ETERNAL PRISM
writeen by 佐藤こみのち

――某年 某日 某時刻 某所公園――

「おばあちゃん、シーソー使わないならどいてくれない?」

子供の声を聞き、老婆はゆっくり立ち上がった。

「すまんのう。ちょっと木を見てたもんでな。」

シーソーから少し離れた位置にある、樹齢二百年は超えるであろう木。
その木をじっくり見ようとするならば、シーソーの位置は丁度いい。
もちろん、子供らにはその木を見る老婆の考えなどは判らなかった。

老婆は、傍らに置いてあったずた袋からカードを2枚取り出した。

「坊主らや、これをやろう」

「何? これ?」

「タロットカードじゃ。
2枚しかなくなったから占いには使えないんじゃよ。だから坊主にやるんじゃよ。

「ありがとー。
お母さんからは知らない人から物を貰っちゃいけないって言われてるけど、
時にはいけないことをするのも人生というものだから、遠慮なく貰うよ。」

一人は結構いい性格の子供のようだ。

「どんなカードなの?」

もう一人の子供が聞く。

「ふぉっふぉっふぉ。まずこっちのカードは『運命の輪』。そしてこっちのカードは『隠者』といってな。 意味は……」

老婆がカードの意味について一通り解説した後、子供らはシーソー遊びに興じ始め、老婆は去っていった。




『運命の輪』……『隠者』……。




二人は今どこで何をしているのかな?




そして、扉を開けるのはどちらかな?




逃げることはもう許されない……




スイッチバックの刻まであと少しなのだから……





ETERNAL PRISM

プロローグ 二枚のタロット


――7月5日 土曜日 午後1時48分 ロサンゼルス――

薄暗い部屋。
一人の中年男性がパソコンに向かっている。
彼はある施設のパソコンに侵入していた。
施設の方もそれなりの防御策を講じているが、彼にとってはないに等しいレベルだ。
この程度のハッキングは彼にとって日常茶飯事。朝飯前どころか朝歯磨き前といったところだろう。

(お、出た出た。)

そして画面いっぱいに目的の数字が並ぶ。

(過去のデータと比較してみると……)

一秒もかからない操作で、折れ線グラフが出現する。
右下がりだ。それを見て彼の表情が変わる。予想外のデータだったらしい。

(まずいな。このままのペースでいくと……
これはちょっと放っておくわけにはいかないか……)

急に深刻な顔つきになる。どうやら事態は深刻らしい。
そして彼は引き出しから携帯電話を取り出し、国際電話をかけた。そして日本語で話し出す。

「もしもしオレだよ、オレだよオレ。
……いや、詐欺じゃないって。相沢だよ。アイザワ。
え? そっちはそんな時間なの? すまんすまん。はっはっは。ところで……」

さっきの深刻な表情はなんだったのかと思うような軽い調子で話し始める、相沢と名乗った男。
彼と電話の向こうの相手との会話は少し続いた。

「あ、やっぱ明日じゃ無理か。え? ……あ、じゃあべつにその日でいいや。
報酬はたっぷり出すからな。相場の五割増しだ」




物語は、再び動き出す……





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