風とは大気の流れである

吹き抜ける風

ただ速く流れる疾風

力強く、如何なるものも薙ぎ払う烈風

気紛れな突風

静かで汚れ無き清風

優しき癒しの微風

何者も寄せ付けない竜巻の旋風

切り裂く鎌鼬の斬風

熱きものを覚めさす涼風

弾け、叩きつける爆風

荒々しき傍若無人な嵐の如き暴風

吹ける風向きに向かいし者全てを祝福せし追風

逆巻き、行く手を阻む逆風

いと暗き怨念渦巻く陰風

風の本質は『自由』

何者にも縛られず、何者にも縛られない

故に彼らに善悪は無く、誰の追い風となり、逆風ともなり、また誰にも靡かない

そして、如何なる風も大気の流れにより起こる

ならば、流れは何が起こすのか

神か?
是であり否
人か?
是であり否
自然か?
是であり否

風は『世界』が起こすもの

ならば、今一度問おう

『世界』はなぜ、風を起こすのか

答えは誰にもわからない

『世界』の一部たる者達では『世界』を知ることは不可能

なぜなら

『世界』は完全であり不完全なのだから


──真界原典(ゼ・ヴァイヴァリィ・オージュナル)第参章(ザ・サード)世界の欠片(ファーガント・オーリー)弐拾捌節(ペグ・トルエーハ)参照





(だれ)よりも()(だか)(つよ)く、そして・・・


第1章  第10話         
吹き抜けるは蒼き風






「んじゃ、部屋に戻るか・・・さすがにもう治まってるだろ」

何が治まっているか

読者の大半は忘れているだろう

乙女と武の存在を・・・・

もともと、和麻との出会いも彼女達のおかげと言えなくもない

「すっかり忘れていた」

「ひどいわね・・・私もだけど」

祐一以外、誰も覚えていなかったらしい

ひどい話だ

「和麻も来るだ・・・!?」

祐一は何か、嫌な予感を感じ取り、周囲を見渡す

こと、そういうことに関しての祐一の予感はまったく外れない

さすが、《直感:A》スキル保有者・・・酷似スキル《心眼(偽):B+》も備えていたらしい

最近では《心眼(真):E+》も身につけている

が、それがわかっても回避できるかは別問題

「なんだ?」

一回転二回転・・・独楽ほどではないが、何度も回転して、その違和感の正体を探す

「どうしたんだ?」

「祐一?」

「・・・・・・・・・」

智代と紅羽は何も感じないらしく、祐一の様子を不思議がっている

和麻は何か、感じているらしく、祐一と同じく辺りに視線を向けていた

「おい、あれ・・・」

そして、何か、見つけたらしく、和麻は上空のソレを指差す

他の三人の視線がソレに集中

ソレとは・・・・紅蓮の炎の如き、真紅色の宝珠

大きさは直径5cmビー玉より一回り大きい程度

羽のように空からゆっくりと落ちてきた

そして・・・・・

「炎が・・・」

「・・・集まる」

中庭のあらゆるところで燃えていた木々の炎が宝珠に吸い込まれる

炎だけではない

祐一達にはわからないがその場に重吾や厳馬がいれば、宝珠がどういうことをしているのか、わかっただろう

炎の精霊までも宝珠に吸い込まれているのだ

その輝きは神凪宗家の炎に匹敵する

周囲の精霊を全て吸収した宝珠はその姿を変える

それはまさに狂える炎の巨人

そう呼ぶに相応しい暴れ狂う炎を纏った人型の何か

体長は約5mの巨躯

筋骨隆々の巨人タイプ

そして、制御などという言葉はどこにもないようなただ放出されるだけの莫大な炎

地面を舐め回し、中庭の芝や木々を焼き尽くす

被害は甚大だ

そして、何より重用なのは紅き巨人が放つ威圧感は中級妖魔以上であることだ

「智代!和麻と紅羽を連れて行け!」

祐一は斬魔刀小太刀を二刀とも抜刀

炎の巨人に向かって、疾駆

「こいつは・・・俺が斃す!」

小太刀式(こだちしき)斬術(ざんじゅつ)
空刃閃(くうじんせん)(れん)

虚空に二刀を振るうこと八度、総斬撃数は16

その軌跡より発生する霊氣を帯びた空翔ける真空の刃

鉄すら斬り裂く空刃が炎の巨人に襲い掛かる

着弾・・・・直撃だ

だが、真空の刃は巨人の体を構成する灼熱の炎に焼き尽くされる

しかし、相手を見れば、そうなることは誰にもわかっていた

ましてや、鬼才相沢祐一がわからぬはずもない

すでに小太刀を二刀共、鞘に収め

右の手は鯉口を、左の手は左の鯉口を切る二刀流特有の構え

波濤(はとう)(しろ)
(うず)(よる)()らす(こう)(げん)(ゆめ)


小太刀式(こだちしき)斬術(ざんじゅつ)
瞬天殺(しゅんてんさつ)

詠唱を口ずさみながら、超瞬速移動

巨人に僅かばかりの反応すら許さず、接近し

神速の四閃弐穿

正中線と四隅線を全て斬り、その交錯する点と眉間を穿つ

それを一瞬のすれ違い様に実行する

()(くだ)(さば)きの(しん)(ぱん)(しゃ)()(かざ)す」

そして、詠唱も完成する

掌を巨人に翳し

()(どう)二十一(にじゅういち) 白劉(はくりゅう)=v

白き光の螺旋を炎の巨人に放ち、ぶち込んだ

バァアンッ

着弾・・・爆発

真空の刃で牽制、その隙に神速斬技、トドメの破道

問答無用の絶殺連技

低級妖魔なら確実に斃せている

「やったの!?」

まだ逃げていなかった紅羽が思わず叫ぶ

「まだだ!」

和麻は巻き起こる煙の奥で光る紅き輝きを見逃さなかった

巨人の炎が上昇気流を起こし、煙を吹き飛ばす

今まで無反応だった巨人が動き出した

そのスピードは初動作こそ、愚鈍なものだったが・・・

祐一に勝るとも劣らない速度で祐一に突進

「ッ!おおっ!」

横っ飛びで突進を回避

巨人は祐一のいた場所を通り過ぎたところで急停止し、炎の豪腕を振るう

トンボを切り、後ろへバック転

炎拳が地面を抉り、小さなクレーターを作り上げる

炎で構成された腕がグニャリと曲がる

決して骨折ではない

それは自身の腕の炎構成を解放することに等しい

逸早く気付いた祐一は高速詠唱し、左掌を突き出す

(かがや)(さえぎ)(まどか)
(かざ)()(まい)
()(どう)十一(じゅういち) 光守(ひもり)=v

巨人の右腕が爆発し、波のような炎が祐一を覆う

だが、翳した祐一の左掌の前に現れた光の盾が灼熱の波の進行を遮断

「くぅぅっ・・・」

炎波の威力にピシッと光の盾に亀裂が入る

斬魔流(ざんまりゅう)歩法(ほほう)
(しゅん)()

防ぐことは無理だと判断した祐一は即座に瞬速移動法で攻撃範囲外へ逃げる

この判断と思い切りの良さが祐一を今まで生き残らせている力の一つだ

しかし、攻勢に出ているのは祐一だが、戦況は祐一の劣勢だった




「クソッ、俺も!」

「私も行くわ!」

和麻と紅羽は走り出そうとする

だが、すぐに足を止める

「ダメだ!私達では祐一の邪魔にしかならない!」

「だが!」

しつこい和麻に智代は気絶させて、連れて行こうと手刀を打ち込もうとするが

そんな二人の間に何かが転がってきた

「祐一!」

そう、祐一だ

巨人の攻撃をかわしきれなかった祐一が吹き飛ばされて、そのまま、うまい具合に二人の間に転がってきた

「く・・・ペッ!」

なにやら赤いものが混ざった粘着質の液体を吐き出す

しかし、その瞳に燃え盛る闘志は些かたりとも萎えない

逆にさらに燃え上がり、巨人の炎よりも強大に感じられる

その瞳を垣間見た和麻は昔、一度だけ見た父親の炎を思い出す

炎術の最高峰(ハイエンド)神炎

だが、彼が見たその闘志は神炎≠謔閧熕竭蛯ノ、神秘的に見えた

「祐一・・・・なんで、そこまで戦えるんだ?」

自然と和麻の口から本音の疑問が漏れた

「あ?そんなの決まってるだろ」

祐一は巨人から眼を離さずに小太刀をぎゅっと握り直し、当然とばかりに

「俺は戦いが堪らないほど好きで好きで好きで好きで好きで好き(以降省略)だからだ」

ニヤリと笑いながら、告げ・・・

・・・続けて言い切る

「そんでもって・・・俺の仲間は誰一人、殺させやしないと誓ったからだ」

自分に起てた二番目に崇高なる誓い

そう和麻に返すと再び巨人に向かって歩き出す

和麻はじっとその背中を見つめていた

(でけぇ・・・・な)

それは物理的な大きさではない

相沢祐一という存在の器を和麻主観で表した言葉

まだ二桁の年月も生きていない少年の大きな、とても大きな背中

(俺も・・・なれるか?)

自問自答してみる

返ってくる答えはもちろんNO

当たり前だ

自身の素質を自分で見限って、逃れられない現実(神凪)から逃げようとした

祐一の環境は和麻よりずっといい

しかし、ソレは言い訳に過ぎず

逃げ出した自分が祐一のようになるなど、夢のまた夢

だが

(いや、違う祐一みたいにじゃない・・・・俺は・・・・俺だ)

和麻は祐一ではない

祐一もまた和麻ではないように

だから

「俺は俺になればいいんだ」

単純にして明確、明快にして真理

今まで悩んでいた炎術の才能(コンプレックス)のことなど、頭の片隅にも無い

「すぅぅぅぅっ・・・はあぁぁぁっ」

重い深呼吸をして、空気と共に全ての思考を吐き出す

頭の中を空っぽにして・・・・

(頼む・・・・俺に力をくれ)

今までの11年の人生の中で一番強く、一番に願った





(力が欲しい)


その願いは今まで何度も思った願望

分家の連中に炎で焼かれる度に思ったこと

(力が欲しい)


前は抗う力が欲しかった

虐待する者を叩きのめし、父親に認められる力が欲しかった

思い返してみれば、ずいぶんと不純だったと思う

(力が欲しい)

今、思えば、俺は初めからこいつら(、、、、)のことに気付いていた

ただ、俺の求めた力は・・・・炎

神凪に生まれた者が手に入れるべき必定の力

神凪であるために必要な絶対の力

そして、神凪和麻が一番欲しかった力

覚醒しないのも当然

こいつらを求めてもいなかった自分に力を貸してくれるわけがない

(力が欲しい)


だが、今は違う

誰でもいい、なんでもいい

俺に力を・・・・・

祐一を・・・紅羽を・・・・智代を・・・・・

初めて出来た仲間と呼べる友を・・・・・・・・

誰一人、欠かさない・・・守る力を・・・・・

力をくれ!!

(うん、いいよ)
(いいわよ)
(くれてやろう)
(OK〜)
(好きに使え)
(是)
(許可します)
(いいぜぇ!)

このとき

俺は彼らと初めて、一つになれた

今なら何でもできる

そう思えるほどの力を・・・・・発現、行使

大切な者を守るために!

「おぉぉぉおおっ!!!」

蒼き風よ

風の精霊よ

俺の力となってくれ




発現した蒼き旋風

次第に勢力は増し、旋風はいつか、竜巻へと昇華する

燃え盛る紅き巨人を包み込む

激しい気流に飲み込まれた巨人の炎がどんどん削られ、上空へと持ち上げられる

5mあった巨躯はすでに3m近く縮んでいた

「そのままだ、和麻!(最後のチャンス!逃がさん!!)」

和麻の力に驚いているのは紅羽と智代だけで祐一はすでに次の行動に移っていた

常時ならば、二人と同じような驚愕を浮かび上がらせただろうが一つのミスが死を呼ぶこの戦場において、そんな無様な真似はしない

小太刀二刀を重ね合わせ、ありったけの霊力を注ぎ込む

後のことも考えない背水の陣の一撃

紅羽に見せたアレを超える霊力量

一体、どれほどの威力になるというのか・・・・想像も付かない

下段に構えながら、視線は一直線に巨人を睨みつける

上空50mほどで滞空し、さらに上昇しながらもがく灼熱の巨人

牙刃絶壊(がじんぜっかい)

全身全霊を以って、最強の一撃を振り放つ!!!

絶王呀斬(ぜつおうがざん)=I!」

ズゴゴオオオガァァアアァッ

放たれた超霊の光牙は蒼き竜巻ごと、巨人を飲み込み

その存在を一塵たりとも許さず

完膚なきまでに消滅させた!!



続く


赤い色の宝珠は巨人に変化するなどオリジナル要素を加えていますが、文章からの説明でわかる人にはわかるでしょう。
この宝珠は後々、重要なキーアイテムにするつもりなのでこれからもよろしくお願いします

ちなみに《直感》《心眼(偽)》の二つの違いは前者が戦闘中など、次の瞬間に対して発動する即時タイプで、後者が《未来予知》に近いある程度、先の未来に対して発動するもの
そう私、高さ自由は考えている
間違えてたら教えて欲しい


Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


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