電車に揺られること五時間
途中、電車を乗り換えること三回
ようやく、目的地に着いた
東京の中心部にある大きな屋敷
『相沢』の屋敷のように貫禄を持った歴史がありそうな木造の邸宅
規模で言えば『相沢』のほうが遥かに広く、大きい
その分、ある場所がちょっとだけ田舎だが・・・・
こっちは首都東京に建っている
うらやましくなんかないぞ・・・・多分
空気は汚いし、人ごみも溢れているからな
「では、行くぞ」
祐羅の声を聞き、皆動き始めた
誰もがその足取りは重かったと伝えておく
誰よりも気高く強く、そして・・・
第1章 第2話 いざ、神凪へ
「貴様等、何者だ!」
門番らしき神凪の術者が高圧的な態度で突っかかっていく
初対面ではないのだが少なくともこの男は祐羅達を知らないらしい
祐羅は無礼な態度の術者だが取るに足らない小物と取り、名を名乗った
「私は相沢家宗主相沢祐羅だ」
「!?こ、これは相沢の方々でしたか!そうとは露知らず、申し訳ありません!!!」
名前を聞いた瞬間、掌を返したように下手に出る男
額には蝦蟇みたいな脂汗をかき、土下座までしてきた
ここまで態度が急変すると呆れるしかない
それに、いつまでもこんなところにいたくないと思ったのか
「よい。それよりも部屋に案内してくれ」
祐羅は男にそう告げた
男は全身の力をフル稼働し一瞬で立ち上がり
「は、はい!ささ、どうぞ、こちらへ!!」
中へ招き入れる
途中で召使らしき女性に代役を任せた
そっちのほうが良かった
むさ苦しい、しかも神凪の術者に案内されるよりも女性に案内されるほうが数百倍はましだ
その場にいた一行は全員そう思っていた(特に男性陣)
案内された部屋は離れの方だった
ぞんざいな扱いだとも思ったが別段問題はない
むしろ、こっちのほうが良かった
廊下を歩けば、すぐ神凪の術者に顔を合わせたくない
「いい部屋だね」
祐一は部屋に入った途端、感想を述べた
『相沢』に当てられた部屋は6
部屋はそれなりに広く、今日のために掃除したようで綺麗だった
部屋割りは祐羅と影行、冬香と塁、闘夜と空、祐一と武、乙女と智代となった
残りの一部屋は後から来る人用にだ
荷物を置いた後は一番広い祐羅と影行が泊まる部屋に集まった
これからのスケジュール確認だ
退魔連合会議は十日ある
最初の一日は会議のみ
まずは全員の自己紹介から始まり、各々の戦果を報告しあう(自慢とも言えない事はないが)
近況の状況を報告し合い、改善点がある場合、改善させる
二日目は合同訓練
自分達の技を見せ合い、刺激し精錬し合うのが目的だ
三日目から九日目までは全て試合に設けられる
これは大人の部門と子供の部門があり、子供は子供同士で戦い合う
決勝戦は、子供部門で八日目に行なう
そして、大人は九日目だ
決勝試合は試合場に入れるは二人のみ
その他の人々は術を使って離れたところから見るというものだ
そうしないと死人が出るからである
特に周りに・・・
結界などにも全力を注ぐがほとんどが無意味で終わる
ちなみに今回の出場術者は・・・・
子供部門出場者は一つの家ごとに3人まで
神凪からは神凪綾乃、神凪和麻、神凪咲耶
石蕗からは石蕗真由美、岩山勇士、岩山正幹
水瀬からは水瀬名雪、美坂香里、北川潤
斉藤からは斉藤徹、斉藤風華、羽鳥宗弥
浅神と巫浄は辞退
両義からは両義式のみ
七夜からは七夜志貴、七夜春歌、七夜香奈美
式森からは式森和樹、神城凛、杜崎沙弓
浦島からは、浦島衛、乙姫むつみ、浦島可奈子
神咲からは神咲薫、神咲葉弓、神咲楓
青山からは青山素子、灰谷真之、白井功明
相沢からは鉄乙女、坂上智代、白銀武
え?祐一はどうしたかって?
まあ、その疑問も当然だろう
「・・・祐羅さん、祐一の名前が無いんですが」
智代がもっともな疑問を言葉にする
その疑問にはその場にいた誰もが同感であった
だが、そんな面々に祐一はニコニコ顔である
祐羅は頭痛をしたような沈痛な表情でその疑問に答えた
「祐一は・・・祐一の試合はと大人部門だ」
「「「「「「んなぁっ!!?」」」」」
その場にいた誰もが驚いた
まさか・・・いや、いくら祐一の実力が高いとはいえ、まさかまさか、大人部門に出すとは思わなかったからだ
誰もが祐一の顔を見た後、祐羅のほうを凝視する
祐羅はその視線を受け止め、一度ため息をつきながら
「俺と祐一は今から三ヶ月前に賭けをした」
賭けの内容は言わなくてもわかるだろう?と視線で聞く
もちろん、と視線で答え、続きを促す
「条件はそのときから今日まで、一回でも俺に《始解》を使わせたら祐一の勝ちだ。んで、こいつは昨日、俺に使わせやがった」
祐羅は祐一を指差す
祐一は普段は調子に乗らないタイプだがさすがにこのときだけは得意気になる
満面の笑みだ
久々に見た本当に嬉しそうな笑顔に乙女と智代はそれを見て頬を赤らめた
「へぇ、すげぇじゃねぇか、祐一・・・祐羅に《始解》を使わせるなんてよ」
武の父、影行は祐一を色眼鏡無しに褒めた
元々つける男ではないが・・・
それはさておき祐羅に《始解》を使わせるのは並大抵のことではない
同世代で子供のころから共に鍛錬し続けている仲の影行は何回も使われたことはある
だが、それは相手が影行クラスの実力者だからである
祐羅の《始解》である〔星天虹麟〕自体それだけで他の者が持つ《卍解》に迫るくらい強力なのだ
正直言って《卍解》修得者以外に祐羅から《始解》を使わせるものなど十人に満たないのではないだろうか?
その中にまだ子供の祐一は入っているのだ
「宗主、私ではまだ出られないのですか?」
乙女が申し出た
確かに・・・乙女の総合能力は祐一と目に見えるほど激しい差はない
確かに武と組んで戦い負けたことはあるが総合的な能力では少し下というくらいだろう
斬術≠フ習得状況では圧倒的に祐一のほうが上だがキレと鋭さはほぼ同じ上に乙女には《始解》がある
霊力は劣り、鬼道≠ナの差は防御一辺倒の乙女に比べて、オールマイティーな祐一に分がある
だが、総合戦闘力では戦績を見てもわかる通り、祐一には遥かに及ばない
「無理だな」
祐羅はきっぱりと即答した
乙女は悔しそうに唇を噛み締めた後・・・
「理由を聞いてもよろしいですか?」
「乙女の実力は同年代の中でも『相沢』の中でも年齢から見れば高い、それは認めてやる」
祐羅は一度乙女を認めている言葉を述べた後
「だがな、本当の戦闘に到ったとき、お前じゃ、祐一には絶対に勝てない」
断言する
そして、乙女が何か言う前に続ける
「祐一には斬術、霊力、白打、鬼道、身体能力、歩法よりも大切なものを持ってる」
(祐一にはあって私には無いもの・・・・)
乙女には思いつかなかった
「それは・・・」
「それは果てる事無き闘争心と神憑り的な直感、そして勝利の方程式を編み出す驚異的な、戦闘のみに特化した演算能力」
簡単に言えば、『勝利を勝ち取るまで絶対に諦めない心』と『最適な状況を感じ取る未来予知にも近い直感』と『どうしたら勝てるかを瞬時に編み出す頭の回転の速さ』
もっと正確かつ端的に表すなら《戦闘続行:B》と《直感:A》と《高速演算:C》を保有しているようなものである
微妙に死角無しだ
最後のは戦闘にのみで勉学や日常には適応されない(笑
「祐一には知っての通り、《始解》がない。それに(当時の)まだ能力的には低級妖魔しか倒せないはずなのに中級妖魔を倒したことがある。それはその三つを持っていたからだ。乙女、お前はその三つ・・特に前者を持っているか?たとえ、どんな相手にでも臆せず迷わず戦うことが出来るか?」
「・・・・・・」
乙女はゆっくりと首を横に振る
一度、中級妖魔を見たことがある乙女だが怖くて何も出来ず、ただ震えていた
「そういうことだ。ま、今回は止めときな」
「・・・はい」
乙女は大人しく引き下がった
祐羅はちょっと厳しかったかな?とも思ったがこれはこれでよかったと強引にだが納得した
乙女には悪いが事実でもあるし、祐一にはこれを機にさらに強くなって欲しい
祐羅は祐一がなぜ《始解》できないのか知って・・・はいないが確証は付いている
だが自分からそれを言おうとは思わない
祐一自身に気付かせ、さらなる高みに上って欲しいと思っているからだ
そう思いながら祐一のほうを向こいた・・・・・・が
そこに祐一の姿はなかった
「おい、祐一はどこ行った?」
祐羅の言葉に全員が先ほどまで祐一がいた場所を見ていないのを確認した後、周りを見回す
当然ながら姿は無い
探索能力に優れた空も気付かなかったのだ
話に聞き入っていたせいでもあるが・・・彼はそんな己を恥じていた
「そう自分を責めるな」
祐羅は労いの言葉をかける
悪いのは自分の息子だ、と視線で語る
それは事実で確信だ
「あいつのことだ。どうせ、重い空気は嫌いだから外出てよ、とでも考えたんだろ」
祐羅はしょうがない奴だ、と苦笑していた
そのころ、祐一はというと
「ヘキシッ!」
外に出ていた祐一はくしゃみをしていた
「風邪でも引いたかな?」
貴方の場合、確実に噂のほうです
祐一は祐羅の予想通り、重苦しい空気を嫌って逃げてきたのだ
隠行は空に通じた様子
話を聞き入っていたことが成功の鍵だった
「あれ・・・・・」
祐一は知っているような懐かしい気配と霊圧に気がついた
若いが氣の達人でもある祐一は気配だけで相手を大体の確立で判明できる
場所は・・・すぐそこ
曲がった角の先にいる
そして、あちらからも近づいてくる
「誰だったっけな・・・」
祐一は未だに思い出せない
ま、会えばわかるかと勝手に決め付けて今から現れるであろう人物を待った
そして、角から現れたのは・・・・・・美しい女性だった
「あ!?」
祐一は驚き声を出す
その顔に見覚えがあったからだ
青の強い紫の結んだ長髪、整った美しい顔立ち、おっとりした顔立ちだがその中には強い芯が見える
綺麗な着物ですらこの人の美貌の前には薄れてしまう
そして、祐一を一番驚かせたのはその顔
どことなく祐一に似ており、そして・・・・・祐一の母、相沢千夏にそっくりだったからだ
無論、似ているだけなら他人の空似ということもある
だが、その可能性は皆無
千夏に似ており、しかもこちら側の人間であり、会議が行われる神凪屋敷(ここ)にいるという条件をすべてクリアした人物を祐一は一人しか知らない
彼女は・・・・
「秋子さん!」
水瀬秋子・・・旧姓相沢秋子、その人だった
「あらあら、祐一君。元気そうで何よりです」
「もちろんですよ」
祐一が元気ないところが一度、見てみたいな
「姉さん達は元気ですか?」
「愚問ですよ、秋子さん」
祐一は苦笑しながら答える
そうでしたね、と秋子も笑って返した
「しかし・・・・」
祐一は秋子の顔をじっくり見た後
「母さんと秋子さん達姉妹は年を取らないんですか?」
前にあったときとまったく変わっていないその風貌
これでも祐一と同い年の子持ちのはずなのだが・・・・昔とちっとも変わってない秋子
不老?と思いたくなってしまうのは祐一だけではないだろう
「あらあら、お上手ですね、祐一君は・・・こんなおばさんを掴まえて♪」
「秋子さんが叔母さんなら大半の二十歳後半の女性が婆さんになってしまいますよ」
呆れながら祐一は返した
秋子の顔を見ながら本当に母さんとよく似ている、と祐一は思う
性格は正反対とも言うべきなのだが
「祐一君、《始解》は覚えられましたか?」
「いや、それが全然」
普通はコンプレックスを感じる所なのだが祐一はまったく気にせず軽く手を振り、答える
秋子は一瞬顔を曇らせたがすぐに直し
「ところで祐一君、あのときの約束は覚えていますか?」
秋子が突然話を切り出してきた
「もちろんですよ」
祐一は当然だとばかりに即答
秋子との約束
それはいつか、祐一が強くなったとき、彼女と戦うというものだ
数年前に秋子と久しぶりに会ったときに交わした約束
昔から戦闘狂だったのか、祐一よ
ま、純粋に千夏と同じ強さを持つと言われる秋子への憧れからの願いだろうけど
普通はそんな約束しない
「どうです、合同訓練の時に戦いませんか?」
「う〜ん・・・やってもいいんですけど・・・・」
祐一は珍しく口を濁らせた
いつもなら飛びついてくるはずの祐一だが歯切れが悪い
「あらあら、ダメですよ・・・落ちている物を食べては・・」
見当外れの答えを出す秋子
悪い物でも食べたか?と言いたいらしい
祐一は思い切りずっこける
「俺は犬ですか!違いますよ・・今の俺じゃ、秋子さんにはおそらく・・いや、確実に秋子さんに勝つ確立と戦法がまったく浮かんでこないんです。それに・・・・・」
祐一は再び黙り込んだ後、切り出した
「合同訓練で本気出したら試合で手の内がばれますから」
秋子と戦うということは確実に本気を出さなければ勝てないし、下手をすれば死ぬ
そして、試合に出るときに手の内をさらしては勝率が減る
秋子は祐一の考えに気付き少し驚いた後、微笑み
「なら、セーブして戦えばいいじゃありませんか」
「いや、秋子さん相手だとセーブしていても・・・」
楽しくて絶対に本気を出してしまいそうで・・と返そうとしたが止めておいた
自分自身の異常に気付きながらも直せない、直そうともしない自分が少し嫌になった瞬間だ
「ま、楽しみは後にとっておくということで」
「・・・そうですね」
会議の時間が迫っていたので会話を切り上げた二人は自分達の部屋に戻って行った
秋子はもしかしたら、試合で自分と自分の甥が当たるかもしれない可能性を知りもしないで
続く
高さ自由のあとがき
ぜんぜん変わってないように見えます
だが、重大な所が思い切り変えました
わからない人に正解は↓
神凪白夜が神凪咲耶に変化しています。もちろん咲耶はあの咲耶です(ヒントは千影)
さらに子供部門出場者を変更しました
それからお知らせ頂いた箇所を修正しました
Shadow
Moonより
さすがに秋子さんも、《始解》の使えない祐一君が大人の部に出てくるとは思ってもいなかってようですね(w
それにしても祐一君、戦闘狂というかバトルマニアというか、自分の力を試してみたい
ちょっと落ち着きのないお年頃なのか(笑)。
さてさて、祐一君以外にも大人の部に出たがる子供は乙女さんをはじめ他にもたくさんいるようですが、強くなったつもりでも数多くの修羅場をくぐり抜けてきた大人達と、井の中の蛙の自分達との力の差がまだわからないのですね……
それはさておき、お客を離れに泊めるとは神凪の現状が知れるというもの。 お客の方はその事もあって離れの方が落ち着くみたいですが(苦笑)。
次回はいよいよ会議の始まり。 自慢合戦が繰り広げられるのか、ちゃんとした会議が行われるのか?
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