「ん〜♪この雰囲気はやっぱりいいな」
乱入者その1、相沢祐一
「良い趣味とは言えないけどね」
乱入者その2、石蕗紅羽
それから、少し遅れて
「早いぞ、二人とも・・・」
乱入者その3、坂上智代
事件に臭いを(主にその1が)嗅ぎ付け、ここに参上
まあ、ギャグ風味はここまでにして・・・・
「手伝おうか?と、いうか、ここまで来たら拒否は認めないぞ」
「突然やってきて、いきなり何言ってんだ、この野郎!」とでも言いたげな和麻の視線を軽く無視して、切り出す祐一
訝しげな眼で見つめる和麻
(信用できるか?)
心の中で自問自答してみる
生まれてから2,3年経ってからの現在
歪んだ人生の過程で他者からの支援を無条件で受け取れるほど和麻は素直ではない
だから、答えは・・・・五分五分
判断要素が少なすぎる上にそんなことを考えている暇もなく適当に出したような答え
だが・・・
(相沢の嫡子とその分家、さらに石蕗の長女・・・随分、有名なメンバーだな)
和麻にとって孤立無援の現在状況で彼らの乱入
九死に一生を得る、とはまさにこのこと
だから、和麻は・・・
「信用していいのか?」
捻くれた問いかけ
祐一は一瞬、真顔になるが、すぐにニヤリと楽しそうな笑みを浮かべ
「信頼を付け加えても構わないぞ?」
「くっ・・・」
自然に、本当に自然に和麻の仏頂面に笑みが一瞬刻まれた
祐一と似たような笑みが
「なら、俺があいつを倒すから・・・」
和麻はボケーと突っ立っている久我透を顎で示し
「残りを頼めるか?」
「任せろ!」
祐一は勢い良く叫び、敵の露払いを引き受ける
智代と紅羽は軽く頷く
バトル開始だ
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第8話 露払い
「俺が3人やる。残りは任せた」
祐一が得物である小太刀二刀を抜刀
完全に戦闘状態に入ったことを表す狂笑を浮かべている
私はあの表情が好きではない
あの狂笑を見ていると祐一が祐一では、なくなるような気がして・・・・
ただ、祐一が猫可愛がりしている妹の千影だけはあの祐一も好きだと言っている
それを知ったときは少し悔しさを感じた
・・・ダメだダメだ、話がずれてしまった
とにかく、あの状態に入った祐一は少しまずい
勢い余って人を殺しかねない
笑い声ではないのでさすがにやりすぎることは無いだろうが・・・・
同時に少なくとも、相手は無事ではいられないとも・・・
まあ、運が無かったということで諦めてもらおう
手心を加える優しさは必要ない
「私のノルマは2人・・・・すぐに終わらせる」
この程度の相手なら始解は必要ない
さっさと倒してしまおう
「ふざけんな!!」
「相沢如きがなめんな!!」
私の言葉に激昂した連中が炎を放ってくる
炎球ではなく、薙ぎ払うように放射してきた
攻撃範囲が広がり、回避が困難だが・・・
その程度では、まだ甘い!
「はっ!」
地面を思い切り、蹴り抜き、大跳躍
迫り来る炎を飛び越える
視線をすぐ下に向ければ、直撃すれば大火傷を負いかねない赤い波が流れている
傍を通るだけでサウナ並の熱を感じる
熱い・・・・
二人と倒すのに汗をかくほどの手間は取らないが回避だけで汗をかいてしまった
後でシャワーでも浴びよう
跳躍方向に存在する攻撃状態のまま固まっているノルマの内の一人
空中で体勢を入れ替え、足を突き出す
「ばぶれっ!!」
飛び蹴りが顔面に直撃
回転しながら吹き飛ぶ神凪の分家
奇声を上げながら、茂みに突っ込んでいった
「武志!!」
吹き飛ばした奴の名を呼ぶ残った私のノルマ
どうやら、戦闘経験がほぼ皆無のようだ
それとも、援護しか、したことのない相当の間抜けか
だが、すぐに終わらせると言った以上、それは幸運になるのか?
その隙を狙わせてもらう
「はっ!」
裂帛の気合と共に放った拳
完璧なインパクトの感触
衝撃が散らされること無く、完全に入った
「バビュブロッ!!!」
一人目と同じように吹き飛ぶ
別の茂みに突っ込む
どちらも顔が凹んでいるはずだ
まあ、それはともかく
「ノルマ達成だ」
「二人か・・・・すぐ、終わるわね」
智代と似たような台詞を呟いて、相手を挑発
炎精の性質を考えるとあまり怒らせない方がいいのだが彼らレベルの雑魚ならば話は別だ
宗家レベルとなるとまた話が違ってくるだろうが彼らの炎なら軽くあしらえる
現にこれまで数度、炎を球体状にして、放ってきてはいるが全て重力で潰した
「くそっくそっ!なんでだよ、なんで俺たちの炎が!!」
「精霊王に選ばれた僕達が負けるなんてありえないのに!!?」
相手は驚愕しているが紅羽からしてみれば「何を驚いているのだろう?」と逆に驚く
それに神凪特有の二言目には「精霊王」が出てきた
冷静に考えれば、精霊王は彼らを選んでなどいない
炎の精霊王が選んだのは、神凪は神凪でも彼らの始祖たる神凪初代宗主だ
彼らは血脈による恩恵を受けているだけに過ぎない
もっとも、それを乱用する彼らが選ばれるなど六度の生涯をかけてもありえない
「飽きたわ・・・・終わりにしましょうか」
八度目の炎球を潰した所でポツリと呟いた
両手で何かを掬うように構える
その両掌の上には今までよりも強い重力が集束され、球体状に歪んでいる
重力球の危険度を肌で感じ取った分家二人
放たれれば、自分達が防げないことは大体わかったらしく
先に攻撃して、発動させない方法を選んだ
炎球は球体にするのに時間がかかるので放射する集束も圧縮も無い炎を放つ
それが紅羽の狙いだとは知らずに・・・
二人の炎が混ざり合い勢力を増して、紅羽を飲み込む
それはもう、あっさりと包み込まれ、今も燃え盛っている
拍子抜けした二人はしばらく唖然とした後
「は、はは、はっは!だ、だから、言ったんだ!選ばれし僕達が負けるなんてありえないって!」
「お前が悪いんだからな!!あんな無能の味方なんかするから!!」
乾いた笑いを上げながら責任転嫁の台詞を言い連ねる二人組
醜い映像だ
そうそうに終わらせてやってくれ、紅羽
「
燃え盛る炎の中からその声が響く
それほど大きい声ではなかったのだが沈黙がその空間を支配する
彼ら二人にはその声が地獄からの呼び声に聞こえた
それはいいとして・・・
その声が響くと同時に炎が勢い良く収縮していく
すると、炎の中から無傷の紅羽の姿が見えてきた
炎は紅羽の重力球に吸い込まれて・・・・歪んだ赤と透明が混ざった球体へと変わり果てる
これぞ、対半物質用無効化技にしてカウンターの前段階
紅羽は赤い重力球を彼らの元に飛ばし
「
炎が追加された重力爆撃
閉じ込められた炎と重力の解放
強大な爆発となり、辺りに吹き荒れる
当然ながら巻き込まれた二人は容赦無く、炎と衝撃を浴びて、吹き飛ぶ
まあ、死んではいないのでオールオッケー
「ノルマ達成・・・一人でもなんとかなったかしら?」
「せいぜい、足掻いてくれよ」
東京タワーほどに上から見た傲慢な台詞と態度
そんな彼、相沢祐一の相手を不幸にも務める3人
傲慢さでは彼らも勝るとも劣らない
・・・が、その根底を支える『強さ』の度合いは違いすぎる
3人を相手にするといったのは当然、相手の実力をだいたい見極めて、確信的な勝率があると判断したからだ
もちろん、自分が楽しみたいという理由が大半
智代と紅羽が女の子だから、なんて理由は欠片も無い
もっとも、それは彼女達が強いことをわかっているからでもあるが
「野郎・・・・俺ら神凪をなめんなぁぁっー!!」
三人一斉に炎を放つ
だが、融合はせず、三条の火線が祐一に向かって伸びる
躱すことは簡単
なら、祐一がその選択肢を選ぶことは無い
迫り来る3つの炎波をじっと睨む
何かを見極めるように・・・
そして・・・・・
「そこだ!」
鏡鳴閃
物事に筋がある
攻撃にも炎にも斬撃もそれは同じ
その筋を見切り、それに添った斬翔撃を放つことで攻撃を跳ね返す
イメージで言えば犬夜叉の爆流破
それを3連撃
全ての炎波を使用者に跳ね返・・・しはしない
あんなしょぼい炎なら誰一人倒せないことはわかりきっている
分家といえど、神凪の耐火能力は高い
しかし、それは・・・・3つの炎を3人に返したらの話だ
「うぎゃぁぁっー!!!!」
3人のうち、一人だけが炎に包まれる
何をしたかというと全ての炎を一人のみに絞って撥ね返したのだ
さすがに3人分の炎は効いたらしく、黒炭になるほどの火傷を負って、その場に倒れる
そうなっていようとまだ死んではいない
「まずは一人」
左手の小太刀を一回転させ、数える
残りの2人の顔が恐怖に染まる
炎を跳ね返し、あまつさえ、その炎で神凪であるはずの自分たちの仲間を一人倒した
恐怖が芽生えても不思議ではない
「おっし、うまくいった。連撃はあまり練習してなかったから心配だったんだがなんとかなるもんだな」
恐怖の魔人たる本人はケラケラと笑いながら、調子を確かめていた
「さてと・・・・」
今度は両方の小太刀をクルンと一回転させ、パシッとキャッチし、2人を視界に収める
睨まれた2人はビクッと体を震わせる
「まあ、三日は起きられないだろうが安心しろ・・・・・死にはしない」
はたして、どこに安心を抱けばいいのだろうか?とツッコミたくなるような台詞を吐きながら
祐一は2人に向かって突進する
「いい度胸じゃねぇか、和麻・・・一人で俺に立ち向かってくるなんてよ」
対峙する二人
いじめっ子といじめられっ子
表現としては無茶苦茶格好悪い
久我透は周りで戦う奴らを一度見て
「まさか・・・俺一人ならどうにかなるなんて思ってないよな?」
思い切り上から者を見た発言
実際、彼は優越そうに和麻を見下している
身長は透の方が高いので物理的にも精神的にもだ
少なくとも透自信はそう思っている
だが、和麻の方は違う
「よくわかったな。読心術でも覚えたのか?」
逆に相手を挑発
おどけて見せることでさらに効力アップ
「てめぇ・・・」
案の定、透は優越そうな醜悪の面を消し一瞬で顔を赤く染め上げる
「瞬間湯沸かし器?」
その言葉を言ったと同時にバックステップする和麻
さっきまでいた場所に炎が舐めまわす
透の爆発した怒りに任せて、放射したのだ
逃げるのが遅ければ、焼け焦げたタンパク質の塊が出来上がっていただろう
(挑発成功)
和麻は心の中でほくそ笑む
炎術師を怒らせるのは上のほうにも書いたが逆効果
だが、この場合は別
(決めるのは全力の一撃のみ・・・無駄な力は使えない。それ以外は全て回避)
次々と繰り出される炎球を避ける避ける
炎球はステップを踏むだけで避けられる
炎波は
攻撃しても倒れない和麻に苛立つ透
怒りによって攻撃力は上がっている透
だが、繰り出す攻撃を全て避ける和麻に苛立ちは積もるばかり
「うらぁぁぁっ!!!」
繰り出されたのは炎球
ただし、十個近くあり、大きさは拳大
(落ち着け、軌道さえ読みきれば避けられる)
精霊魔術は自分の意志が強さとなる
自分の意志で精霊を操る以上、他の魔術と違ってコントロールが利きやすい
上位の術者となると自由自在にコントロールすることが可能
だが透はまだ術者としては半人前
十個をコントロールなどできはしない
砲弾の如く、まっすぐ飛ばすだけだ
だから、簡単に避けられる
実際、軌道とその余波を読みきった和麻は悠々と炎球が通り過ぎるのを見送る
再び、透に視線を向けると・・・・笑みを浮かべていた
嫌な予感を感じ取った和麻は反射的に氣を展開
それも『火』の相剋『水』、《水氣》の防御膜
爆発が和麻を包み込んだ
「ひゃはははっ!!どうだ・・どうだよ、和麻!俺の力を思い知ったか!!」
炎球を爆発させるという戦術を取り、見事にそれを成功させた久我透
爆煙が撒き散り、彼の視界は遮られたが関係ないとばかりに大笑い
自分を侮辱した無能者を嘲り、大笑いを上げる
煙が晴れていく
そこにはボロボロになった和麻の姿を予想する透・・・・だが
「な、なにぃっ!?」
驚愕する透
それもそのはず、自らの予想に反して、ボロ雑巾でいるはずの和麻が・・・・
無傷でその場に立っていたからだ
続く
Shadow
Moonより
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