「へぇ・・・面白いわね」
その様子を遥か上空の彼方から盗み見る者が一人
口調からして女
黒いローブをかぶり、様々な力ある装飾品を所々に着けている
「ふふふ・・・コレを試すにはちょうどいいかもしれないわね」
懐の奥からある物を取り出す
親指と人差し指に挟まれ、出てきたのは・・・・炎のように赤い宝珠
「あまり強くても面白くないから・・・このぐらいでちょうどいいかしら」
女は高密度の魔力を2秒ほど、その宝珠に注ぎ込む
「せいぜい、楽しませなさい・・・・ぼうや達」
そして、紅き宝珠を彼らに向かって投げ捨てた
彼女と彼らの邂逅はしばし遠き宿命
終焉を巡る神世界の戦いはまだ始まってもいない
願わくは、彼らに悠久の幸せがあらんことを
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第9話 運命が邂逅させた戦
「どうした、無能者も焼けないのか、お前の炎は?」
炎をやり過ごした和麻は傲慢不遜な顔つきで蔑みの台詞を告げた
だが、内心では冷や汗もので・・・
(・・・危なかった・・・念のため、《風氣》も使っといて正解だったな)
守式・水聖・御風
霧纏
《水氣》と《風氣》の防御膜
二つを融合したのではなく、《水氣》の膜の内側に《風氣》の防御膜を張ることで炎は《水氣》が、衝撃は《風氣》という別の役割を持たせた防御術
和麻の年代でこうまで卓越した五行戦術を使える者は鶴子や景太郎、はるかぐらいだろう
「て、んめぇ、ぇぇええええっ!!!!」
その台詞でさらに激昂する透
周囲の温度がドンドン上昇する
陽炎が透の周りに出来上がり、その姿を揺らす
(そいつはダメだろ)
透自身は気付いていないだろうが姿が見え難くなるのはまずい
さっきはうまく防げたが次がうまく行くとは限らない
一秒のタイミングが勝負となるこのバトル
動作が見切れなければ、勝利は無い
《氷氣》を当たりにばら撒き、温度を低下させ、陽炎を抑える
すると・・・
「あ!・・・・和麻!!どこ行きやがった!!!??」
透が首を?げそうなほど、ぶんぶんと横に振り回し、和麻を探す
「何言ってんだ?」と和麻が不思議に思い、一連の行動を思い返すと・・・・
一つだけ、心当たりがあった
周囲の急激な温度の上昇下降
学校の帰りにコンビニで呼んだ○NE-PIECEの泥棒猫が砂漠の町で棘トゲ女相手にやっていた戦法
タイトルが微妙に伏字になっていないのはおいといて・・・
(蜃気楼か・・・)
おそらく、それは偶然
だが、それは和麻にとって、幸運
よくよく見れば、靄のようなものが見えるのだが怒り狂った透には見えないらしい
(一撃で決める)
この幸運を利用しない手はない
ゆっくりと、蜃気楼が崩れないように《風氣》を両脚に纏わせ、溜める
両腕には《水氣》を宿し、制御できるギリギリの領域まで溜める
後は、一足で透の懐に入り込み、全力の攻撃を放つのみとなった
(《風氣》は充分だな・・・・行「かぁずまぁぁっ!!!」!?)
決着の一歩を踏み出そうとしたところでその大声に気付く
意識を透に集中させていた和麻は振り向くことも出来ないがその存在をはっきりと感じていた
背後・・・正確には左後方5mから走ってくる分家の一人
蜃気楼は和麻の背後には作用されていなかったらしい
状態が状態なだけに対応は間に合いそうも無い
「くらいやが「お前の役目はそこじゃないぞ?」あぎゃぁぁああっ!!」
なぜか、とても痛そうな悲鳴を上げながら和麻の上空を飛ぶ分家のガキ
それを成した人物が祐一であることは和麻にもわかった
そして、何をしたかもわかった、わかってしまった
なぜなら、飛んでいった分家はある部分を両手で押さえ、究極の苦悶の表情を浮かべていたから・・・・
(・・・やりすぎじゃないか?)
シリアスな場面なのだがツッコまざるを得なかった和麻
だが、それは自体を好転させることにも繋がっていた
「そこかぁぁっ、和麻ぁぁ!!」
透が飛んできた分家に向かって全力の炎を放つ
憤怒に燃えていた分、視界が歪み、曇っていたらしく、敵か味方かも判別できていないらしい
「ぎゃぁぁっっ!!!」
憐れな分家のガキは炎に包まれ、地面へと落下していく
そして、落下仕切る前に・・・・
歩式・御風
疾風舞
正に風の如き、速さで大地を疾駆
一瞬と経たずに透の懐に入り込み
決着の一撃たる両掌を突き出す
拳式・水聖
震流掌・双逓
双掌底としての打撃+《水氣》を通して、相手の全身に衝撃波を与える必殺技
人間の体は60%以上が水で出来ている
この技は相手の身体の水分を使って衝撃を起こす対人用の技
別世界だと、とある精霊を使役して、似たような技を繰り出し、ある美人刑事とアメリカの有名ジャンクフードと同じ苗字を持つ炎術師一族の姫を一撃で熨すが、これが原型だ
ボオォッン
間抜けな爆発音を立てて、久我透は1mほど浮いた後、地面に倒れこんだ
打撃とは言ってもほとんどが衝撃に変換されている
人であるなら耐え切れはしない
「はぁはぁ・・・・ッ・・・やった」
和麻は研ぎ澄ましていた集中力を解く
張り詰めていた緊張感が取れたからか、全身の力が抜けたように地面にヒップアタック
Tシャツをパタパタさせることによって体温の熱を逃がす
「やっほ」
祐一が和麻に近づき、手を上げて一言
智代と紅羽も近づいてきた
「・・・助けてくれてありがとな」
「なはは、気にすんな。面白そうだったからな」
和麻は祐一の言葉に呆気に取られた
あれを面白そうな状況と呼び、首を突っ込むなど、正直信じられなかったからだ
「それが相沢祐一よ。そう理解しておけばいいわ」
紅羽が和麻の心を読んだかのような返答
同じ境遇で同じ出会いをした紅羽には和麻の思ったことがよくわかるらしい
驚いた和麻が紅羽の方に顔を上げる
「石蕗紅羽よ」
「坂上智代だ」
「相沢祐一だ、あんたは?」
祐一が手を差し伸べながら告げる
「神凪和麻」
その手を取り、一気に立ち上がる和麻
後にこれが神魔天壌を揺るがす者達の運命の出会いとされる
「ッ・・・・っと」
「お?」
立ち上がった和麻はいきなりよろけそうになる
それに反応した祐一が背中と肩を取り、支える
「悪い・・・(格好悪いな・・・これが実戦か)」
自嘲する和麻だがソレは無理もないこと
今まで組み手と一方的な虐めにしか、戦闘経験のない和麻
氣の消費も予想以上に無駄があった
あの程度を実戦と呼ぶには無理があるかもしれないが冗談抜きで死が確実に存在した戦場でもあった
その緊張感の圧による疲れが今頃圧し掛かってきたのだ
「初実戦の疲れか・・・気分はどうだ?」
「そうだな・・・・・・・・・・・・・」
和麻は一度目を瞑り・・・ふぅぅっ、と全ての肺の空気を吐き出す
同時に体に溜まった陰気も全て外界へ捨ててしまう
そして、再度、祐一に顔を向け
「悪くない」
「そっか」
二人は笑いあう
紅羽と智代は少し不満気味だったが和麻の言葉を聞いて笑う
そして、思い出してもいた
自分達の初めての実戦のことも・・・・
「お前は?・・・どうだった?」
「俺?・・そうだな・・・・・」
祐一は少し曇り気のある空を見上げる
目を瞑りながら思い出す
祐羅が補助に付いての、だ
内容は悪霊の討伐
だが、現場に行くと内容が遥かに違っていた
悪霊の旅団と低級妖魔の存在
依頼内容の難度は上級ランクにまで達していた
そして、祐羅が悪霊旅団、祐一が低級妖魔を担当した
「・・・・最初にしては破格すぎる相手でキツかったけど・・・」
強かった
祐一のレベルでは足りないほど、だった
悪霊旅団は個々の強さは低いが当時の祐一対複数戦闘をあまり得意としていなかったため、そっちを担当するわけにはいかなかった
そして、低級妖魔と対峙し、
「・・・・楽しかったな」
至福というのは上品過ぎるかもしれない
狂笑に似た、本当に楽しそうな笑みを浮かべる
和麻、紅羽、智代は一瞬、その笑みに魅せられてしまう
狂気を含んだ、周りを炎で囲まれたダイナマイトのような緊張感を与えさせる・・・そんな祐一の表情に、だ
続く
Shadow
Moonより
諸事情により、すみませんが感想は後日……
高さ自由様へのメールはこちらへ。
戻る 掲示板