながら飛来する木刀
完全に両目を覆われて視界の無い祐一
このままでは激突すること間違い無し
ガンッ
だが、両目を塞がれていた筈の祐一は飛来してきた木刀に反応
床に伸ばしていた足を振り上げ、木刀を真上に蹴り飛ばす
しかし、忘れてはならない
紅羽の力《重力》の名の通り、地球には重力が存在し・・・
当然ながら、真上に投げられた物は真下に落ちてくる
ガンッ♪
「あだっ!」
脳天直撃
しかも、先端
これは痛い・・・・・
格好悪いぞ、間抜け
「し、しくった・・・・落ちて来るのを計算に入れてなかった・・・・」
木刀を飛ばしてしまった少女は二つの意味で唖然としていた
と、ようやく眼を覚まし、祐一に駆け寄る
「大丈夫!?」
「まあ、智代の中段蹴りに比べれば、撫でられたようなものだ・・・・だが、痛い」
もしかするとそのまま、当たったほうが痛くなかったのかもしれない
そう思うと、微妙に遣る瀬無さを感じる祐一であった
「ん?あんた、誰?」
祐一は明らかに自分より年上そうな少女にタメ口で名前を聞く
少女は年下に嘗められていると感じたが悪いのは自分、しかも一方的に
怒れずに彼の疑問に答える
「うちは神咲薫言います。相沢祐一君」
青い髪で鋭い眼の少女、神咲薫
祐一は彼女のことは知らないのに、なぜか、彼女は祐一のことを知っている
「なんで、俺の名前を?」
「うちらより年下で大人部門に出るあんたを知らんわけがなかと」
そういや、そうだったなと祐一は今更ながらに思い出した
立て続けに起きた小さくない出来事とやらなければならない大事のおかげですっかり頭から抜け落ちていた
祐羅と戦って、(祐一にとっては)激闘の末、ようやく手に入れた資格なのに
「ま、いっか・・・・ほら」
拾い上げた木刀を投げ渡す
薫はうまく、柄の部分をキャッチし、ブンと振って具合を確かめる
一連の動作は様になっており、何度も繰り返したことのある動き
(へぇ・・・・・)
祐一の瞳が細く
悪い癖発動
少し強そうな相手を見つけるとこうなってしまうのだ
即座に神咲薫を分析
(・・・・身体能力的には留美奈とほぼ同等、剣の腕は・・・・武の少し上辺り、霊圧は大した事ない。霊力量も舞以下)
分析終了
結果、下の上
つまるところ、それなりだ
「よっし!」
勢いよく立ち上がりる
手には木刀が二本握られていた
「いっちょ、やってみるか」
その二本の切っ先が薫に向けられる
唖然とした薫だがあちらもニヤリと笑い、木刀の切っ先を向け返してきた
「相沢の子鬼・・・見せてもらうたい、その強さば」
互いに霊力を使うもの同士・・・・・戦闘開始!
「やぁっ!」
可愛らしい発生とは裏腹に鋭い踏み込み
一足で祐一を攻撃可能範囲に収めると木刀を右薙ぎに一閃
左の木刀で受け止め・・・ずに弾き上げる祐一
同時に相手の右側にしゃがみながら回転移動
回転力を利用し、逆手に持った右木刀での殴りつけるような斬打
狙うはがら空きの脇腹
「きゃっ!」
直撃
ある程度、手加減はしたが戦いにおいては容赦のない祐一
何せ、平時はダダアマの超溺愛する最愛の妹にすら訓練時は相当厳しいくらい
そんな彼と戦っているのだ
痣くらいですめば御の字
「ぁ・・・・くっ、こんぐらいでぇ!」
薫は脇腹を押さえながら立ち上がる
人並み以上の根性はある様子
木刀を正眼に構え・・・・
「せいっ!」
またもや、真正面から突進する薫
祐一は呆れながら迎撃法を決定
右木刀で受け流し、左木刀を首筋に叩き込む
それで、終わり
「よっ」
祐一はシミュレーション通り、唐竹割りを受け流す
前に踏み出そうとしたとき
追の太刀・疾
刃が翻り、右斬上へと変わる
そのキレは鋭く
(間に合え!)
攻撃を中断し、左木刀を胸の前へ急いで持っていく
ガッ
どうにか間に合った
だが、左木刀は大きく、弾き上げられ天井にぶつかった
突き刺さるほどの勢いはなく、柄が当たって、動きを止め、重力に捕まる
しかし、二人は落下してくる前に次の行動に移る
閃の太刀・弧月
薫はさらに斬り返し
側面から見れば、三日月形の斬跡が見えたことだろう
一撃目の唐竹割りより、さらに強烈で鋭い斬撃
「なめんな!」
闘牙紋
斬撃同士が激突
振り下ろされた真っ直ぐな斬撃
と
振り上げられた斬上、対象との激突と同時に峰へ掌底を打ち込む強烈な牙撃
バギャンッ
勝負は一瞬で決まった
木刀の刀身が砕け散り、宙に舞い散る
振り下ろし切った薫の木刀は今や、祐一の得物である小太刀よりも短くなってその手に握られていた
だが、祐一の刀身も同じくらいの長さに変形している
結果から言おう
閃の太刀・弧月≠ニ闘牙紋≠フ激突は・・・祐一の勝利
だが、結果的には相打ち
祐一の木刀は完全に薫の木刀を砕いた
しかし、祐一の木刀自体も闘牙紋≠フ威力に耐え切れず、自壊
だから、結果的には相打ちなのだ
これで、双方の得物は無し・・・・・のはずが
立ち上がって距離をとり、徒手空拳に切り替えようとした薫の首筋にいつの間にか木刀が添えられていた
「なん・・・・で」
少し首を圧迫されているので声が詰まる
「上がったなら落ちてくるのは当然だろう」
薫はその言葉で理解した
この木刀は追の太刀・疾≠ナ弾き上げた木刀
落下してきたのをキャッチして、今の状況に至る
「俺の勝ち」
俯く薫が顔を上げるとそこには満面の笑顔で木刀を玩ぶ祐一がいた
その笑顔に少し心を持っていかれそうになったのは薫だけの秘密だ
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
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