「いやぁ、中々、面白そうな展開になってきたねぇ」

祐一達を遠くから見守っている影が二つ

「ええ、本当に」

水瀬冬治、秋子夫婦だ

二人が見守り始めたのは祐一達が紅羽を見つけたときの少し前くらいだ

本当なら、紅羽を助ける予定だった二人だが・・・・祐一達の気配を感じ取り、手を出すのを止めた

「出会いは大切ですから、祐一君の年頃には特に」

子供にとって他者との出会いは貴重な体験

人はそれぞれ違う価値観、身体、環境、人生、運命、宿命、信念、魂を持つ

世界のどこを探しても同じものは存在しない

クローンであっても平行世界の同一人物でもそれは同じ

酷く似ている『酷似』でも、まったく同じである『同一』ではない

故にそんな他者との邂逅は自身と相手の世界を広げてくれる

それが成長するということ

だからこそ、二人は・・・・

「うん、大人が関せず見守るのが一番さ」

祐一たちに任せ、自分達は観戦することにしたのだ

「ただですね、あなた」

「うん、どうかしたのかい?」

「祐一君、こちらに気付いていますよ」

「え゛っ?」

冬治は間抜けな顔で驚いた




(だれ)よりも()(だか)(つよ)く、そして・・・


第1章  第5話         
新展開!?







紅羽はその異景を最高にして最悪の特等席で見てただただ呆然とするしかなかった

(彼は認めてはいないが)自分の父であり石蕗最強の地術師でもある宗主、石蕗巌

彼の力は本物だ

いくら、自分の力が異質とはいえ、今の自分では彼には勝てないだろう

その証拠に殺気だけで完全に怯んでいるのだから

今日も父に殴られた

衝撃が頭の中まで突き抜ける

いつものように宙に浮き、硬い地面に叩きつけられた

その後、何度も殴られる

痕が残らないように内臓に衝撃を徹すやり方で、だ

まさか、こんなところに来てまでやられるとは思わなかった

再び衝撃、今度は腹を狙った拳撃

調節を失敗したのか、吹き飛ばされる

確か、背後には硬そうな柱があった

受けるであろう未来の激痛に身を固める・・・・・

だが、予想に反して痛みは無かった

それになにやら抱きかかえられているような感触

父?とも思ったがありえない

浮かせて叩きつけるなら片手で首をつかむだけで十分だ

恐る恐る瞳を開くと・・・私は抱きかかえられていた

自分より年下であろう少年に

それだけではない

その少年はこともあろうにその父に喧嘩を売った

ここにいることは少なくともこちらの世界に関係がある

だが、ただそれだけだ

そして、さらに彼は父を侮辱した

怒りはない、むしろ、あんなに侮辱された父を見てすっきりしたほどだ

だが、この少年は一体何なんだ?

なんで父に喧嘩を売る?

なぜ父の本気の殺気を受けて怯まない?

なんで少年の体はこんなに熱いのだ?

まるでマグマのよう

人の平均体温36℃を超える熱さ

それは祐一の戦意の現れであった

「小僧、後悔しても遅いぞ」

巌は地の精霊を集め始めた

だが、それはすぐに止めた・・いや、止められた

祐一が紅羽を抱きかかえたまま、構える二本の小太刀を見てしまったからだ

巌は眼に見えて驚愕し、その少年の正体を悟った

一瞬で虚空から創り出した小太刀二刀

それは斬魔刀

解放することによってその力を上げていく個別進化型霊刀

そして、自分ほどの殺気を平然と受け、逆に睨み返すほどの少年

「ああ、俺は自己紹介してなかったね。俺の名は相沢祐一、よろしく御願い致します、石蕗巌殿?」

さらにその幼い顔を狂戦士のように歪ませて片方の小太刀の柄に手を掛け、抜刀の構え

「それから、止めておいた方がいいですよ。この距離なら俺のほうが速い」

祐一は万が一を考え、できる限り最高の速度を出せるように体勢を少しずつ変える

相手に気付かれないようにするのは骨が折れる

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」

二人とその他は沈黙の世界を創り出した

祐一は内心、冷や汗ものだった

こんなことになってしまったからの焦りではない

相手は地術師、しかも宗家の宗主

抜刀術がいかに速いからと言って、片手だけな分、威力は下がる

必殺には少し心許無い


心境自体は巌とて同じであった

相手は子供と侮っていた

それは認めよう

そして、この状況もだ

抜刀術は速いが子供の一撃

多少、土を纏うだけで弾ける

そう思うが侮ってはいけない

相手は退魔最強と謳われる相沢祐羅の嫡男

二桁にも満たない子供ながら特定条件をクリアして今回は大人の術者に混じって参加することを許された異例

条件は低級妖魔を屠れるだけの力を持つ者

だが聞くところによれば、この少年は条件範囲を通り越して中級妖魔すら討ち滅ぼしたという

油断など、すれば死が待っている


二人は待ち・・・・・・・・そして、動く!!


バシャッ

前に大量の水が三人の上空に現れ、落ちる

巌はいきなりだったので反応できず、思いっきりかぶり、ビショビショになった

祐一はすでに攻撃態勢だったこともあり、そのまま、抜刀

小太刀式斬術(こだちしきざんじゅつ)

空刃閃(くうじんせん)(まとい)


刃で水を斬るのではなく、刃に纏わりつかせて、引き連れさせるという感じ

すると、降りかかってきた水が刃となって、庭の方に飛んでいく

空刃閃≠フ応用技でこれを習得すれば、水に限らず、炎や雷など半物質であれば、纏わせることが可能

ただし、石や岩、鉄などの物質は無理

本来は鬼道≠ノ使うものだ

水は祐一と紅羽には一滴たりともかからず、庭の地面に刃の傷跡が刻まれた

二人の殺意と戦意が一気に減少

体温も通常に戻った

祐一は小太刀を鞘に戻し、ある方向を見やりながら

「冬治さん、やっと手出しましたか」

最初からわかっていた口調

その言葉と同時くらいに登場する二つの影

「いやぁ、ばれちゃったね。私もまだまだか」

「ちなみに私はばれていませんでしたよ」

「うわ、それはないよ〜。私の立つ瀬がないじゃないか」

シリアスな場に合わない明るい会話が巌の耳に入ってきた

声のした方向を振り向けば、そこには水瀬冬治と水瀬秋子の姿があった

巌の岩のようだった表情に動揺の亀裂が入る

「水瀬殿・・・なぜ、このようなところに・・・・・」

微かに力んだ声で二人に問う

「偶然ですよ、石蕗の」

「ええ、偶然、石蕗殿が娘さんを殴り飛ばすシーンを見ていたんです」

そこまで知られていては、黙り込むしかない巌

下手に反論しては墓穴を掘るのがオチ

まず、相手が悪すぎる

神凪分家連中などの誘導するのが容易な連中ならどうにでもなっただろうが

水瀬家の宗主と元相沢家の卍解会得者、それに妙に頭の回る相沢家の次期宗主

上の三人が相手では・・・・

冬治は薄笑いを止めて真剣な表情で

「では、改めて巌殿・・・あの行為はどういうことですかな?」

鋭い目付きが巌に向けられた

巌は表情こそ変えないが瞳に焦りが移る

自分にとっては自分が行なった行為は大したことは無い

むしろ、いつものことだが第三者から見れば非はこちらにある

と、言うことは今、自分は非常に悪い立場にいる

力づくで脅すなんてことは不可能だ

たしかに五行相剋では『土剋水』の通り、相性はこちらに有利

だが、そんなもので勝負が決まるほどこの世界は甘くない

水瀬冬治は世界最強の水術師と言っても過言ではない

神炎の水版《神水》を使える唯一の男

さらに水瀬秋子

こっちのほうがむしろ問題かもしれない

《神水》の優劣を決められるのは同じ《神水》使いと言われている

だが世界には《神水》《神炎》に並ぶ、いや超える化け物たちが存在する

《卍解》使い

対峙する相沢祐一の父であり日本最強の退魔士【阿修羅王】相沢祐羅を宗主とする最強退魔集団と名高い『相沢』

秋子は祐羅の妻、【灼滅の女神】相沢夏海の妹であり、彼女と互角といわれたほどの実力者

そして、彼女らは自分よりも遥かに強い

力づくでのほうがよほど不利だ

それを分からないほど馬鹿では宗主は務まらない

巌はどうこれを切り抜けるか、思考するがいい案が浮かばない

「どうしました?早く答えてください」

冬治は巌の返答を急かす

まずい、と巌はただでさえ厳つい顔をさらに顰めた

「私個人の家庭的問題ですので口を挟まないで貰いたい」

そう答えるのが精一杯だった

だが、冬治にそんな言葉が通用するわけがない

「そうですか、では最終日の会議に全員の前で同じことを言ってくださるのですね?」

なんと、最終日の会議で言わせるつもりらしい

これでは巌に勝ち目はない

宗主としては甘すぎる神凪重吾、度を越す厳しさを持つ巌とは違う

優しさの中にも平等な厳しさを持つ『宗主』水瀬冬至

相沢祐羅や式森牙威もそうだ

当時も含めた彼らは宗主としての器は重吾や巌よりもずっと上だ

「冬治さん」

その時、巌の横から声が掛かった

誰かは言うまでもない祐一だ

「この件、俺に任せてもらえませんか?」

元々、俺が蒔いた種

俺が枯らせると冬治に視線で伝えた

冬治は多少驚きながらも祐一の気持ちと考えをくべ・・

「君がそこまで言うなら・・・わかった。君の好きなようにしなさい」

「ありがとうございます・・・石蕗巌殿」

冬治に礼を述べた後、今度は巌のほうを振り向いた

巌はピクッと眉を動かし、祐一Fの顔を睨みつけるように見る

当然ながら祐一は動じなかったが

「俺と一つ賭けをしませんか?」

などと、のたまった

あまりに突飛過ぎてさすがの巌も戸惑う

だが、今までの経過でそれがどういう意味を表すのか、巌は理解した

これから目の前の生意気な小僧が言うことも読めた

「なるほど・・・貴様が勝ったら紅羽と仲良くしろとでも言うつもりか?」

巌は祐一を嘲笑するように言う

その目には『多少頭と口は回るようだが所詮は子供の考えること』と言っている

だが、祐一はそんな巌を逆に一笑し

「そこまで立ち入る気はありませんよ。ただ、俺が勝ったら紅羽さんの言うことを一つ聞いてください。負けたら今回の件は誰も見なかったいうことで・・・よろしいですか?」

言葉では疑問系で聞いているが目では断定の意を浮かべている

巌は内容が違ったことに疑問を浮かべたがすぐに消し去った

いくら強くともまだまだ子供

経験豊富かつ強力な術者である自分に敵う筈が無い

そんなことで今回の件が公にならないのなら幸いだ

巌は自分の勝利は揺るがない、と確信し顔を珍しく歪める

そう思い、首を縦に振って了解を示した

「では、貴殿が私と当たるまで勝ち残っていることを期待している」

「ええ、貴方こそ足許を掬われないように気を付けてくださいね。もっとも、それで言い訳は立つでしょうが・・・」

巌の皮肉を祐一は同じく皮肉で返した

巌は一瞬顔を歪ませた後「ではこれで」と言ってその場を去って言った

ようやく、長かった二人の口撃での争いが終わった

冬治と秋子を除く三人は解放された気分になり、祐一の元へと向かう

祐一は巌が去った後、小太刀を消して、すぐさま抱きかかえていた紅羽のほうに振り向き

「回復系の術者を呼びたいんだけど、大事にはしたくないからこれで我慢してくれよ?」

霊力を集中

淡い銀光が祐一の掌に宿り、その輝きを増していく

(あわ)(ひかり)はいと(やさ)しく (かな)しき(きず)(ふさ)()め (こころ)(とも)(いや)されよ

()(どう)十一(じゅういち) 來祷(らいとう)=v

パァァッと優しい光が紅羽の傷を癒す

数秒で紅羽の頬の腫れが引いた

紅羽の、巌に殴られたダメージ箇所に手を当て、氣での治療を行ない始めた

内氣功は得意だ

だが浸透系ダメージなので傷は小さい分、骨と内臓に響いたダメージは取り除きにくい

眼に見えての効果はないがゆっくりじわじわと紅羽の傷が癒えていく

「祐一君、代わろうか?」

「いえ、そろそろ・・・・はい、終わりました」

冬治の誘いを断る前に傷の治療が完治

多分、これで大丈夫だろう

「それにしても良かったんですか?あんな条件で・・・」

秋子さんは心配するように言う

後は祐一の考えを聞いてみたいらしい

どう考えてあのような条件にしたのかを

「今更なんですけどね・・・所詮、俺と紅羽さんは他人じゃないですか。だから、さっきあの岩男が言ったように仲良くしてやれなんて言ったところで聞かないだろうし、俺が勝っても強制的に仲良く指せたようなものですか。そんなんじゃ意味が無い。だから、紅羽さんの口からどうしてほしいかを聞かせた方がまだ効果があると思っただけですよ」

特にあんな石頭系には、と付け加える

冬治と秋子はその考えに甘さを感じながらも感心する

志貴と和樹は「本当に子供、この人」と呆れていた

と、その時・・・

「どうして・・・・」

沈黙を保っていた紅羽が口を開く

その声は疑問と戸惑いと嫌悪と拒絶

「どうして、貴方は私を助けるの!?石蕗にとっていらない存在の私なんて助けても何も貰えない感謝もされない!ただ、化け物と罵られるだけの私を!?・・・なんで、貴方は化け物の私を助けるの・・・・・」

溜めていた怨念のような想い

紅羽は全て吐き出すかのように喋り続けた

久しぶりに・・本当に久しぶりの自分に向けられた優しさに反応したのだ

そして、外れた

悲しみや疑問、負の感情が閉じ込められた心の扉の鍵が・・・・

「お父様は一度も私を見てはくれなかった!ただ精霊の声が聞けないから!ただ異質な力を使えるから!!強くても・・・いくら強くても褒められない!ただ、化け物だと忌み嫌われ、蔑まれるだけ!!私が何したの、何もしてないでしょ!?」

紅羽は散々叫んだ後、祐一のほうを睨んだ

まるで親の仇みたいな憎しみと悲しみの篭もった眼で

「貴方だってそう!どうせ、私のことなんてなんとも思ってないんでしょ!頼んでもないのにくだらない正義感で私を助けたりしないで!!化け物の私を・・アグッ!」

「「なっ!?」」

志貴と和樹は祐一の行為に驚きの声を上げる

冬治と秋子は静かにその状況を見守っているだけだ

紅羽は最後まで言えなかった

その前に祐一に胸倉を掴まれたからだ

そして、祐一のその冷徹な瞳で睨まれたから

「言いたいことはそれだけか?」

無機質な・・・まるで機械のような声と口調

その声には怒りも殺意も戦意も闘志も無い

「俺に正義感なんてない・・・・そして・・・・・」

祐一はブンと片手で紅羽を広い庭に向かって放り投げた

いきなりの行動に紅羽は驚いたが蜻蛉を切って綺麗に着地

祐一の方を向くと彼もすでに庭に下りていた

「俺はあんたを化け物とも思わない」

(・・・・あの少年、相沢祐一はなんと言った
私は化け物じゃない?
何をバカな・・・・何をいまさらそんな)

「綺麗事を口にしないで!安い同情なんて真っ平ごめんよ!何も知らないくせに・・・」

噛み締めた歯

歯茎から血が出そうなくらい噛む

そんなくだらない言葉で私は・・・

「ああ、知らないね。それに同情なんて俺はしない。綺麗事も言わない。だけど・・・」

祐一は紅羽の言葉を肯定する

「だけど、もう一度言う・・あんたは化け物じゃない」

小太刀二刀を呼び出し、引き抜く

同時に霊力全開

小太刀に開放した霊力を集束させ、圧縮

「俺が知る一番の化け物はな・・・・絶大だった」

思い出すのは五対十翼の神魔天使

魅入ってしまったあの絶壊の一撃

今でも鮮明に思い出せるあの光景

凄いと思った
羨ましいと思った
惚れたと思った
愛してると思った

だが何より・・・・・・

あの高みに到りたいと思った!!


「猿真似程度だがな・・・・見せてやるよ。化け物クラスの一撃を!!」

小太刀同士を合わせ、振りかぶる

睨んだ先は快晴の空

ちょうど上に巨大な入道雲がある

「秋子さん、結界、頼みます!!」

返事はなく、5秒後、祐一を中心に半径3mの上空に伸びる円柱型の結界が張られた

「オオアアァァアあッッッ!!!!!!」

巨獣のような大咆哮

同時にその刃を振りぬいた

絶王呀斬(ぜつおうがざん)=I!」


ズゴゴオオオガァァアアァッ

強大な霊力の牙が天に向かって放たれる

触れるものを破壊しつくす牙

青空に向けて放射されたそれは・・・・・

上空にあった大きな入道雲に風穴を開けた!!!



祐羅「!この霊圧は・・・・」

影行「祐一だと・・・・なんつぅ霊力だぁ・・・」

乙女「これは・・・・祐一」

武「なんだよ、この霊力・・・」

智代「祐一か!?だが、この霊力」

巌「な!??これは・・・あの小僧だと!?」

離れた場所で感知した者達の声



「おいおい・・・・冗談じゃないよ、これは・・・」

「あら・・あら・・・・・」

冬治と秋子もさすがに呆れている

冬治はその威力にだが秋子は制御力と放出量、そして霊力量に、だ

今の祐一の霊力放出量は自分に勝るとも劣らない

それは祐羅に相当近いということになる

小さなときから、並とは思えぬ潜在能力を秘めていたが・・・・まさか、これほどとは思ってもみなかった

「はぁはぁはぁ・・・・」

息荒く、疲労が激しい

最大の一撃を放ち終わった祐一は小太刀二刀を鞘に戻し、紅羽の方を向く

「俺が憧れ、目指している存在の技だ・・・・まだ10%ぐらいの威力だけどな。化け物っていうのはな。せめて、これの100%を余裕で撃てるぐらいの存在なんだ」

遠くのほうを見る瞳で祐一は紅羽を視界に収め

「な、化け物じゃないだろ、アンタ?」





続く

高さ自由のあとがき

旧作の文をかなり乱用して、作り直しました

少々、荒いかもしれませんが勘弁してください

これからの変更がかなり面倒ですががんばりますのでよろしくお願いします



Shadow Moonより

諸事情により、すみませんが感想は後日……


高さ自由様へのメールはこちらへ。

戻る  掲示板