誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第4話 新友〜新展開の予感!?〜
「それではまず、我々から退魔の報告をしたいと思います」
神凪が語り始めた
話したことは
現在の退魔の状況
依頼数と依頼成功率
退魔で犠牲となった者達の数
後は罪を犯した術者数とその処分
「依頼数は前よりは増えたようだが逆に成功率は減ったな、重吾殿」
「それにいささか処分が甘すぎるのでは?この者など、故意に一般人を殺しているのだぞ!?」
誰もが批判をする
それはそうだろう
神凪の・・・極少数(重吾、厳馬、和麻、綾乃、煉、雅人、数人の子供辺り)を除いた者の大半が多くの犯罪を犯している
妖魔の途中で犠牲になった者ならば─仕方ないでは済まされないが─そういうことも少なくない
妖魔が強ければ尚更である
だが、彼らは違う
そのことを重吾は側近の周防を使ってそのことを調べた
報酬とは別の違約金を迫ったり、それを渋った依頼主を殺したり・・・
妖魔を倒すついで村を壊滅させたりなど
その他もろもろの犯罪
だが、重吾は改心してくれることを願い、死罪にまではしなかった
せいぜい謹慎程度だったのである
これではあまりにも軽すぎる
だが、それによって生じた弾劾の言葉も驕り高ぶった者達の心へは届かない
「黙れ!儂らは精霊王に選ばれた神凪一族だぞ!その我々がしている事が正しいものに決まっておる!」
頼道は声を荒げて傲慢な台詞を言い放つ
「父上、何を言っているのです!?この結果では我らのほうが・・」
重吾が頼道を正そうと声を上げるが頼道は
「黙れ、重吾!儂の言っている事が正し「少し黙っていただけませんか」厳馬、貴様・・・」
頼道が怨みの篭もった怨念の視線を近くにいる男に向ける
神凪厳馬
頼道の甥でありながら彼は頼道のことを非常に嫌っていた
頼道は無能で退魔の仕事も青年のころからしておらず、ただ屋敷の中で宗主になるために頭を使っていただけ
他には有力な術者を蹴落とすために必要なところで書類の改竄を行なっていた
それが原因で神凪の有力な術者が相当死んだり、破門されたりで戦力低下に繋がっているのは言うまでもない
「貴様、先代である儂の言葉を無視するきか!!」
ギャースカ、わめく頼道を一蹴するように
「今更、貴方に何の価値があるとでもお思いですか?」
何の遠慮もない侮蔑を浴びせた
祐一はちょっとだけ厳馬のことをすごいと思った
よくもまあこれだけの人数の前で公然と侮辱できるものだ
しかも、自分の伯父を
「貴様!」
頼道は表情に憤怒の表情を浮かべるが飛び掛るような真似はしなかった
厳馬より長いときを生きてはいるがこの男と頼道との術者としての差は歴然
まさに月とスッポンだ
神炎使いである厳馬に勝てるはずもない
だから
「重吾、この無礼な男をさっさと追放しようと常に言っておろうが!先代を侮辱するような輩など神凪に必要あるまい!!」
何を言っているのだろうか、この男は・・・
ここにいる誰もがそう思った
どちらが必要かなんて考えるまでもない
頼道と厳馬
どちらが神凪にとって世界にとって重要かなど・・・誰もが即答できる
「父上!言葉が過ぎますぞ!!」
重吾が激怒して声を上げる
その後、分家たちに向かって
「先代はお疲れのようだ。下がっていただけ」
「重吾、貴様、儂より厳馬の言葉を信じるきか!儂の言うことこそが神凪にとっての・・・」
言い切る前に連れて行かれた
両腕をつかまれて連れて行かれるさまは情けないの一言だった
重吾は一度大きくため息をついたあと、全員のほうに振り向いて
「真に申し訳ありません!」
深く土下座をし、詫びた
その後は淡々と会議が続く
大きな問題もなく会議は終了したと伝えておく
書くのがめんどくさいわけじゃないよ
会議が終わると全員それぞれ各々の部屋へと戻っていった
多少知り合い同士が廊下で話しているという感じだ
そして・・・・
「改めて相沢祐一だ」
「式森和樹です」
「七夜志貴です」
三人は外に集まっていた
実声での会話は楽だし、声に出して相手に伝わるほうがいい
外廊下の手摺で屯う若き退魔師のタマゴ達
自分のこと、家族のことを三人は話し合った
それこそ、年齢にあった子供らしい会話
いや、この三人なら微妙に子供らしいとは言いがたいかもしれないが・・・
「そういや、志貴、遠野とやりあったんだろ?どうだった、強かったか【鬼人】は?」
祐一が志貴に問う
『七夜』『遠野』間の戦い
仕掛けたのは『遠野』からだと聞くが・・・詳しいことは知らない
相当な被害があったことだけは予想できるが
「うん、強かった。あの父さんを瀕死まで追い遣った相手だからね」
「へぇぇ・・・・一度、戦ってみたかったな」
祐一はこちら側の子供でも言わない様な台詞を吐く
まあ、あの紅蓮の大鬼を前にして、なおそんなことを言えるかどうかは別として
和樹と志貴は驚きながら
「祐一は戦闘馬鹿でしょ?」
「祐一さんって、戦闘狂ですか?」
二人揃って同じ意味の言葉を吐いた
それは褒め言葉ではないのだが祐一は
「おう!」
臆面もなく即答で肯定した
自分には恥じることがないと断言しそうなほど、爽快な返答
「「はぁ〜」」
祐一の返事に二人は呆れ、ため息をつく
相沢の者達でも一度はため息をつく、くらいだ
会って間もない二人なら当然の反応とも言える
「なんだなんだ?父さん達と同じ返し方するなよ」
しかも、自覚無し
余計に性質が悪い
「「はぁ〜」」
再び、ため息
(なんだってんだ)
祐一は憮然としている・・・・・と、その時
「・・・・か・・・・く・・・・・!」
「ん?」
「この声・・・」
並外れた聴力を持つ祐一と志貴の耳が微かに聞こえてきた声を拾った
「どうしたんですか?」
逆に二人ほど、聴覚が優れていない和樹はわからないままである
と、言うか、こんな二人と一緒にしてもらいたくない
この二人なら300m先の物音でも聞き取る
間違いではないことは理解している和樹だがそう思わずにはいられない
「行くぞ」
「うん」
「あ、ちょ・・・」
祐一と志貴は駆け出した
スピードは志貴のほうが速いので祐一に合わせるように
だが、彼らよりさらに遅い和樹は訳の分からないまま、二人の後を追う
駆ける三人とも、足音はほぼ無音
『廊下は走らない』の規則は破る三人だが『廊下では静かに』は守る三人であった
声の発信源は意外と近かった
屯っていた場所から直線距離なら50mほど先
建造物が邪魔で大体100m走ったくらいの体力を消耗したが
そして、目的地に到着し、入ってきた映像は・・・・
大男がその丸太のような腕が乙女と同じ年齢ぐらいの少女を殴り飛ばすシーンだった
志貴と和樹はあまりのことに呆然していた
だが、祐一は違う
祐一にとって他人は無価値、その存在が死のうが陵辱されようが興味は無い
なので、動揺は無い
しかし、妙な光景に興味を持った祐一の判断と決断は早かった
「間に合え!」
瞬歩
霊力による脚力強化しての高速移動法
紅羽が叩きつけられるであろう柱との間に入り込み、彼女を受け止める
女性特有のやわらかい感触といい匂いが鼻を擽る
「ふぅ・・・・・」
安心のため息をついて、即座に状況確認を急いだ
まずは殴った大男
その顔はさっき見たばかりで覚えていた
石蕗巌
地術師一族石蕗家の宗主
そして、少女のほうも見たことがあるような気がした
(たしか・・・・・そうだ。巌の娘の石蕗紅羽)
あの異常なまでの美しさには覚えがあった
だが、なぜ、巌は自分の娘を殴る
祐一は心の中でその疑問を反芻するが答えは出ないのでまず行動に出た
まだ呆然としている紅羽
彼女にとって、巌の暴力はよくあること
そして、石蕗宗家の長女であるにもかかわらず、宗家分家に関わらず、誰もそれを止めない
実際、宗主たる巌がやっているのだから止められる訳無い
止められる正義感やガッツを持つ者もいない
だからこそ、驚く紅羽
今まで彼女を助けた者は妹の真由美のみ
だが、石蕗の正常な術者である
紅羽に真由美に近づくなと言いつけ、真由美にも紅羽に近づくなと言いつけた
しかし、まだ子供だった真由美は自分よりも遥かに強い紅羽を慕っていた
巌は真由美を厳しく叱り、躾という名の暴力も加えた
自分を慕ったせいで真由美が傷付けられた事を知った紅羽は真由美を避けるようになった
そして、紅羽の味方は誰もいなくなった
少なくとも、この邂逅の瞬間まではたったの一人もだ
「何のようだ、小僧」
岩のように重く硬い声が響く
全ての敵意を祐一に注がれ、
だが、それでも祐一は怯まない恐怖しない揺るがない
普通の一般人や石蕗の分家程度ならその視線に耐えられないだろうが睨まれたのは祐一
下位とはいえ悪魔と対峙し、中級妖魔を倒した祐一ならこの程度、何の効果もない
「何、ちょっとした暇潰しだ」
まっすぐ睨み返してやった
周りの空気が軋む
どちらも眼を逸らさない
逸らしたら負けだ・・・って、それじゃ獣だ!
片方は獣のような性質を持ち合わせてはいるが・・・・
「暇潰しだと・・・・ふざけているのか?」
「失敬な・・・俺はいつでも真面目だ」
乙女や武達がいれば、嘘だと断言するだろう
志貴や和樹はまだその本性を完全に掴みきれていないのでわからないが・・・
(どの道、確信犯だということには変わりないな)
(同感です)
完全にではないが大体は掴み取れているらしい
「躾の途中だ。人に見せるようなものではない」
「殴って言うこと聞かせるか・・・・相当古い人間だな。言葉で諭す方法を知らないらしい」
言葉の裏に無知を込めて、馬鹿にしたように笑う祐一
見ず知らずのガキに諭されて、額の脈がピクリと動いた
顔にも多少赤みが差し、怒りを溜め込んでいる状態
爆発する確率はまだ27%
「他家の方針に口を挟まないで貰おう。アレをどうしようと私の勝手だ」
「おまけに人を物扱いだ・・・・石蕗殿は一度、人の道を学ぶべきだ・・・そう、幼稚園まで戻ったらよろしかろう」
爆発確率が84%にまで上昇
加えて、鼻で笑ったのでさらに上昇し、91%
「ッ!!」
巌の顔が見る見るうちに変わる
爆発寸前の99.96%
顔が赤くなりだし、今度は長く放置された血のようにどす黒く変化
決して、恥じたのではない、相当に怒っているのだ
(祐一、お前ほど凄い奴を父さん以外に見たことないよ!)
(祐一さん、あんた本当におかしいよ!!でも、格好いいです!)
二人はそんな感想を心の中で叫んで、感動していた
巌は全開の殺気を祐一に向けた
建造物が殺気で軋む
四大退魔『石蕗』家宗主の名に恥じぬ貫禄
それに呼応するかのように土の精霊が騒ぎ出す
巌から半径数メートルに局地的な地震が起きる
祐一は膝を下ろして紅羽を抱いているために問題ないが和樹は思わず倒れる
志貴はその超人的なボディバランスで耐えている
そして、全開の殺気においては志貴と和樹も怯ませるほど
しかし、祐一にはまったく効果が無い
(こやつ・・・・何者だ?)
片や、意外なほどに冷静な少年を身長に観察する
(くくく・・・・こいつは楽しませてくれそうだ)
片や、イカれた
激突は必至でその時は近い・・・・
続く
Shadow
Moonより
神凪の前当主…… また居たのですか(核爆)。 現当主も父親には少々甘いようで(苦笑)。
父の愚行を見て見ぬふりをし、いつか更正してくれると甘い考と思いつつも願っていたのでしょうか?
さてさて祐一君、いきなり揉め事に首を突っ込んでしまいました(笑)。
普通なら親子の問題だと、自分に周りに言い訳して、相手が怖いからという本当の理由を誤魔化して見て見ぬふりをするのでしょうが。
家庭内暴力の真意が気になりつつ、次回も期待してお待ちしています。
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